「ふつうの幸せ」が難しい時代です。憧れの仕事、理想の結婚、豊かな老後……を手に入れることができるのはごく少数。しかし、そこで「人並みになれない自分」に焦り苦しむことなく、満たされて生きるにはどうすればいいのか――?
『人生を半分あきらめて生きる』には、人生を上手にあきらめる知恵、そこから生きるエネルギーを取り戻す工夫が詰まっています。
臨床経験豊富な心理カウンセラーの言葉をお読みになって、少しでも気持ちを楽にしてください。

 

子どもよりも、親がさみしい

「子どもよりも、親が大事」とは、たしか、太宰治の小説『桜桃』での名セリフです。

 私は、教育関係のカウンセラーをしてきてもう25年ほど経ちますが、子育てで悩み、苦しみ、疲れきった親御さんの顔を見ていて、ふとこの言葉を思い出します。

「子どもよりも、親が大事」と思いたい……。

 何人もの親御さんが次のように言います。

「子どものことで、相談に行くと、みんな子どもの立場に立って、いろいろとアドバイスをしてくれます。でも、私自身のつらさはわかってもらえなくて……。『でも、お母さんでしょ』『お母さんがしっかりしなきゃ、どうするんですか』――いつも最後は、そう説教されて、つらくなってしまうんです……」

「うちの子は、『お母さんはわかってくれない』とよく言います。けれどその度に『わかってほしいのは、私のほうだ』って思うんです。こんなこと、考えてはいけないんでしょうけど……」

 みなさんは、この親御さんをどう思われるでしょうか。

 私は、子どものことを心配している、いい親御さんだと思います。

 けれど、どこに行っても「あなた、親なんでしょ」「親なんだから、しっかりしなくちゃ」「お子さんがかわいそう」と言われる。いったん、子どもを産んで「一児の親」になってしまった途端、周囲の人は、みんな子どもの側に立ってしか、ものを考えてくれなくなる。その結果、「親であることの孤独」を生涯、抱えていくことになるのです。

 

子育ては、なるようにしか、ならない

 私が、カウンセラーとして、親御さんの悩みをお聴きしてきて痛感するのは、一見、平気な顔をしていても、「子育ての悩みを抱えていない親なんて、いない」ということです。中でも、「理想の自分」へのこだわりが強い親であるほど、「理想の子育て」へのこだわりも強く、子どもが思うように育っていないことへの苛立ちも強くなるのです。

 子どもの成長のプロセスは、本当に、大人の予測を超えたものがあります。

 小学校4年生くらいまで「何の問題もない、自慢の息子」だったのに、中学校に入ったあたりから、「別に」「それで」しか言わなくなる。家庭内暴力に走ったり、万引きをくり返したりしはじめることも少なくありません。

 逆に、たとえば両親共に愛人がいて、帰宅は二人とも午前様。中学生の娘は、毎日深夜までさみしくお留守番なのに、その子は何の問題も起こさず、すくすく育っていくこともあります。親はなくても子は育つ、のです。

 25年間、子育ての相談を受けてきたカウンセラーとしての私の率直な結論、それは「子育ては、なるようにしか、ならない」ということです。

 むしろ「子育てはこうあるべき」「子どもにはこう接するべき」という親の主義主張やこだわりが強いほど、子どもの心が追い込まれていく感は否めません。

 親として、「明らかに見る(あきらめる)べき、子育ての現実」として、まず、次のことを知っておく必要があるでしょう。

・「親は親。子どもは子ども」です。親と子はあくまで、別人格です。親の期待とは無関係に、子どもには子どもの「歩むべき人生の道」があります。

・子どもの人生はハプニングの連続が、当たり前です。(あなたの人生もそうであったように)お子さんの人生は、子ども自身にとっても、親にとっても、未知の道です。

・したがって、親が「こうあってほしい」「こう生きてほしい」と、生き方や、進路や、趣味や部活や友だち関係に、あれこれ口出しするのは、気持ちはわかりますが、土台、無理な注文です。

・特に中学生、高校生くらいの(思春期の)親子関係のねじれは、「無理を可能にしようとする」親の側の強引なかかわりによってひきおこされます。

・思春期は子どもにとって、「自分づくり」が課題の時期です。特に、親御さんがお子さんを見ていて、カーッとなったり、イライラしたりしたときには、たとえばトイレに駆け込んで、5分間深呼吸をし、気持ちが落ちついてから接するようにするなど、「一歩引いて、見守る」ための工夫が必要になります。

(『第六章「子育ては、なるようにしか、ならない」と、あきらめる』より)

*続きは、書籍『人生を半分あきらめて生きる』をご覧ください。

 

この記事をシェア
この連載のすべての記事を見る

★がついた記事は無料会員限定

関連書籍

諸富祥彦『人生を半分あきらめて生きる』
→試し読み・電子書籍はこちら
→書籍の購入はこちら(Amazon)

「ふつうの幸せ」が難しい時代だ。憧れの仕事、理想の結婚、豊かな老後……そんな選択ができる人はごく少数。日本は、個人の努力とは無関係に、就職できない人、結婚できない人、孤独のまま死んでいく人がますます増える社会になる。そこでは「人並みになれない自分」に焦り苦しむより、人生を半分あきらめながら生きることが、心の奥深く満たされて生きる第一歩となる。自分ではどうにもならない現実に抗わず、今できることに集中する。前に向かうエネルギーはそこから湧いてくる―。臨床経験豊富な心理カウンセラーによる逆説的人生論。