累計11万部突破のベストセラー文庫『百歳まで歩く 正しく歩けば寿命は延びる!』。30代からシニア層まで幅広くヒット中です。若い頃身に付けた筋力は、中高年になった時、どのくらい役に立ってくれるものでしょう。待望の試し読み開始です。

「これでも若いときはけっこう足が速かった」が、口ぐせになっている人も少なからずいそうです。
 若いときは陸上部で鍛えた身体なのに、膝が痛くて今では小走りもできない……。たしかに年をとると敏捷性などは低下します。しかし、走れなくなったのは敏捷性が低下しただけの問題ではないのです。これも、筋肉を動かさないために筋肉が細くなって、筋肉が縮みっぱなしになった影響があります。
 いくら、若いときに運動経験が豊富でも、人の何倍もの筋トレに励んだとしても、その後に筋肉を使っていなければ筋肉はついていません。スポーツのプロ、アマを問わず同じで、オリンピックの金メダリストとて例外ではありません。
 若いときにつけた「筋力の貯金(筋)」は、たっぷり貯めたつもりでも貯まっていないと思ってください。当然、貯まっていないものは、引き出すこともできません。今も筋力の貯金(筋)があるのは、その後も筋肉を動かし続けた人だけなのです。
 ですから、中年になったあなたが特別に運動をしないまま、すでに長い時間がたっているのなら、若いときにスポーツでつけた筋力の貯金(筋)の残高は限りなくゼロに近いでしょう。
 そんな減ってしまった貯金をあてにしていると体型は崩れ、体力は低下するばかりなのです。

きんさんから学ぶこと

 文部科学省などが行った年齢別の体力テストの結果を見ると、瞬発系の筋力の低下に比べ、握力の低下はそれほどではありません。
 なぜかというと、握力はものを握る動作で、どんな年代でも、また外出しない日でも、握る動作をまったくしない日はないからです。このことは前述の、よく使う筋肉の筋力低下が少ないことを証明し、また筋肉をつけるのには高価な器具や特別な場所は必要ではなく、日常的に簡単にできる動作でもセルフトレーニングができることを教えてくれます。
 そして、握力以外にも、加齢の影響が出にくい筋肉として注目されているものがあります。それが太ももの裏側にあるハムストリングスと呼ばれる筋肉です。故成田きんさんが白内障の手術のために入院し、その退院後に脚力を補うために行ったトレーニングがこのハムストリングスを鍛えるものでした。
 きんさんは、ハムストリングスのトレーニングを開始したことで、歩行能力が見違えるほど向上したようです。方法は、うつ伏せに寝てお腹の下にクッションを入れ、1・5㎏の重りをつけた足をゆっくり上げる(膝を曲げる動作)というものです。
 きんさんがトレーニングしたハムストリングスが、どうして加齢変化に影響されないかについては、正確には高齢以降の加齢変化に影響されないかですが、高齢者特有の歩き方にその秘密が隠されています。
 あなたの身近に85歳以上の〝超高齢者〞がいらしたら、その方の歩き方を思い出してください。高齢になると膝が曲がり、股関節が曲がった状態で歩行をするようになります。こうした歩行はそれまでの後ろ側にある脚で身体を前方に押し出す方法とは違い、前に出した脚を支点として身体を引き寄せるような歩き方です。この歩き方では本来の歩行に必要な脚筋は低下しますが、ハムストリングスだけは低下しにくいのです。
 きんさんはこのハムストリングスを鍛えることで、膝が曲がり股関節が曲がった状態での〝晩年の歩き方〞を維持しました。結果として歩行能力が向上して、100歳になっても歩ける能力を維持できました。
 このきんさんの例は高齢者の知恵としてだけではなく、すべての世代に当てはまることでしょう。
 筋肉はその人の年齢に応じた活動に伴うようについているわけですから、ついている筋肉に応じて必要な動きは何かを理解してください。そして、必要な動きを筋力トレーニングなどで意識的に行うようにすれば、筋力は長く維持していけるのです。

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