北海道から沖縄まで、ふるさとの「名低山」100座を山岳ガイド協会所属のプロが紹介した『日本百低山』(日本山岳ガイド協会編)より、各都道府県の「名低山」をご紹介。
第28回は、兵庫の「名低山」雪彦山、虚空蔵山から、「虚空蔵山」を。

虚空蔵山 kokuzosan 三田市、篠山市 592m

六甲山一望し丹波味わう
舞桜めで、陶器の里へ

近代登山発祥の地、兵庫県には、神戸の海を望む六甲山から、日本海を眼下にする山まである。この虚空蔵山は、全山縦走56キロといわれる六甲の山並みを一望し、豊かな丹波の里を味わえるファミリー向きの山だ。

山名の由来の虚空蔵菩薩は、広大な宇宙のような無限の知恵と慈悲を持った菩薩として信仰され、全国には同じ名のピークは数多い。兵庫県三田市と篠山市の境にあるこの山の中腹にも虚空蔵堂があって歴史を感じられるだろう。

登山口は、JR福知山線の藍本駅からすぐなのがありがたい。2本の登山道を選ぶことができるが、どちらも中腹の虚空蔵堂手前で合流する。由緒ある酒滴神社を通るコースは次回に取っておき、駅を出て右に進もう。桜の季節なら「舞桜」を見るコースがお勧めだ。美しい桜の古木を前に、笑顔になるに違いない。

石仏に見送られて山道を進み、傾斜が緩くなると酒滴神社からの道に合流する。石段を上れば虚空蔵堂だ。かつては本堂以外に七つの伽藍があったらしく、休憩するのにちょうど良い空間が広がる。

登山道はお堂の右側にある。急な部分は慌てず歩こう。しばらく登ると立杭焼で有名な篠山市今田町からの登山道と合流する。木々の間には立杭の里も望めるだろう。頂上へは右に進むが、このあたりから視界が開け、眺めの良い岩場があるので、ぜひ立ち寄ってみよう。天気が良ければ南南西の方向に明石海峡大橋が見えるはずだ。コンパスの方位で200度あたりなので確かめてみよう。

登山道まで注意して戻れば頂上まではあと少しだ。明石大橋の左手には六甲山が長々と横たわっている。

下山は登ってきた道を引き返し、陶器でできた道標が立つ分岐を立杭へ下ろう。日本六古窯のひとつ、立杭焼の窯元の作品を一堂に見ることができる「陶の郷」で、気に入った器を買うのも良いだろう。「陶の郷」からは神姫バスでJR相野駅まで戻ることができる。
(日本山岳ガイド協会正会員 加藤智二)

ガイドの目
ピークを目指すばかりが登山ではない。地元の人と触れ合うのもいいだろうし、それも里山の魅力だ。ひと声、あいさつをしてみてはいかがか。
登山道は整備されているが、山仕事の踏み跡などが交錯するのも低山の特徴。侮らず道路から山道に踏み込む前に地図を広げて現在位置を確認。地図もコンパスも迷ってから取り出すものではないことをお忘れなく。
見晴らしの良い場所からの展望を確認することは安全登山の第一歩。リーダーがひと声かければ、山歩きが充実すること間違いなしだ。トイレは駅と陶の郷の2カ所。

参考タイム
藍本駅(15分)−舞桜・登山口(1時間)−虚空蔵堂(30分)−立杭の里分岐(20分)−虚空蔵山(1時間)−立杭「陶の郷」

 

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