北海道から沖縄まで、ふるさとの「名低山」100座を山岳ガイド協会所属のプロが紹介した『日本百低山』(日本山岳ガイド協会編)より、各都道府県の「名低山」をご紹介。
第2回は、青森の「名低山」梵珠山、名久井岳から、「名久井岳」を。

名久井岳 nakuidake 三戸町・南部町 615m

歴史ある寺社、雄大な眺望
秀麗な山容、南部小富士

青森県南部地方の秀峰である。南部小富士とも呼ばれ、登山意欲がそそられる山容だ。特別天然記念物のニホンカモシカが一帯に生息。東の山腹には鎌倉時代開基の法光寺 、西の山麓には月山信仰を今に伝える月山神社、平安時代後期作と伝えられる十一面観音像を安置する恵光院がある。自然とともに、由緒ある寺社に歴史を感じるだろう。

いくつかあるルートの中から今回は、古刹・恵光院を起点に、法光寺に下山するコースを紹介しよう。青い森鉄道・三戸駅から登山道まで約3キロ。タクシーなら5分で着く。トイレを済ませ駐車場から車道を100メートルほど進むと入り口だ。

杉林の中に入ってすぐ、道は二つに分かれる。左は天狗杉を経て山頂へ突き上げるルート。ここは右へ進む。やがて赤い鳥居をくぐり石段を登って低木帯をひと登りすると尾根に出る。小さなアップダウンを繰り返し、急傾斜を登りきると、月山神社からの登拝路と合流し、奥の院の祠がある月山(542メートル)だ。麓の泉山地区には男子が7歳になると月山に登拝する慣習が伝わる。出羽三山から遠く離れたこの地に月山信仰が根付いたのは、奥州藤原氏の権勢下にあった平安時代後期と推察される。

一休みしたら稜線をたどり名久井岳頂上を目指す。20 分ほどで天狗杉コースと合流し、ひと登りで1等三角点と立派な方位盤が置かれた山頂に着く。眺望は雄大で、山麓を蛇行して流れ、八戸で海に注ぐ馬淵川と南部平野が広がる。視界が良ければ、太平洋から八甲田連峰まで、360度の大展望が楽しめる。

下山は、山頂直下の急傾斜で始まる。鎖が張られた場所を慎重に下りると次第に緩くなり、ひょっこり舗装された林道に出る。100メートルほど歩き「かもしか遊歩道」に入る。広葉樹と松の混交林の中を進み、459メートルピークに到着。
ここから膝に負荷のかかる急な階段状になるが、5分ほどの辛抱だ。杉木立に入ると、やがて登山案内板のある車道に出る。少し行くと、日本有数の高さ33メートルの三重の塔が立つ名刹、法光寺が見えてくる。最寄りの青い森鉄道・諏訪ノ平駅までは約5キロだ。
(日本山岳ガイド協会正会員 近田康弘)

ガイドの目
三戸・八戸地方では名久井岳登山を年中行事の一つとしている小、中学校も多い。今回紹介のコースは、標高差400メートル程度で休憩も含め実質3〜4時間の行程だが、随所に急傾斜もあり、中級レベルと言えよう。
初級レベルならタクシーかマイカー利用で県道名久井岳公園線の峠から20分ほどで山頂に立てる最短ルートがおすすめ。
山麓にはサクランボやリンゴの観光果樹園も多い。恵光院に隣接する長谷ぼたん園では8千株のボタンの花が5月下旬から見頃になる。展望を楽しむなら10月中旬からの紅葉の時期がよい。

参考タイム
恵光院(50分)−月山(25分)−山頂(50分)−法光寺

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