北海道から沖縄まで、ふるさとの「名低山」100座を山岳ガイド協会所属のプロが紹介した『日本百低山』(日本山岳ガイド協会編)より、各都道府県の「名低山」をご紹介。
第32回は、島根の「名低山」大満寺山、三瓶山、大万木山から、「大満寺山」を。

大満寺山 daimanjisan 隠岐の島町 608m

隠岐最高峰、静かな山旅
歴史の島、固有種の花々

冬は暗い日本海も、初夏には緑色を加えた優しい青になる。山陰沖の穏やかな海に浮かぶのが、大小いくつかの島からなる隠岐だ。後醍醐天皇が流刑された歴史の島であり、その最高峰がこの山。江戸時代には北前船の目印になったといわれ、静かな山を楽しめる。

約1万年前に離島となった隠岐には日本の成り立ちが分かる地質、固有の生態系などがあり、世界ジオパークに認定された。ピンクの濃淡の花を咲かせる固有種のオキシャクナゲの自生地を縫い、柱状節理の大岩壁、屏風岩を眺め、樹齢800年という乳房杉をめぐるコースを紹介する。ただ、島の低山などと高をくくると苦労するだろう。

公共交通機関が乏しいので、レンタカーを使う。隠岐国分寺方面から有木川に沿った林道を3キロ近く進み、堰堤の先、右手の尾根の先端が登山口だ。分かりにくいが、お地蔵様が目印になる。軽自動車3~4台程度の駐車スペースがある。

細尾根の取り付きからいきなり急登となる。ただ樹木の説明板があり、要所では赤い布をまとったお地蔵様が迎えてくれる。歴史を感じさせる登山道だ。小さな沢を渡るとほどなく山名の元となった大満寺の荒れ果てたお堂に出る。ここまで標高差約250メートル。敷地には水が引いてある。お堂右手から再び樹林帯を登り、奇妙な形をした窓杉が現れると、大満寺山の肩は近い。乳房杉からの登路がここで合流する。肩から左へ稜線をたどる。急登にひと汗かき、周囲が岩だらけになると1等三角点のある山頂だ。隠岐水産高のレリーフがある。七つの海に出る水産高らしく世界の主要都市の方角が刻まれている。西郷湾、島後の山並み越しに島前の島。海と空が一体となった島の山ならではの景観だ。

山頂から先へ、滑りやすい急坂を下る。下りきった林道の反対側に鷲ケ峰の登山口がある。標高555メートルの三角点のピークまで往復する。進むにつれてオキシャクナゲが目立つだろう。ピークは屏風岩のビューポイントだ。林道に戻り、左へ10分ほどで乳房杉。巨木の姿形に風雪に耐えた時間が漂う。大満寺山の肩へ戻る登山道へは、乳房杉の先から入る。肩からの下山は道の判読力を試される。
(共同通信編集委員 小沢剛)

ガイドの目
低山だが、侮ってはならない。静かな山は、登山者が少ないことの裏返しであり、落ち葉の積もった登山道は道迷いを起こしかねない。また、鷲ケ峰三角点の先に屏風岩を目前にする景観点があるが、岩場を数カ所越えねばならない。ロープが張られているものの、切り立った細尾根で要注意だ。
鷲ケ峰登山口まで車で来て大満寺山を約1時間で往復する手もある。下山後に奇岩、トカゲ岩に回ろう。国の天然記念物カラスバトはじめ隠岐固有の動植物は多彩だ。

参考タイム
登山口(50分)−大満寺(25分)−肩(15分)−大満寺山頂(15分)−林道(30分)−鷲ケ峰三角点(30分)−林道(10分)−乳房杉(15分)−肩(45分)−登山口

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