秋到来である。
去りゆく夏を惜しみながら、女友達と「今年の夏は、頭皮がクサかった」「わかる!私も去年よりクサかった」と語り合った。頭皮が年々クサくなる、もJJ(熟女)あるあるではないか。

日本人女性の平均寿命は87歳で、40を越えてもまだ半周残っている。ハマる趣味でもなければ人生は長すぎる。というわけで、今回のテーマは「JJと趣味」。 

ドルオタのアラサー女子が「うちの母は50代で更年期から鬱になったんですが、私が紹介した韓流アイドルにハマって復活しました」と語っていた。
彼女いわく「アイドルはファンが注いだ金と愛とエネルギーをパフォーマンスで返してくれるので、中高年女性におすすめです」とのこと。

たしかに我が子は課金しても巣立っていくし、逆に巣立ってくれないと困る。だが子どもが巣立った後に心にポッカリと穴が開き、宗教やねずみ講にハマるのも困る。
そう考えると、心の穴を埋めてくれるアイドルはありがたい存在だ。

彼女は「母の友人たちもつられてハマって、家でDVD上映会とかして楽しそうですよ」とおっしゃる。「あと韓流アイドルって新しいグループがどんどん出てくるし、1つのグループが10人前後いるので、『メンバーを覚えるのがボケ防止につながる』と母は言ってます」とのこと。

アイドルにハマると脳トレにもなるらしい。DHAやイチョウ葉エキスに課金するより、若い男に課金する方が喜びも大きいだろう。元気のないお母さんには、サプリよりアイドルのDVDをプレゼントした方が良さそうだ。

うちの義母(夫の母)もヨン様にハマって、カレンダーや写真集を眺めては「これが一番の生きがいだ」と言っていた。その姿を見ながら「ヨン様が死んだら、日本のおばあさんが大量死するんじゃないか」と思った。
そんな義母は氷川きよしファンのご婦人方を「演歌聞くなんてオバハンみたい」とディスり、息子に「自分はオバハンじゃなくおばあさんだろう」とディスられている。

演歌といえば、数年前、北島三郎のコンサートを観に行った。たまたまチケットをもらって行ったのだが、会場につくと「ここはデンデラか?」とひるむぐらい、おばあさんたちの軍勢に囲まれた。

『与作』を聞いて涙するババア先輩や、『まつり』を聞いてフィーバーするババア先輩の姿に「先輩方のためにも、さぶちゃんが長生きしますように…」と合掌した私。
さぶちゃんのコンサートはオールシッティングで、観客が席を立つとスタッフが手をとって誘導してくれる。「介助なしでトイレに行ける俺ってスゲー!」とひさびさに若者気分を味わった。

デンデラの中では若手だったが、腐ってもJJの私は体力に自信がない。先述のドルオタ女子も「オタ活は体力が命です!」と宣言していた。

彼女は「20代前半は推しのイベントがあると、週末に北海道と東北を回って、翌週は大阪と名古屋を回ってました」と語り、阪神タイガースの遠征よりハードな日々を送っていたそうだ。「でも最近は体力的にキツくて、バラードやトークの時間とか、すきあらば座って水を飲んでます」とのこと。
「それでも現場に行くと『生きててよかった…!』と多幸感に包まれるんですよ」と彼女。そんな感覚、シャブでもキメないと味わえない。

合法的にトリップできるのは羨ましいが、私は三次元の男に萌える才能がない。
小学生の時も周りは光GENJIに夢中で『STAR LIGHT』や『ガラスの十代』のCDを買っていた。そういえば、作詞作曲のあの人もシャブ…(自主規制)
シャブはさておき、当時から私はアイドルに興味がなく、『キン肉マン』や『北斗の拳』の二次元キャラに萌えていた。

そういえば二次元萌えのオタク女子から、推しキャラの誕生日パーティーを開くという話を聞いた。

彼女いわく「『○○くんお誕生日おめでとう』と名前の入ったケーキを、推しの名字+自分の名前で注文して、夫の誕生日を祝う妻気分を味わいます。『ラインハルト・フォン・ローエングラム』みたいな名前だとお店の人にびっくりされますが、推しなので平気です」

「ロウソクもちゃんと年の数たてます。ファンタジー作品の人外キャラだと百歳を越えてたりするので、ロウソクが松明(たいまつ)みたいになります。それをオタク仲間と吹き消して、バースデーソングを合唱します」とのこと。

彼女は「こんなのオタクはみんなやってますよ」と言っていた。そうか、オタクはみんなやっているのか。私もベンキマンの誕生日パーティーを開こうか。彼は古代インカ帝国出身で年齢は2000歳なので、ケーキから火柱が上がるだろう。

趣味は人生にハリと潤いを与えてくれる。声優オタクの女子は「推しのイベントのためにエステに通って6キロ痩せました!」と言っていた。恋する彼女は会うたびに綺麗になっていく。
が、その一方で「もし推しが結婚したら、彼の幸せを願ってるので『おめでとう』と言いたいです。ただショックで声が出なくなると思います…」と震えていた。

先日『浪費図鑑』という本を読んだ。
これはオタク女子の浪費事情を紹介する本で、とても興味深かったが、中でも「東京ディズニーリゾートで浪費する女」の「ミッキーは『ご報告』のような不穏なワードを出してこない」「ミッキーは年をとらない、ゆえに自分が死ぬまでミッキーの活躍を見続けられる」という趣旨の言葉に、なるほど!とヒザを打った。

ミッキーさんにはミニーさんという公式のガールフレンドがいるため、どこぞの女に寝取られる心配はない。そのうえ不老不死なので「ドナルドのクーデターで暗殺される」みたいな展開にショック死せずにすむ。

私は人が死にがちな作品が好きなので、わりと未亡人になりやすい。
『進撃の巨人』の某キャラが死んだ時は、一週間ほど体調を崩した。実母が死んだ時も原稿は遅れなかったのに、この時はギリギリの進行になってしまったので、なるべく死なないキャラにハマりたい。
JJは心の傷の回復にも時間がかかるのだ。

JJ予備軍、アラサーのオタク女子たちは「最後に骨を埋めるジャンルはどこにする?」という話題で盛り上がるらしい。

「相撲にハマって着物で両国に通いたい」「宝塚大劇場に通って男役にときめきたい」といった意見が出るそうだが、たしかに相撲や宝塚は座って観賞できるし、ファンの年齢層も幅広い。
ちなみに神戸出身の私の周りには「祖母の代からヅカファンで、物心ついた頃には宝塚大劇場に通っていた」という、ヅカ沼で産湯につかったJJも多い。

子どもの頃から継続する趣味をもつ者もいれば、年をとって新たな趣味にハマる者もいる。JJがハマりがちなジャンルに「和とロハス」がある。

20代の頃、酒と煙草とクラブ通いが好きだったJJが、久しぶりにFacebookでつながると「着物で京都のお茶会に」「有機野菜でマクロビを」とか書いていて「会わない間に何があった?」とギョッとする。
会わない間に別人格に乗っ取られたのかもしれないが、確実にあったことは加齢だろう。年をとると「日本」や「自然」に原点回帰したくなるのか。

その気持ちはわからなくもない。JJはランバダよりも日本舞踊が似合うし、着物は露出度が低くボディラインも出ないので、JJからBBAに進化しても着こなせそうだ。

また、若い頃は「なんでおばあさんは草花を育てるのが好きなんだろう?」と謎だったが、最近は私も草花を育てたい欲が出てきた。己の生命力が枯れてゆくにつれ、植物の生命力に惹かれるようになるのか。
「田舎で畑をやりたい」とか言い出すジジイたちも、同じ心境なのかもしれない。

とはいえ、私が着物や園芸にハマっても長続きしないだろう。拙僧は三日坊主ならぬ三日阿闍梨(あじゃり)を称するほど飽きっぽい性格で、習い事なども続いた試しがない。
唯一続いている趣味は、女友達と集まってしゃべることだ。現在も頻繁にJJ会を開いているし、最後に骨を埋めるジャンルは「BBA会」になるだろう。

女子校魂は百までなのか、私は女しか存在しない空間が心地いい。
若い頃は男女混合バーベキューなどにも参加したが、最近は「どう考えても女だけの方が楽しいだろ」と開き直り、広告会社時代の同期とも「女だけで集まろうよ」とJJ会をしている。
そして、男の同期の悪口(「あいつは同期の○○ちゃんを振ってスッチーと結婚した」など)で盛り上がる。ちなみにCAをスッチーと呼ぶのもJJあるあるだ。

「日本人が恋愛しないのは、欧米のようにカップル文化がないから」と言われるが、私は同性文化の国に生まれてよかった。お陰でレストランでもホテルでもどこでも、女同士で出かけられる。最近はラブホテルにすら女子会プランが存在するらしい。

スウェーデン在住の親せき(義母の妹、バツ2の70代女性)は「彼氏が巨乳好きだから豊胸手術を受けた」と話していた。また彼氏とケンカするたびに、義母に電話をかけて愚痴っている。それを見ると「アラ古希になってまで男に振り回されなあかんのか」と思ってしまう。

だったらヨン様や韓流アイドルを生きがいにする方がずっといい。
義母は飲み屋のママをしながら、女手一つで息子を育てた。かつて店に通ってくれたスタメン客は鬼籍の世代に突入し、喪中ハガキを見ながら「ファンがどんどん死んでいくわ~」と呟いている。
たまに存命のファンから食事の誘いがあるが、「男はもうたくさん」とBBA会に出かけている。たしかにアラ傘寿になって「すごーい♡」とか言いたくないだろう。

老後は私もデンデラのようなBBA会に参加したい。そして夫が死んでリアル未亡人になった暁には、男子禁制の尼寺のようなシェアハウスで暮らしたい。
そうなったら剃髪してもいいかもしれない。ツルツルにすれば頭皮も匂わなそうだ。外道坊のように刀を仕込んだ錫杖(しゃくじょう)を握りしめ、薫尼(くんに)と名乗るのもいいなあ…と夢見るJJなのであった。南無。

 

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