最近、大規模サイバー攻撃のニュースが騒がしい。チェルノブイリ原発が一時停止するなど、あってはならないことだ。
 しかし、たいがいの日本人は、まるで他人事で、危機感が薄い。今このときも、気づかないうちに、あなた自身もターゲットになっているかもしれないというのに…。
 そこで、現代のハッカーたちが何を狙っているのか、どんな手段を使っているのか、現代のサイバー犯罪事情を、非常にわかりやすく、「ここまで書いていいのか!?」というところまで、過激にまとめた一冊『サイバー犯罪入門』を、緊急出版。
 まずは発売前に、「はじめに」を読んでください。こんな恐ろしい時代が来ているのです!

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はじめに
 ーー狙われたら、安心・安全が一気に崩れる!

 いったい今、ITと現実とが複雑に絡み合ったこの世界で、何が起こっているのだろうか?
 まさに、本書の最終チェックをしていた2017年6月27日、世界を震わす大規模なサイバー攻撃のニュースが入ってきた。ウクライナを中心に、ロシア、欧州、さらに米国へと被害が拡がったが、5月にも“史上最大規模”といわれるサイバー攻撃が発生したばかり。この2回の経済損失をあわせると(現時点で)80億ドルにのぼるといわれている。
 ウクライナでは、(セキュリティレベルが高いはずの)政府や金融機関のコンピュータネットワークまでもが一部ダウンしたほか、チェルノブイリ原発周辺の放射線自動監視システムにも影響があり、一部を手動に切り替えたと報じていて、恐怖に震えた。
 このような事件が、再び、明日起きてもおかしくない。
 さらに、そのターゲットが日本になっても、何らおかしくない。
 現代の地球上で暮らす我々の日常は、こうした危険に晒(さら)されているのだ。

 いきなり不穏な話になったので、私が何者であるかを、まず話さねばなるまい。
 筆者は、1980年代半ばからプログラミングを学び始め、2000年代初頭より国内外のサイバーセキュリティ関連企業への投資や経営に参画してきた。さらに、30カ国以上の市場において、金融機関や通信会社をはじめ、政府や研究機関に至るまで、様々な企業・組織のサイバーセキュリティに関連する仕事をしてきている。こうした経験を通して断言できることは、サイバー犯罪への意識を高めるには、サイバー空間だけでなく、リアル社会との相互関係も見なければならないし、「日本は島国だから大丈夫」という根拠のない安心感は、まったくの見当はずれ。常に、グローバルに幅広く見極めようとする視点が必要だ。
 あえてここで「グローバル」と言ったのは、日本人は世界的に見て、サイバー空間に対する感覚・意識が異様に低いと感じるからだ。今まさにたいへんな危機が起きているのに、グローバルの視点がないせいで、それが「見えていない」のかもしれない。
 みなさんが気付いているかどうか分からないが、私たちの生活において、サイバー犯罪の被害に遭うことも、サイバー犯罪を犯すことも、あまりに身近で当たり前のことになってしまっている。
 そこで本書では、「サイバー空間」と「現実世界での出来事」の間で、今何が起こっているのかについて、さらに今後どうなるのかについて、私の見てきたこと、経験してきたことをもとに、述べていきたいと思う。
 その結果、この本はサイバー犯罪から身を守るための入門書となるかもしれないし、場合によっては、サイバー犯罪そのものの入門書にもなってしまうかもしれない。
 いずれにせよ、今、我々が強く認識しておかねばならないことは、「残念なことに、“守る側が圧倒的に難しく、不利な状況”である」ということだ。

 この本は、ITの専門書ではない。書かれていることが、明日には陳腐化してしまうことを極力避けるため、Windowsならこうしましょう、Macならこうしましょうといった、実践的なテクニックについては即時性の高いパソコン雑誌やインターネットでの情報に譲ることとする。それよりも、ITというテクノロジーと付き合っていくために知っておいてもらいたいこと、その際のリスクをコントロールする方法などを伝えていきたい。
 まず、あなたの中に“サイバー犯罪に対する意識”が芽生えることを願う。そこを軸として、インターネットに関する一般教養となれば幸いだ。
「よく分からないから」と見ることをやめてしまったら、自分たちの安全も安心も、瞬く間に崩れ去る。そもそも、現代において安全や安心が妄想にすぎないことは、本書を読んでもらえれば分かる。国家も金融もインフラも、有能なハッカーの前では「安全」とは言えない。あなたの想像を超えたことが世界各地で起きているのである。異国では、貧困層や若者たちが生きていくために命を賭して技術を身に付け、犯罪組織やテロリスト集団は優秀なハッカーの育成に必死だ。彼らにとって「国境」はないに等しい。世界中がターゲットであり、日本のような豊かな国は、あまりに“おいしい”。冒頭で、大規模サイバー攻撃について触れたが、「預金口座から少しずつ抜かれている」なんてことも日常的に起きている。1件あたりの額はわずかだとしても、一度に多くのターゲットを狙えば何億にもなるわけだ。
 こうして、我々の知らないところで“世界最高峰の見えない頭脳集団”がいくつも生まれ、彼らがこの世界を回し始めているのである。
 なお、我々の業界では、その能力や知識を活かして、悪事に手を染める者を「ブラックハッカー」と呼び、ブラックハッカーに立ち向かう正義のハッカーを「ホワイトハッカー」と呼ぶが、本書では、一般的に用いられているのと同様に、ブラックハッカーの総称として「ハッカー」と呼び、「ホワイトハッカー」はあえて「ホワイトハッカー」と呼ぶことにする。
 ちなみに、本文(第4章「サイバー犯罪者は、マーケティング能力が高くないと成功しない」)でも触れるが、現代のハッカーに必要なのは、技術力よりマーケティング力である。驚くべきことではないだろうか。時代は変わり、サイバー犯罪はビジネスになったのだ。その変化と脅威に、一日も早く気付いてくれることを願う。

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大規模サイバー攻撃により、チェルノブイリ原発一時停止。
原発、病院、銀行、交通機関ーー日本も狙われている! 

世界中の貧困層や若者を中心に、ハッカーは「ノーリスク・ハイリターン」の夢の職業だ。同時に、サイバー犯罪による"収益"を資金源とする犯罪組織やテロリストは、優秀なハッカーを常に求めている。両者が出会い、組織化され、犯罪の手口は年々巧みに。「気付かないうちに預金額が減っている」といった事件も今や珍しくないし、数十億円を一気に集めることも容易い。一方で、日本人は隙だらけ。このままでは生活を守れない! 日々ハッカーと戦うサイバーセキュリティ専門家が、ハッカーの視点や心理、使っているテクニックを、ギリギリまで明かす。