北海道から沖縄まで、ふるさとの「名低山」100座を山岳ガイド協会所属のプロが紹介した『日本百低山』(日本山岳ガイド協会編)より、各都道府県の「名低山」をご紹介。
第18回は、福井の「名低山」法恩寺山、西方が岳から、「西方が岳」を。

西方が岳 saihogatake 敦賀市、美浜町 764m

海を見下ろすブナの山
敦賀半島の最高峰

海を見下ろすブナ林の山だ。若狭湾に突き出た敦賀半島の最高峰である。決して高いわけではないが、海岸沿いの常宮神社を起点として歴史とブナの天然林、花こう岩の巨石が楽しめる。

常宮神社には、新羅時代の作とされ、豊臣秀吉の朝鮮の役で持ち帰ったとされる国宝「朝鮮鐘」が奉納されている。一帯は花こう岩質らしく、境内の朱塗り橋に流れる水は清らかだ。境内を出て右手にある民家の間を道なりに進む。送電鉄塔のために刈り払われた一角を過ぎると眺望抜群の「奥の院展望所」。ここからは敦賀湾を挟み、福井県嶺北の山並みを一望できる。落葉樹のコナラや常緑樹のソヨゴなどが生える山道には風化による花こう岩の砂や巨岩、石英の白い塊などが点在する。

道がなだらかに山腹を行くようになると「銀命水」に出る。巨岩の重なりがつくる穴からは、水が奏でる涼やかな音が漏れ、まるで水琴窟、と聞き入ってしまうだろう。登山道が尾根上に変わり、標高500メートルを超えるとブナが目につきだす。海を背景にした天然ブナ林の始まりだ。穏やかな登山道脇の樹木は比較的細身が多いが、中にはまるで千手観音のように大小の枝を突き上げたブナを見ることができる。

新緑前、樹間から海を見ながら歩くのも良いが、透き通る緑のシャワーや早春の花を探しながらの山歩きも雪国の山にふさわしい。ブナが減り、空が広く見えだしたら山頂は近い。頂上は広く、近くに水色の三角屋根がかわいい避難小屋がある。広場の右手20メートルほど先には、敦賀湾と白山の眺望が楽しめる展望所がある。ぜひ立ち寄りたい。

避難小屋の左を進めば、北へ向かう縦走路だ。頂上からは来た道を引き返す。土質は花こう岩が主だが、登山道は部分的に粘土質で滑りやすい。また眺望抜群の巨岩の上は容易に立つことができるが、手すりなどは無いので注意したい。

帰途、敦賀市内に戻り、気比の松原に立ち寄ってみよう。敦賀湾のなぎさを歩き、この山を眺めれば良い山旅の締めくくりとなる。
(日本山岳ガイド協会正会員 加藤智二)

ガイドの目
敦賀駅から市のコミュニティーバスが1日3往復運行されている。市内に宿泊すれば、行程に余裕を持てるだろう。
登山では、コースの標高差を頭に入れよう。標高差300メートルに1時間かける程度なら楽しく歩けるだろう。ただ、このスピードはメンバーの体調や体力、天候によって一定ではない。
今回のような頂上への往復行程では、引き返し時間をあらかじめ取り決めておくとよい。

参考タイム
常宮神社(30分)−奥の院展望所(30分)−銀命水(1時間30分)−頂上(1時間)−銀命水(15分)−奥の院展望所(15分)−常宮神社

 

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