累計12万部突破のベストセラー文庫『百歳まで歩く 正しく歩けば寿命は延びる!』。30代からシニア層までじわじわ幅広くヒット中です。試し読み最終回は、杖について。まだ杖を用意するのは早いと思ってませんか? 杖を使ったら杖に頼って足の筋肉が弱ってしまうかというと、そんなことはありません。むしろ早めに杖を使ったほうが足のためになるのです。

「転ばぬ先の杖」の話

 歩くことで起きるトラブルに転倒があり、とくに高齢になると、転倒が寝たきりの原因になることから、転倒を恐れて歩かなくなる傾向もあります。

 高齢者が転倒したときの様子を調査した結果で、最も多いのが「普通に歩いていた」という点にも注目すべきです。段差があるところを歩いたからとか、速歩きをしたからではなく、普通に歩いているときに転倒しているのです。

 高齢になると筋力が低下して腰が彎曲し、膝が曲がり歩きづらくなります。歩きづらいので、歩く機会が少なくなって、その結果ますます歩くために必要な筋力が低下するでしょう。そして、普通に歩いて転倒しやすくなるわけです。

 私は、歩く機会を減少させないためにも、筋力低下で歩行が難しくなった状態のときには「杖」を使うことを推奨しています。

 失敗しないよう事前に入念な準備をすることを「転ばぬ先の杖」といいますが、これは、「転倒して骨折して杖が必要になってから使うのではなく、高齢になったら杖を使って転倒を予防する」ことを指しているといえます。

 杖を使ったら杖に頼って足の筋肉が弱ってしまうかというと、そうではありません。

 杖には曲がってしまった背中を伸ばす働きがあります。そして痛みがある場合は杖が足にかかる力を腕に分散することで痛みを和らげたり、痛みのある部分を安静にする効果もあるのです。

 むしろ早めに杖を使うことが、加齢によって脊柱起立筋や腹筋が弱って、腰が彎曲するのを遅らせ、最終的に自分の足で歩く能力を長く維持することを可能にするのです。

 また40代、50代の人でも、膝痛や腰痛などがあって歩きにくいときに杖を使って歩くと、膝痛があって歩かなくなることからくる歩行能力の低下も防げるでしょう。

 ワンマン首相、バカヤロー解散で有名な戦後政治の草分け吉田茂元首相といえば、トレードマークが葉巻とこの杖でした。吉田茂元首相はイギリス紳士風に杖の似合う人で、晩年まで背筋が伸びて、杖をつきながら結局は長く自分の足で歩いていたことで知られています。

 吉田元首相の場合は歩行が困難になるなど、絶対的に杖が必要になって杖をついたのでないでしょう。護身的な要素もあって早めに杖をつくようになったともいわれていますが、このように早めに杖を使うことで、膝が曲がらず背筋をシャンと伸ばして歩くことが長く続いたのです。

 杖を使いながらの歩行の積み重ねが、歩行に必要なお尻や脚の筋肉の老化速度を遅らせたことが考えられます。

 吉田元首相は89歳で亡くなられたわけですが、当時の男性にしては長生きのほうです。ましてや戦後の混乱期の首相、その重責も考えると、長命には杖を使いながら長く歩行能力を維持したことも関係しているのでしょう。

 杖を使うと年寄りじみていやだというのではなく、杖を第三の足と考えて早めに利用するというのもいい方法です。

 杖は、デパートなど杖売り場で長さも合わせてくれるところで選ぶようにするか、整形外科の理学療法士に相談しても杖の長さや使い方のアドバイスをしてもらえるので、相談してみるといいでしょう。

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