伊藤忠商事前会長、元中国大使でビジネス界きっての読書家・丹羽宇一郎さんが、本の選び方、読み方、活かし方、楽しみ方を縦横無尽に語り尽くす新書『死ぬほど読書』から、いい本を見つけるコツについてをお届けします。

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タイトルは練りに練った末に決まる

(写真:iStock.com/demaerre)

 出版社の人と話をしていると、「タイトルを決めるときが一番悩みます」ということをよく聞きます。もちろん、タイトル以前に著者に原稿を書いてもらったり、編集をする作業のほうがエネルギーを使うのでしょうが、タイトルの決定はそれだけ迷うことが多いのでしょう。

 また、組織が大きいところだと、編集部だけでなく営業部や役員も参加してタイトルを会議にかけたりするので、さまざまな意見が出すぎて、なかなか決まらなかったりするようです。

 タイトルはそうやって練りに練った末に決まったものも多いので、タイトルに釣られて買ってしまうこともあります。しかし、実際に読んでみるとたいしたことがなくて、ああ失敗したな、と思うことも少なくありません。

 ある編集者は、タイトルで売れるかどうかがほぼ決まってしまうといっていましたから、中身はさておき、とにかく売らんかなというあざといものも増えているのかもしれません。

 

本を選ぶいちばんの決め手は目次

 私が本を買う決め手とするのは、目次です。書店で本を手にしたときは、まず目次をじっくり読みます。目次を見れば、どういう内容なのか、どういう構成で展開しようとしているのかがほぼわかる。作者がどういう意図をもって、何を読者に伝えたいのか、作者の論理的思考がだいたい見える。そうやって大枠を押さえておくと、理解も早く、読むスピードも上がります。

 ですから目次は、私にとってはかなり重要です。まえがきに目を走らせることもありますが、あまり買う買わないを左右されることはない。やはり目次が決定的な材料です。

 あとは本の装丁も影響することがあります。手にとってくださいといわんばかりの仰々(ぎょうぎょう)しいものは、いささか敬遠してしまう。むしろ、小ぶりのタイトルが慎ましげに表紙の隅っこに鎮座して、書店の目立たないところにあると、おおっと思って思わず手にとってしまいます。

 あとがきは、本文に書けなかったり、テーマから少しはずれたことを載せていたり、誰かへの謝辞だったりするので、書店で読むことはほぼありません。ただ、文庫本などで解説があると、それを読んで判断材料にすることはあります。

 ときには著者のプロフィールを見て、こういうテーマで研究をしてきて、こういう立場で言葉を発しているんだなとわかると、ちょっと読んでみようかということもあります。

 そうやってよく吟味したつもりでも、はずしてしまうことはいくらでもあります。でも、外れることがあるから、期待以上のものに巡り合ったときの喜びも、また大きくなる。そういうことがあるから、書店で本を選ぶのは何ものにも代えがたい喜びなのです。

 

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もし、あなたがよりよく生きたいと望むなら、「世の中には知らないことが無数にある」と自覚することだ。すると知的好奇心が芽生え、人生は俄然、面白くなる。自分の無知に気づくには、本がうってつけだ。ただし、読み方にはコツがある。「これは重要だ」と思った箇所は、線を引くなり付箋を貼るなりして、最後にノートに書き写す。ここまで実践して、はじめて本が自分の血肉となる。伊藤忠商事前会長、元中国大使でビジネス界きっての読書家が、本の選び方、読み方、活かし方、楽しみ方を縦横無尽に語り尽くす。