北海道から沖縄まで、ふるさとの「名低山」100座を山岳ガイド協会所属のプロが紹介した『日本百低山』(日本山岳ガイド協会編)より、各都道府県の「名低山」をご紹介。
第30回は、和歌山の「名低山」高野三山、真妻山から、「真妻山」を。

真妻山 mazumayama 日高川町、印南町 523m

サザンカ彩る日高富士
山麓は紀州備長炭の里

紀伊半島は山また山である。和歌山県中部、御坊市の奥にそびえるこの山は、端正な姿から日高富士と呼ばれる。山頂は広く芝生で覆われ、真冬にはサザンカに彩られる1等三角点を持つ展望の山だ。

珍しい山名である。登山口の大滝川森林公園の手前の地区には丹生神社がある。丹生とは水銀に関わる名で、水銀を採取する人が祭る真妻大命神とも呼ばれる丹生都比売神の姫神が、この山の頂に降り立ったという神話から真妻山の名が付いたそうだ。

適当な公共交通機関がなく、登山口にある2カ所の駐車場までマイカーかタクシー利用となる。駐車場からもみじ谷に向かう。涼みの滝が現れるまで谷筋を進んだら左の斜面へ。その先には徳本上人初行洞窟が大きく口を開けている。近くには大滝川を見下ろす展望所があり、一息入れよう。登山道はここから部分的に鎖を張った急傾斜地を横切る。ジグザグに登る斜面にはウバメガシやコナラが多い。標高差約150メートルを登ると傾斜が緩み、この辺りから展望を楽しめる。

ひと登りすると、標高450メートル弱の、やや開けた肩の部分に出て、道は南へ向きを変える。最後の急斜面を登ると広々とした真妻山の頂上だ。振り返ると、白く光る風力発電プロペラの立ち並ぶ稜線が目に飛び込む。頂上の西端には観音堂があり、御坊の町並みから紀伊水道を望む。東側は墨絵のようにうねり重なる高野山から釈迦ケ岳の山々。山の国、日本を実感できるだろう。広い山頂からは東西南北へ登山道がのびる。下山は方向を誤りやすいのでコンパスで確認し、東にのびる尾根を下りる。しばらく歩くと石垣と薬師如来堂に出合う。ここで緩やかな稜線を離れ、北へ向かう尾根に入る。25 メートルほどの滝を回り込み、杉の植林に出ると、車道のある大滝川はすぐだ。

「お滝さん」と慕われる御滝神社に参っていく。参道を少し下ると落差14メートルの立派な大滝が姿を見せる。神社から車道を川沿いに下る。生産量日本一という日高川町の紀州備長炭の炭窯が点在しているのを目に進めば駐車場に着く。
(日本山岳ガイド協会正会員 加藤智二)

ガイドの目
温暖な紀州とはいえ、真妻山の頂上は芝生で風が吹き抜ける。冬は風対策として、防風性のあるレインウエアなどを用いよう。運動と休憩を繰り返す山歩きでは自分の体温を維持するため小まめに衣類調節を行いたい。
里山には山仕事の踏み跡があるのは当たり前。目印のテープなどに惑わされず、出発地や分岐点では地図とコンパスを取り出して確認する習慣を身につけよう。山歩きの世界が広がり、楽しくなるだろう。

参考タイム
大滝川森林公園駐車場(40分)−徳本上人初行洞窟(1時間30分)−山頂(20分)−薬師如来堂(1時間)−大滝川沿い道路(10分)−御滝神社(40分)−大滝川森林公園駐車場

 

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