北海道から沖縄まで、ふるさとの「名低山」100座を山岳ガイド協会所属のプロが紹介した『日本百低山』(日本山岳ガイド協会編)より、各都道府県の「名低山」をご紹介。
第21回は、岐阜の「名低山」位山、冠山から、「冠山」を。

冠山 kanmuriyama 池田町 1257m

ブナの緑、カッコウの声
烏帽子の山容、山頂の絶景

岐阜と福井の県境にある標高1050メートルの冠山峠に立つと、巨大な石碑の背後にこの山が望める。その姿はまさに烏帽子そのもので、白山と能郷白山を含む両白山地の南部に連なる山々では際立った存在といえる。

冠山への稜線は福井県境をなす。豪雪地帯であり、豊かなブナ林が残る。この山の一帯には自然環境保全地域もある。

登山口の冠山峠までは国道417号から冠山林道を行く。公共交通機関はなく、マイカー利用となる。峠には駐車場がある。登山口から東へゆるやかに登る。初夏ならチゴユリやマイヅルソウのかれんな花が目にとまるだろう。急な登りを詰めると1156メートルの小ピークだ。ここを南に折れ、ゆるく下っていくと正面に冠山の姿が顔を出す。さほど遠くない。期待感で足取りも軽くなる。小さな登りかえしを繰り返しながら、心地よいブナの原生林の中を進む。カッコウの声が爽やかだ。ブナの林にはマルバマンサクやクロモジ、チシマザサなど典型的な多雪型の植生が見られる。新緑の季節ならガマズミやウワミズザクラの白い花、タニウツギの赤、足元にはイワカガミが花をつけているだろう。

うっそうとしたブナ林の最低鞍部から少し登りとなり、やがて冠山尾根の東側を巻くと、しばらくして左手前方が開け、冠平と呼ばれるササの平たん地が広がる。中央には、冠平の標識と1955年の遭難事故の碑がたつ。休憩には絶好の場所なので寄ってみたい。夏ならニッコウキスゲの群落が楽しめる。

山頂へは冠平手前から登る。標高差100メートルほどだが、岩場があって緊張を強いられる。だが、足場もしっかりしていて見かけほどでもない。上部の岩壁帯にはロープがあるので慎重に登りたい。ホツツジなどが茂る道を稜線に出て、左へ行くと頂上だ。

山頂はさほど広くないが、360度の眺望が素晴らしい。白山など両白山地の峰々、伊吹山、遠く北アルプスの高峰も望まれる。眼下の山並みの重なりの中、徳山ダムの湖面が輝いているだろう。下山では岩場を慎重に下りよう。
(飛騨山岳ガイド協会正会員 島田靖)

ガイドの目
冠山林道は雪で冬は閉鎖され、開通は例年5月中旬以降。11月には初冬の厳しい気象条件になることがある。道路状況を見極めたい。
冠山の遭難事故は1955年11月の出来事。天候急変による強風と濃霧のため2人が低体温症で帰らぬ人となった。
貯水量日本トップクラスの徳山ダムの建設で466戸の徳山村は消滅した。村の貴重な資料は国道303号沿いの道の駅「星のふる里 ふじはし」の徳山民俗資料収蔵庫に収められている。この道の駅にはいび川温泉「藤橋の湯」もある。

参考タイム
冠山峠(1時間20分)−冠平(20分)−冠山(1時間10分)−冠山峠

 

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