北海道から沖縄まで、ふるさとの「名低山」100座を山岳ガイド協会所属のプロが紹介した『日本百低山』(日本山岳ガイド協会編)より、各都道府県の「名低山」をご紹介。
第5回は、秋田の「名低山」二ツ森、森吉山から、「森吉山」を。

森吉山 moriyoshizan 北秋田市 1454m

黄葉のブナ、甘い木の香
名山一望、マタギの舞台

秋田の山奥、少し前まではマタギが熊を追って駆け巡っていた広大で深い森を抱く森吉
山は、初夏は花の百名山として、厳冬期は樹氷の山として名をはせている。今回は秋の森
吉山を満喫するために、黄葉のブナ林から山頂を目指してみよう。

阿仁ゴンドラ山麓駅の大駐車場からさらに林道を進むとぶな帯キャンプ場で、登山道入
り口には駐車スペースとトイレがある。周囲にはブナ林特有の黄色く明るい森が広がる。
緩い登りでは先を急がず秋の森を満喫したい。

水場となる沢を横切り、スキー場コース脇の登山道をゆっくり登ると、やがてブナ林が
尽きてゴンドラ山頂駅に出る。駅に隣接して木の香漂うビジターセンター「ぷらっと」に立ち寄り、飲料の補充やトイレを済ませたら低木帯の道へと進む。

30分ほど歩き、石森のピークに出ると、この山の全容が一気に現れ、目指す二等辺三角
形の山頂がたおやかにそびえる。点在する深い緑のオオシラビソ(別名アオモリトドマツ、当地ではモロビとも言う)が冬にはすべて樹氷となることや、高層湿原が百花繚乱だった初夏を思い浮かべながら、爽やかな風を感じるのも秋山の楽しみだ。山頂へと続く登山道はときおりオオシラビソの甘く香ばしい匂いが鼻をくすぐるだろう。阿仁避難小屋で小休止。真っ赤に色づくチングルマやイワカガミをめでながら緩く登ると目の前に山頂の標柱が現れる。さえぎるものの無い山頂からは、北に世界自然遺産の白神の山並み、さらに奥には岩木山が望め、東に目をやれば八幡平から岩手山、駒ケ岳(秋田駒)、南は太平山と遠くには鳥海山など、天気に恵まれれば青森、岩手、秋田、山形各県の最高峰がくっきりと見えるだろう。

帰路は来た道を引き返すが、石森は巻き道でパスし、登りでは通らなかった樹氷平を経
由して、名残の展望を楽しんでから下山しよう。
年齢や体力、時間によってはゴンドラを利用すると手軽に登山できる。黄葉のブナ林は
窓から眺めることになるが、歩いては得られない黄色い枝葉の間を通り抜ける楽しみも。
(日本山岳ガイド協会正会員 後藤千春)

ガイドの目
森吉山の山麓には深い森が広がり、谷は幾多の滝を落としている。紅葉期には白い瀑ばく布ふが一層映え、水量も少ないので滝巡りのトレッキングも人気だ。打当川の立又渓谷「幸兵衛滝」や、中ノ又谷の「安やすノ滝たき」などはそれぞれ往復2時間程度だが、山道なのでトレッキングの身支度で歩こう。
秋田の内陸深い山だけにアクセスが難だ。国道105号から30分ほどで登山口に着けるマイカー利用が多い。
帰路は打当温泉マタギの湯に浸かり、阿仁森吉の名物、バター餅の優しい甘さで疲れをとろう。

参考タイム
登山口(1時間)−ゴンドラ山頂駅(30分)−石森(1時間15分)−山頂(1時間)−石森(20分)−ゴンドラ山頂駅(45分)−登山口

 

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