北海道から沖縄まで、ふるさとの「名低山」100座を山岳ガイド協会所属のプロが紹介した『日本百低山』(日本山岳ガイド協会編)より、各都道府県の「名低山」をご紹介。
第44回は、大分の「名低山」万年山、元越山から、「元越山」を。

元越山 motogoeyama 佐伯市 582m

国木田独歩の愛した山
「国内ベスト4」の眺望

明治の文豪、国木田独歩 は1893(明治26)年10月より翌年まで、私学の鶴谷学館の教師として佐伯に滞在した。独歩は、下宿の裏手にある城山を愛し、何度も登ったといわれる。この下宿の窓より、元越山を眺めては、いつかは登りたいと思っていたという。

独歩は、93年11月5日に元越山に登り、『欺かざるの記』には「吾窓よりの眺めの余りに美しさに堪え兼ね、昨日遂ついに此山に登りぬ」と記した。また翌年4月にも、登っている。

山頂には、彼の「元越山に登るの記」の一節を刻んだ記念石碑がある。それを紹介しよう。

「元越山
山巓に達したる時は、四囲の光景余りに美に、余りに大に、余りに全きがため、感激して涙下らんとしぬ。ただ、名状し難き鼓動の心底に激せるを見るなり。
太平洋は東にひらき、北に四国地手にとるがごとく近く現われ、西および南はただ見る
山の背に山起り、山の頂に山立ち、波のごとく潮のごとく、その壮観無類なり。
最後の煙山ついに天外の雲に入るがごときに至りては…」

独歩が眺望の美しさに涙を流したという山頂には1等三角点が設置されている。地図を作る国土地理院の調査員が、元越山の眺望は国内にある三角点のベスト4に入る、とたたえたとも伝わる。

いくつかのルートのうち、ポピュラーな佐伯市中野河内からの往復コースを紹介しよう。登山口の駐車場より、モウソウダケ林と照葉樹の尾根道を登ると、やがてヒノキの植林地となり、約1時間で、「下の地蔵」。左の尾根の斜面を登り、稜線へ出て、林道を越え、右へ50メートル程歩き、山道を進むと「中の地蔵」。登りと平らを、3度ほど繰り返すと1等三角点のある元越山の頂だ。眺望は360度。東は、豊後水道でもある日豊海岸国定公園の島々と遠くに四国、北から西にかけては、由布岳だけ、鶴見岳、くじゅう連山、祖母傾山群、大崩山、南には大分、宮崎県境の山々が望める。

素晴らしい眺望を楽しんだら、往路を引き返す。                 (日本山岳ガイド協会正会員 安東桂三)

ガイドの目
登山口には、地元の協力で駐車場やトイレがあり、竹のつえも用意してある。この山を愛する地元の意識が伝わってくる。
登山口以外には、トイレもなく、紹介したルートには水場もない。標高が低いので、気温の高い時期は、十分な給水を考えてほしい。このルート以外にも、浦代浦、色利浦、空の地蔵から石槌山経由の縦走コースもある。どのルートも夏は、熱中症に注意が必要。
佐伯市内には国木田独歩の下宿が資料館となって公開されている。

参考タイム
中野河内登山口(1時間)−下の地蔵(25分)−中の地蔵(30分)−元越山(25分)−中の地蔵(20分)−下の地蔵(45分)−中野河内登山口

 

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