北海道から沖縄まで、ふるさとの「名低山」100座を山岳ガイド協会所属のプロが紹介した『日本百低山』(日本山岳ガイド協会編)より、各都道府県の「名低山」をご紹介。 第15回は、新潟の「名低山」、金北山、二王子岳、守門岳から、「守門岳」を。

守門岳 sumondake 魚沼市、三条市、長岡市 1537m

豊富な残雪、優美な山容
米どころの農耕潤す名山

新潟県(越後)は、山の国でもある。多くの名山は県境に位置する。そんな中、守門岳は県中部にあって四方から優美な姿を望むことができる。山頂部は大岳、青雲岳、最高峰の袴岳に分かれ、山麓の人々の信仰も厚い。遅くまで残る豊富な雪が米どころの農耕を潤している。この山は近年、北西の栃尾側から入る保久礼コース、魚沼側二分からの二口コース、JR只見線大白川駅方面からのルートがよく歩かれている。公共交通機関に恵まれないが、車やタクシーを利用し、往復6時間程度の行程で、山麓から日帰り可能。帰途に山麓の温泉や越後の味覚を訪ねると良い。

今回は、保久礼登山口からの往復コースを紹介する。昔は、長岡から栃尾を経由して、はるばる2日がかりの登山だったが、今では、刈谷田川ダムの脇を舗装路が保久礼小屋手前まで延びる。30台程度の駐車場から5分で保久礼小屋。沢水が豊富でトイレもある。

階段状に整備された登山道を30分登ると、キビタキの水場に出る。直登する道とキビタキ避難小屋を経由する道に分かれる。辺りは美しいブナ林で、多くは雪の重みで曲がっている。ひたすら真っすぐ稜線へと達する登山道は、ブナ林からやがてクマザサの斜面を縫う。途中、二つの展望箇所からは、初夏なら稲の育つ緑の越後平野、青い日本海や佐渡が見えるだろう。1時間程度で不動平。残雪のころは水場がある。ここから約20分頑張ると大岳山頂(1432メートル)だ。

大岳から袴岳への稜線の北や東側は残雪が豊かだ。大岳からは標高差で100メートル以上下る。登山道は整備されているが、初夏までは稜線上に残る雪の上を歩くことがある。慣れない人は気を付けよう。鞍部まで約20分、登り返して20分ほどで二口コースと合流し、草原状に開けた青雲岳山頂まで、さらに20分。残雪期にはこの辺りにカタクリが群生して
いる。袴岳山頂へは約15分で達する。

頂上は360度の大展望が得られる。目の前には浅草岳。越後三山、飯豊連峰から会津地方の山々。帰路は大岳の登り返しで疲れるが、往路を慎重に戻る。
(日本山岳ガイド協会理事長 磯野剛太)

ガイドの目
良い山の宝庫の新潟で、守門岳は比較的登り易い山だ。山スキーの適地でもある。だが越後の山らしく稜線は冬の風雪に削られ、身を隠す場所が少ない。風雨の際は、特に慎重な行動が必要だ。
田中澄江さんの「花の百名山」には選ばれていないが、花が豊富な山でもある。初夏にかけて、山ツツジ、イワカガミ、キスゲ、コバイケイソウ、ゴゼンタチバナなどが楽しめる。
日程にゆとりがあれば、大白川を拠点に浅草岳に登るのも良い。温泉もあり、米どころ、酒どころに山菜、キノコ、川魚と地元の味覚も豊富にそろう。

参考タイム
保久礼登山口(2時間)−大岳(1時間15分)−袴岳(1時間5分)−大岳(1時間20分)−保久礼登山口

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