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2017.07.04

第十四回

二の尻のくたびれを、シュッとさせたい。

内澤 旬子

二の尻のくたびれを、シュッとさせたい。
 小豆島で、美しい海を眺め、美しい白ヤギと暮らしながら、私の脳内から煩悩が消えることはない。別に煩悩を消したくて島に来たわけでもないから当然だ。二の尻のくたびれを、シュッとさせたい。

 しかしこの「体型その他、外見を何とかしたい、女として見栄え良くしたい気持ち」は、一体いつまで続くのだろうか。

 三十代は、アトピー性皮膚炎で顔に何も塗れなくなり、そのあと乳癌で四度の手術から一旦解放されたのが、四十前半。病気の期間、ながらく「女」を休業していたようなものなのだ。ここの期間で存分に足掻いたりしていれば、五十になるころには違う気持ちになっていたのだろうか。どうも私の中にはこの「女」休業期間を取り戻したいという気持ちがまだ消えないでくすぶっているのである。

 そして文字通り、この休業期間中にほぼ止まっていた生理は、ヨガのおかげだと思うのだが、毎月きっちり来るようになり、五十になった今年もいまだに毎月狂いもなく来ているのである。

 東京にいた頃、どうせもう長くないやね、癌が再発するまで楽しまなきゃ損★損★、肌の調子もいいんだし、たまたま仕事も上手くいって小金ならあるし、ヨガやって体調もいいし、酒も飲めるようになったしで、それなりに楽しく着飾り、塗りたくり、遊んだつもりだ。豚を飼って食べるなど、仕事方面も、かなり無茶してやりたいことを、やったつもりだ。

 豚を食べ終わり、千葉から戻って来た頃。予定ではそろそろ再発しててもおかしくないのに、検査に行ったら腫瘍マーカー値、ゼロ(結構すごい数値らしい)だった。これじゃ、そう簡単には死なないのかもしれない。このまま東京にいても息が詰まるし、なにしろ老後までの生活資金もないしで、小豆島にやってきたのだった。

 周りの人には信じてもらえないのだけれど、基本的に私は現代地球人として生きてるのが、どうにも性に合わないと感じている生物。努力して楽しいことを見つけないと、希死念慮が動き出してしまうのである。小豆島に移住を決めてから、狩猟をしたりヤギを飼ったりと、これまでよりも少し時間をかけて楽しく取り組めることを見つけて、実行に移した。

 しかしだ、しかし。やりたい仕事を作って、海外ドラマチェックという環境に適応した娯楽も見つけてということと、この「女としての外見へのこだわり」というものは、同じようだが、少し違う。「綺麗でいたい。体型を維持したい」という気持ちは、加齢とともに減るものだと、ずっとそう思い続けて来た。ある日突然さっくりと諦められるものではなくても、ジワジワと、加齢とともに市場から押し出され、需要も供給もなくなっていくのだろうと、自分の母親をみて、そのように思い込んできた。

 いやはやとんでもない。とんでもなかったですよ。気持ちは、加齢では、消えない。そしてその消えない気持ちに応えるように、次々と、二十一世紀仕込みの科学・化学技術を駆使して、加齢に抗う商品だの理論だのメソッドだのトレーニングだのが、湧いて出てきているのである。

 もしかして、やる気になれば、届くところに、若返り。……嫌だねえ。

 いや、自分が若さゆえの見誤りをしていただけで、たぶん大昔からそうだったのだろう。女性として綺麗でいたいという気持ちは、加齢で自動的に消えるものではなくて、その気持ちに応えようという市場は存在し続けている。もしかしたら成長しつづけて巨大化してるのかも。

 いいかげん認めなければならん。アトピーの時のように無縁になってしまえば、ある種気楽なのも、わかっているのだけれど。無縁になれないのだ、私という人間は。人生後期にいたって、業はどんどん深まるばかりってことだ。別に若返りたいわけではないのだけれど、弛んだり皺んだりしたくは、ない。なるべくならば、少なめにしといて、綺麗でいたい。

 しかしそれでも田舎暮らしに合わせて、爪は短くなったし、ネイルも四六時中しているわけでもなくなった。都会の同世代友人たちがしていたまつ毛エクステもしなくなったし、ハイヒール穿くことも少なくなった。島に来て、飾りは、減っているといえよう。けれどもだからこそ、体型だけは手入れして、加齢を、たるみを食い止めたい。ホントは肌だってシミとりたいんだけど、とりあえず調子は悪くないので、日焼け止めだけ塗っといて、まずは尻だろ尻。尻の方が深刻!!

 というわけで、二の尻どうにかしたい祭りが、永遠に止まらない私なのである。

 家の中でできる体操は、ほとんど試した。雑誌の特集やネットの記事でのヒップアップ体操があれば目を通す。動かす筋肉は同じような場所で、補助具もない状態でとなるし、いつもヨガでやっているポーズも少なくない。脚を横か後ろに動かしかながら大殿筋を刺激するもののバリエーションだ。骨盤を前掲させるのと、股関節を開きながら行うものも混ざる。

 しかし家の中でといっても毎日こまめに汗をかくまで運動というものが、どうにも続かない。すぐにサボってしまうのだ。家できちんとエクセサイズが出来る人になりたいものだ。しかしそんなぐうたらでも、鏡だけはドシッと部屋にあるわけで、着替えや風呂上がりに見ると、飲みすぎたり、風邪をひいて寝込んでいたりしていたあとは、鏡の尻は、きっちりと垂れが進んでいる。見ちまったからには対処しないわけにはいかない。慌てて風呂の中で下半身を揉み、エクセサイズをこなすのである。

 もし毎日きっちり続けられれば、もしかして今頃もっとシュッとした尻になるのかなあとも思うのだが、それがそうでもない。

 以前にネット記事で流行した、一日五回から十回ずつヒンズースクワットを増やしていくというトレーニング。最終的には三百回近くまでになった。そう、あれは随分頑張ってみた。記事に書いてある通り、膝を傷めないように、足より前に出さないようになど、いろいろ注意して続けてみたのだが、まったく、これっぽっちも、尻は上がらなかったのだ。弛みくらいは軽減したけれど、ここまでするからには、尻のカーブの頂点が上がるくらいにはなってくれるだろうと期待していたので、落胆失望は大きかった。いやまあ、一カ月くらいで結果を求める方がいけないのかもしれないけれど。がっくりきてしまい、スクワットは止めてしまった。三百回ともなると、時間もかかるし、反復運動はものすごく退屈なのだから、効果がなければ続ける理由はない。

 ああ、記事の写真ではアフリカ系の女性のプリッとした尻のスクワットビフォーアフターが出ていたのだが。そもそも肉の組成が違うのだろう。アフリカ系の人体の肉の厚みが本当に羨ましい。ついでに言えば彼らの後頭部の出っ張り方も好きだ。スカーフがとても綺麗に巻ける。胸も尻も後頭部も、薄ーくスライスしたみたいな身体を憎んでも仕方ないし、それなりに似合う服も見つけられるのでいいのだけれど。ビヨンセのライブ映像なんぞを見るたびに、ウットリ眺めてしまうのである。

 そんなこんなで情熱の山谷はあれど、なんだかんだと続けていられるのは、ごろ寝しながらできるポーズだけ。仰向けに寝て、両ひざを立てて、ニュース映像などを見ながら腰を引き上げる。それも限界まで引き上げたところをスタート地点としてさらに上げるのをゆっくり三十回とか。これはスマホの記事や本を読みながらでもできるのが、嬉しい。

 

 

 横向きに寝て、片足をそれぞれ垂直に十回ずつ上げる運動となると、テレビを見ながらならばできるが、読書は難しいのでなかなか行えない。床側の足を上げる動きは、内股に効く。仰向けに寝て、片足を横に真っすぐ開いて浮かせ、まっすぐのままの足の付け根の筋肉が痛くなるまで静止するエクセサイズは、テレビも読書もなんでもござれなのだが、効果がどこまであるのかが微妙。

 ともあれ、二の尻あたりの筋肉が、ちょっぴり痛くなるくらい、気がつけば動かしている。くどいようだが、尻の垂れは多少は良くなるのだが、なかなかそれ以上の効果は得られない。ひたすら悪化を防ぎ、食い止めているだけ。

 しかし自分の尻はなぜ垂れるのか。他の肉も垂れているならまだ納得できる。私の場合は尻だけなのである。全身に余剰の肉もそれほどないのに、尻だけが緩い。これはつまり、もしかしてというか、あきらかに、日常生活のすべての所作が、いけないのではないか。

 そんなある日、美脚のエキスパートが島に来るというすてきなメッセージが届いた。お知らせの主はO川大地さん。町営のスポーツ施設のインストラクターをする傍らで、以前に大阪のスポーツジムに勤めていた縁で、ピラティスからベリーダンスまで、さまざまなスポーツインストラクターを島に呼んでくださる。もともとは彼のご母堂と島のヨガ教室で一緒になっていて、「息子が今度ヨガの先生を大阪から呼ぶのでよかったら」とお声がけしていただいて、参加してみたのがご縁。

 そう。O川さんはまだとても若い。爽やかなイケメンだが、感覚としては息子もしくは甥っ子……。お若いけれど、島民の健康促進のために、面白い試みを始めてくださり、頼もしい限りである。で、O川プロデュースの教室に参加している男女の平均年齢も、当然若い。たぶん三十代が一番多いのではないか。というか、これまで通っていた島のヨガ教室は、自分よりも二十くらい年上の方が中心だったのに、今度は自分が最年長になったかも。確認したことないけど。なんでだろう。不思議なのだが、島でのご縁は、年が上の方か、下の方ばかりなのだった。

 まあそれはそれとして、ヨガも運動量高めのクラスが、不定期ではあるけれど、開かれるようになって、ありがたいかぎり。

 そんなO川さんが、今度は大阪にある美脚スタジオを主宰する金井みちよ先生を呼んでくださるというのだ。美脚。酷いO脚に悩んできて、ヨガで多少は改善したものの、まっすぐな脚なんぞ、一生手に入らないと思っている代物ではある。しかしあれだよ、なんたって脚は尻につながっているのだ。脚の動きが尻を作ると言っても過言ではない。ぜひとも参加しなければと、申し込んだのであった。

 みっちょん、こと金井みちよ先生は、ホントーにすごい美脚の持ち主であった。もともとは柔道の選手だったそうで、明るくて楽しいおしゃべりとともに、健康な美脚を目指していきますとのご説明。もちろんです。尻も同じく、細けりゃいいわけじゃないです。

 レッスンは初級ということで、脚のストレッチを中心に教えていただいたのだが、それだけで、ああそれだけで、自分の股関節と足首の固さが露呈した。そう。私の股関節はホント―――に固い。バレエをしていても、外旋できないし、開脚前屈もなかなか足が開かない。少しずつやるしかないとわかってはいるのだけれど。

 しかしこのように普段と違う動きをたまにすると、ヨガだけでは使えていない部分があることを実感する。アシュタンガヨガは特にポーズと順番が決まっているので、それ以外の動きをすることがない。長いしポーズの数も多いし、かなり網羅して全身を動かせる素晴らしいプログラムだと思うのだけど、それでも動かせていない部分があることは、わかる。

 たとえば、腕立ての姿勢になり、片足を膝立て肩口に持って来て、膝をクルクル回す。回らねえ……。身体全体がつられてゆらんゆらんしてしまう。膝だけに力が入らないだけでなく、足首が回ってくれていない。

 ひょっとして、これまでも足首を回しましょうとアシュタンガ以外のヨガクラスで準備体操としてやっていて、上手いこと回ってないかなと思うことはあった。綺麗な円を描いてくれないのだ。三角くらいになる。あったんだけど、それがなにかまずいことになるとは思っていなかったので、あんまり意識してこなかった。

 レッスンの後の限定期間、メールでの質問に答えてくださるとのことだったので、O脚を改善することはこの歳からでも可能なのかを聞いてみた。するとやっぱり踝から下のゆがみについては、足首を柔らかくして、その上に乗ってる足の骨の位置を一ミリずつずらすように、立ち方歩き方を改善していくので、一年一ミリくらいのペースとなるというようなことをご回答いただいた。

 なるほどそりゃ納得だ。脚が真っすぐに近くなれば、内転筋も良く使うことになるし、尻も自然に美しくなるのではないか。なにしろみっちょん先生の脚はもちろんだが、尻だってとってもとっても美しい形なのである。

 ああ、私が今大阪に住んでいたら。パーソナル美脚トレーニングを受けてみたいのだけれど、いかんともしがたい島暮らし。しかも東京出張と縁が切れないのだから、大阪に通うのはどうにもこうにも難しい。とりあえず、足首と股関節を、教えていただいたストレッチをしたり、風呂で足首を回してみたりすることにした。

 するとどうだろう。多少は足首が動くようになって、O脚は変わらないのだが、ヨガのポーズに進展がでてきたのだ。それはジャーンシルシアーサナCという座位のポーズで、片足を伸ばして座り、片足を折りたたんで踵を立てて内腿にくっつけるようにして爪先だけ床面につけて、さらに膝も床につけて、前屈するというもの。見ていただければわかるとおり、足首が硬いとまず床に爪先がつかないし、つけられたとしてもお尻がつかない。無理して膝をつけようとすると傷めるので、できる範囲でという具合で。

「C」とついているように、このアーサナはA、Bと前の段階がある。いきなりこのような無理なポーズをとるわけではない。ある程度股関節や足首を動かし前屈を繰り返し行ってから、この「C」に突入するんだが、それでもね……。もちろん毛布などを使って少しずつ負荷をかけるようにする。

 私はこのポーズ、右足首を回すのはもう五年以上前にできるようになっていたのだが、左足首を回すのは、永遠にできないんじゃないかというくらい、どうにもならないままだった。

 それがみっちょん先生から教わったストレッチをしながら足首を大きくゆっくり回す訓練を風呂の中でするようになったら、なんと、尻が浮かなくなってきたのだ。ひざはまだ浮いてるけど。それでも大進歩なのでとても嬉しい。

 みっちょん先生のレッスンをもっと受けてみたい! と思いながら、次の来島スケジュールは完全に東京出張と重なり、キリキリと歯噛みしながら欠席。そしてさらに待つこと半年だったっけな? 待望の来島が決まった。今度のテーマはウォーキングと美尻。もちろん二つ連続で受講することにした。(次回に続く)

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