北海道から沖縄まで、ふるさとの「名低山」100座を山岳ガイド協会所属のプロが紹介した『日本百低山』(日本山岳ガイド協会編)より、各都道府県の「名低山」をご紹介。
第46回は、鹿児島の「名低山」藺牟田池外輪山、尾岳、高隅山・御岳から、「尾岳」を。

尾岳 otake 薩摩川内市 604m

カノコユリ、海と山楽しむ
歴史と自然の島の最高峰

薩摩半島の30〜40キロほど西方、東シナ海に浮かぶ甑こしき島しま列島は上、中、下の甑島と無人島からなる。古くは遣唐使の停泊地と伝えられ、国定公園に指定されている。この山は下甑島にあり、列島の最高峰。夏は島に自生する薄紅色のカノコユリが、帰路などに目を楽しませてくれるだろう。登山だけではなく、海水浴を兼ねて訪れれば、海と山を楽しめる。

アプローチは川内港から新造された高速船か、串木野新港からフェリーを利用して下甑島の長浜港に渡る。港に近づくにつれ、集落の後方にそびえる尾岳が大きく見えてくる。港から登山口までは、船と接続している瀬々野浦行きのコミュニティーバスを使うと便利
だ。

登山口は、バス停のある航空自衛隊の基地正門のすぐ先で、数台の駐車が可能だ。ここから山頂までの標高差は150メートルほどしかない。登山道は照葉樹林帯の中の一本道で、ほとんど尾根をたどるので分かりやすい。ただ、急な坂もあるので、スリップに注意。何回かアップダウンを繰り返し、樹林帯を抜けると1等三角点のある開けた山頂に着く。

天候に恵まれれば海と山の展望が広がる。山頂から少し先へ行くと第2展望所で、下甑島北部の鹿島地区や甑島列島の複雑なリアス海岸の景色が飛び込んでくる。目をこらすと、建設中の下甑島と中甑島を結ぶ橋も見える。

帰りは転倒しないよう気を付けて往路を引き返す。甑島にはイノシシやシカなどの大型動物はいないが、マムシはいるので不用意に草むらに踏み込んだりしないように注意してほしい。

登山口から長浜まで戻るバスの本数は少ない。事前に時刻表を確認して頂上でゆっくり昼食を取るなど時間調整するか、島で宿泊するなら宿泊先の車で迎えに来てもらう交渉をしておくと良い。バスの待ち時間が長いなら港まで歩いて下る。2時間ほどの舗装道歩きとなるため、運動靴など底の柔らかな靴に履き替えた方が楽だろう。夏場は道沿いにカノコユリが咲いており、単調な下山を慰めてくれるはずだ。
(日本山岳ガイド協会正会員 内山憲一)

ガイドの目
下甑島の見どころは多く、北部の鹿島地区は、ニシノハマカンゾウ(6月〜7月)やカノコユリ(7月〜8月)の群生地がある。南部の手打地区では、武家屋敷通りや下甑郷土館で歴史や文化に触れることができる。島のシンボル的存在のナポレオン岩や瀬せ尾び観音三滝といった景勝地も散在する。
甑島の魅力の一つは、豊富な海の幸だ。キビナゴ、赤イカ、薩摩甘エビ(タカエビ)など魚介類が新鮮でおいしい。
上甑島では長さ4キロもある砂州、長目の浜などの景勝地巡りや、クルージング、海水浴などもお勧めだ。

参考タイム
登山口(1時間)−尾岳(40分)−登山口(2時間)−長浜港

 

この記事をシェア
この連載のすべての記事を見る

★がついた記事は無料会員限定