北海道から沖縄まで、ふるさとの「名低山」100座を山岳ガイド協会所属のプロが紹介した『日本百低山』(日本山岳ガイド協会編)より、各都道府県の「名低山」をご紹介。
第31回は、鳥取の「名低山」擬宝珠山、那岐山から、「那岐山」を。

那岐山 nagisan 鳥取・智頭町、岡山・奈義町 1255m

緑の渓谷から眺望の頂へ
地味でも紅葉が美しい

鳥取と岡山の県境に位置し、地味ながら紅葉が美しい山だ。眺望に恵まれ、山名はイザナギノミコト由来説がある。登山道は両県側にあるが、今回は鳥取側のコケの緑が美しい西仙・渓谷コースを登り、ササ原に覆われた稜線を歩き、東仙コースを下る。

アクセスはマイカーが便利だ。国道53号から県道へ入り、JR因美線のガードをくぐり左折。踏切を渡って3キロほど進んだ辺りの「おおはた橋」が登山口となる。

看板に従って林道を上流に向かう。その先でコースは二手に分かれるが、右の西仙コースへ。杉の美林が見事だ。15分ほどで林道と別れて登山道に入る。よく踏まれた道を行くと右に尾根コース、左に渓谷コースの案内が出てくる。どちらも馬の背避難小屋に至るが、今回はカツラの老木のある美しい沢沿いを行く。

さまざまな色合いのコケに覆われた道は、途中何度か小さな流れを渡る。清らかな水の流れに触れ、軽やかな小鳥のさえずりを楽しみながら進むと目の前にカツラの老木が現れる。秋にはかぐわしい黄金の落ち葉を敷き詰めることだろう。巨岩が見えてきたら渓谷コースも終盤。かわいい滝の先で右手の尾根に向かうと、清潔な馬の背避難小屋に着く。標高922メートル地点で、ここで尾根コースと合流する。

この先の尾根道はなだらかに始まるが、すぐにクサリが付く急登となる。標高千メートル付近からはブナやミズナラなどの落葉広葉樹の美しいトンネルとなる。ササが多くなり空が大きくなるとトイレを併設した休憩所「那岐の家」は近い。

那岐山の山頂までは明るいササに覆われ、巨岩も顔を出す稜線の道となる。避難小屋を過ぎると360度の眺望をほしいままにする頂上はすぐだ。天気が良く、空気が澄む季節には西に大山、東に氷ノ山を望む。

下山は稜線を東へ。途中、岡山側のコースを右手に見送る。標高千メートル付近は美しいブナ林の道だが、多くは丸太で止めた急な階段状の道なので、膝を痛めないようゆっくり下ろう。やがて西仙コースに合流、登山口に戻る。
(日本山岳ガイド協会正会員 加藤智二)

ガイドの目
沢沿いは登山道が不明瞭になりやすい。こけむし、ぬれた岩や石への注意に加え、視野は広く。流れを横切る地点では対岸の目印やふみ跡を確認すること。大雨直後や激しい降雨時は、安全な尾根コースに変更しよう。
丸太の階段は歩きにくい。だが土砂流出を防ぐため、できるだけ登山道を外れないように。
古い地図には那岐の家のある三角点を那岐山としているので注意。
JR那岐駅手前にある「タルマーリー」の天然酵母パンがおいしい。カフェも併設している。

参考タイム
登山口(1時間)−馬の背避難小屋(40分)−那岐の家(20分)−山頂(50分)−林道分岐(40分)−登山口

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