北海道から沖縄まで、ふるさとの「名低山」100座を山岳ガイド協会所属のプロが紹介した『日本百低山』(日本山岳ガイド協会編)より、各都道府県の「名低山」をご紹介。
第37回は、香川の「名低山」星ケ城山、大麻山から、「星ケ城山」を。

星ケ城山 hoshigajoyama 小豆島町 816m

瀬戸内の島の最高峰
海と奇岩を巡る山歩き

山の価値は、標高だけでは表せない──。この意味を実感できるのが島の山だ。瀬戸内海の島々の最高峰であるこの山の登山は、同時に温暖な瀬戸内海や名産品も味わえる旅になる。小豆島は花こう岩を産出する「石の島」で、おなじみの三角点もここの石材で作られる。星ケ城山は佐々木信胤の山城があったといわれ、風光明媚で観光客の多い寒霞渓も近い。瀬戸内の海を眺め、奇岩を巡る山歩きに、オリーブと壺井栄の『二十四の瞳』のロケ地、島の八十八カ所の霊場巡り、しょうゆやそうめん、つくだ煮など見どころと名物がプラスされる。

小豆島へは本州、四国から多くの航路がある。港からバスで、寒霞渓のロープウエー乗り場の紅雲亭に向かい、手前の猪谷で降りて石門を目指す。島は花こう岩の上に火山噴出物が厚く積み重なり、長い年月を経てさまざまな景観を作り出している。お堂の右手、石畳の裏八景登山道を進むと石のアーチ、石門洞だ。見上げれば「えっ、崩れないで!」と思わず口にしてしまいそうだ。

登山道の足元は単調だが、さまざまな奇岩がたて続けに現れ、飽きることがない。見晴らし台は海の眺望が素晴らしい。大きな岩がぽつんとのった「松茸岩」を過ぎると、程なくロープウエーの終点標高612メートルの広場だ。駅手前のきれいなトイレを使わせてもらおう。ひと登りで広々とした三笠山に到着。ここから山城の遺構が次々と出てくる。

西峰の大きな露岩から港を見下ろせば「つわものどもが夢のあと」の句が頭をよぎるかもしれない。程なく最高峰の東峰。板状の岩を積み上げて作られた国土地理院の測量やぐらが目に飛び込んでくる。

下山は来た道を戻る。体力に応じてさまざまなコースを組み合わせることができるので、家族や友人と誘い合わせて訪れるのに最適だ。ロープウエーの山頂駅からの空中散歩は次の機会とし、表十二景登山道を下る。下山方向に目をやると驚くほどの急傾斜に身構えるが、つづら折りを繰り返す石畳なので安心。
(日本山岳ガイド協会正会員 加藤智二)

ガイドの目
冬は寒いからこそ瀬戸内の山という選択はある。とはいえ、吹き抜ける風は冷たいことも多く、防寒と防風対策、ヘッドランプ、行動食を忘れずに。
沿岸部から山腹には小豆島の八十八カ所霊場がある。登山と併せて立ち寄ってほしい。『二十四の瞳』のロケ地、映画村もあり、ここを目指して海岸沿いを移動すると、星ケ城山を湾の向こうに見ることができる。山には、美しく見える場所がいくつかある。山頂を目指すだけでなく、多様な魅力を探ってみよう。カレイやメバルなど冬の瀬戸内の味覚もある。

参考タイム
猪谷(30分)-石門洞(1時間)-ロープウエー山頂駅(50分)-星ケ城山東峰(40分)-ロープウエー山頂駅(1時間)-ロープウエー乗り場

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