下北沢生まれの読モの女の子と渋谷でサムギョプサルを食べながら、「私たちのネット上での探しもの」について話したことがあった。

彼女は、「ここで探すとオシャレなものが見つかるよ!」と言っていろんなサイトを教えてくれた。彼女は、Googleで検索はあまりしないようだった。

「例えば……」と言って彼女が見せてくれたのは、とある女子メディアで「韓国料理 東京」と検索して出てきたページと、Googleで同じワードを検索して出てきたページ。前者には「女子会で使える♡」「ヘルシーな」「オシャレな」韓国料理屋さんの候補が並んでいた。後者には、東京中の韓国料理屋さんをまとめたサイトが出てきていた。

「Googleで『私にぴったりな韓国料理屋さん』を探すにはとっても時間がかかるけど、元々お気に入りのメディアで探せば、すぐに見つけることが出来るの」

若者がGoogleでなくてInstagramで情報を検索するといった内容の記事は定期的にアップされる気がするが、私はこの検索結果を覗いてはじめてその感覚を実感できた気がする。

今インターネットには、とかく情報があり過ぎるのだ。言葉のカンタンな組み合わせで検索したって、自分の欲しい情報にたどり着くためには少しコツが必要になってしまった。

だからこそ私たちは、お気に入りのメディアを使ってあえて「情報が限られた」世界観でモノを探すようになっていったのである。

“信頼するメディア”としての個人

だがある時を境に、乱立していた私たちの「女子メディア」は少なくなってしまった。

代わりに台頭しはじめたのが「インフルエンサー」の存在である。

私自身も、飲食店や洋服、化粧品などは、何人かの信頼している人のSNSを見て選ぶことにしている。行きたいお店は、自分が「この人が紹介してるお店、本当に美味しかったなあ」と思う人のSNSをチェックするし、化粧品は信頼できる友人のInstagramの投稿を見てから買うようになった。

先日10代の女の子とランチする機会があったが、彼女はヘアアレンジをYouTuberの動画を見て習得しているという。

実際、私もいろんな商品やサービスを宣伝する側の人たちに会うこともあるが、「あのメディアに出稿した」という話のほかに、「あのインフルエンサーを使おうと思っている」という話題を聞くことが増えた。いわゆる“インフルエンサーマーケティング”というやつだ。この言葉も、ここ半年で聞く回数が倍以上に増えた。

BlogやSNSが発達してきた頃から、「人がメディアになる時代」と言われてきた。それは、“人が情報の発信地になる”という現象を取り上げた言葉だったと思うが、最近は、その言葉の意味が少しずつ変化してきている気がする。“ソーシャル上の私たち”という情報の集合は、メディアと同様に誰かからアクセスされ、有益な情報源として誰かの生活に、よりアクティブに作用するようになってきているのである。

インフルエンスは誰の目にとまるのか

私もインフルエンサーの一人として数回「この商品を紹介してほしい」という依頼をいただいたことがある。だが、嬉しいのと同時に“インフルエンサーマーケティングはどれだけ効果があるかわからないなあ”と思った。WEBの仕事をしている悪い癖でもあるかと思うが、すぐに「これをやることで、どれくらい効果があるかリアルタイムで、計測できればいいのに」と思ってしまう。

実際、何かを私が紹介しても、どれだけの人がその商品をよく思ってくれるかなんてわからない。どれだけの人が買ってくれているかなんてわからない。

もちろん、世の中にそんなメディアはいくらでもある。テレビなんかもそうだ。高いお金を払ってCMを沢山流したって、どれだけ購入に繋がったかわからない。

だけど、インフルエンサーマーケティングという言葉が流行ってからいろんな所で「とりあえずこの子は3万人フォロワーいるから、これだけリーチがあるんです!」みたいな話を聞くたびにうんざりした。若いインフルエンサーにシニアなビジネスマン向けの書籍を宣伝させるような案件をよく見かけたからだ。「確かに3万人のフォロワーに表示はされるけど、一体それを誰が気になって買うの?」そう思ったけれど、話題に上るのはいつも「フォロワー数」という定量的な数だけだった。同時に、よくわからない商品をよくわからない自撮りと一緒に紹介する投稿がSNSに増えたりして、これまたうんざりした。

ライブコマースで“誰に届いたか”が可視化する時代がやってくる

私はこんな、“とりあえずインフルエンサーにばらまいて、力技でリーチを広げる作戦”が通用する時代はゆるやかに下火になっていくと思っている。

そして、そんな時代の火消し役としての役割を担ってほしいのが「ライブコマース(Live Commerce)」だ。

「ライブコマース」とは、動画配信に商品の決済機能などを付随させたもの。例えば、インフルエンサーが動画配信でコスメを紹介していたとして、私たちはその動画が放送されている画面から紹介されているコスメを直接購入することが出来る。YouTubeなどで配信されていた動画を現代のCMと呼ぶならば、「ライブコマース」は現代の通販番組の代替と言っても良いだろう。日本ではまだまだ認知度の低いサービスが多いが、中国ではこの「ライブコマース」を活用して巨額の富を得るインフルエンサーが何人もいる。

私はこれによって“売れるインフルエンサーが誰なのか”ということが浮き彫りになっていけばいいと思うのだ。正直フォロワー数なんて、フォロワーを購入すれば獲得できるし、購入しなくともちょっとしたコツがあれば徐々に伸びていく。一方で「ライブコマース」は、企業側にとっても、“自分の商品を「自分たちの消費者」に届けられるインフルエンサーは誰なのか”がわかるようになるだろう。渋谷の109前で健康器具の宣伝をしたって、効果が薄いのは当たり前である。

“個人に紐づくコンバージョンの可視化”の流れは「ライブコマース」だけではない。最近はWEB上で発表されたクリエイティブが売り出されるケースも増えた。ネット上の記事が出版されて何万部も売り上げたニュースは度々聞くし、SUZURIやクリエイターズスタンプなどは、個人のクリエイターが市場にいるユーザーに商品を売り出す手法として既に浸透している。

自分が書籍を出して痛いほど思うこと。それは“ソーシャル上で人気があること”と“誰かが自分の発信したものを「欲しい」と思ってくれること”は意外と深い溝があるということだ。

少し難しい言葉かもしれないが、これからは“imp(インプレッション)”はもちろん、“コンバージョン”する個人が可視化され、求められるようになっていくだろうと思う。

キュレーションメディアが消えても、私たちは「優秀なキュレーター」を探している

「とりあえずリーチをとりたい」という大人たちによって、注目を浴びるインフルエンサーが増え続ける時代は、キュレーションメディアが乱立していた時代と似た景色を生み出している。

流行が飽和した先に訪れるのは淘汰の時代で、消費者の行動が可視化されるこれからは改めて「誰が良質なキュレーターなのか」が問われる時代になるだろう。

私たちはキュレーションメディアが消えた今でも、「優秀なキュレーター」を探している。情報の海で常に迷い続ける私たち消費者にとって、方向性を指し示してくれる“キュレーター”は普遍的な存在なのだ。だからこそ、発信力ある個人が、フォロワーという“自分たちの情報の受け手”に“自分がよく思っていない商品をお金をもらっているから紹介する”という行為は、ゆるやかな暴力だと思う。

これからの時代、個人の影響力を考える上で、“信用”という変数を見落とす訳にはいかない。信用のない個人という存在はどこまでもチープだが、評価経済がゆっくりと注目される2017年に、そのチープさは目に見える数値として個人に戻ってくるようになると思うのである。

キュレーションメディアがゆるやかに消えて情報が拡散したのち、個人が情報の集合体として注目されている今、発信力のある個人は“誰かを正しく引き寄せる灯台”として、美しく輝くことが求められるのだ。


《今月の自撮り》

髪を伸ばし中です。オシャレにキメたい自撮りのときは、寒色系(あるいはくすんだベージュ系)のフィルタを使用するのがマイルール。普通の写真では撮れない雰囲気を作れて誰でもカンタンにオシャレな画像を作れます(ただし食べ物に使用するとちょっと気持ち悪いから注意)。

 

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