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Yome Yome メオトドクショリレー

2017.07.04 公開 ツイート

『読書で離婚を考えた。』番外編1

夏はエスニックと果物料理。レシピ本の充実ぶりがすごい円城塔の本棚 田辺青蛙

円城塔さんと田辺青蛙さん夫妻による『読書で離婚を考えた。』。芥川賞作家の夫とホラー作家の妻が、お互いをより理解するために本を勧め合い、読書感想を送り合った格闘の軌跡をまとめた一冊が、6月22日に発売となりました。
その後、妻・田辺さんより、書籍発売後にあらためて思ったことも多かったようで、番外編の原稿が届きました。


夫婦は嫌になったら一時距離を置いたほうがいい

 先日、夫婦揃って『読書で離婚を考えた。』の取材を受けました。
 連載を書籍化する際、夫は面白くするために大げさに、そんなに怒っていなくても「怒っている」と注を書き足したんだろうと思っていたんですが、どうやらかなり本気だったみたいです。
 夫は「もう、本当にいやんなっちゃうんだから、ぷりぷり」という感じで小出しに怒りをアピールしたりせず、ずっと耐えに耐え、そして急にドッカーン! と爆発するタイプのようです。
 困ったのは、私が夫の怒りを貯めている状態を事前に全く把握出来ないところですね。

 最近ちょっと無口なので、危ないかな? とやや心配しているんですが、まあ多分大丈夫でしょう。
 取材の時に出た話題の一つなんですが、夫婦間で「私がどうして怒っているか分かりますか?」という類のクイズは出さない方が良さそうです。
 でも、気持ちや不満を相手に伝えるのはなかなか難しいことというのも分かります。

 私の夫はよく、「何度も言っているのに、君が理解してくれていない」という類のことを言います。
 私は言われたことを覚えていないので、ムッとして険悪になります(あとで言われたことを思い出して、自己嫌悪に陥ることがよくあります)。
 そういう時どうすればいいかというと、私たちの場合、ちょっと距離を置きます。
 夫婦一緒に居て気が付いたことは、「嫌になったら離れる時間が大事」ということです。
 コンビニの喫茶スペースでお茶を飲んだり、そのくらいのちょとした距離感ですね。
 この時間が奪われた時、本当に私達は別れてしまうような予感がしています。
 依存し合わず、いざとなったらお互いパッと離れることが出来るんだという安心感があるのが、我儘で身勝手な同士でもなんとか上手くいっている理由なのかも知れません。

 何でこういう話題からスタートしたのかと言うと、最近夫がなんだか無口でやや暗い表情を浮かべているからです。
 毎年この時期になると、暑さにへばっていることが多いので、単なる体調不良による機嫌の悪さからなのか、それとも私が気が付かないうちに夫を怒らせるようなことをしてしまったのか。
 今のところ全く分かりません。

 今後そっと、夫の好きな鳴門鯛焼きでもおいて様子を見てみます。

 さて、この連載の(番外編)では、本になった時に入れたかったけれど、入れられなかった記事をこれから紹介しましょう!


もくじ
1.夫婦の本棚のタイトル20冊発表
2.もし続きが出たら課題図書に選びたい本10選
3.没企画の紹介
4.私の考えたソラリス


1.夫婦の本棚のタイトル20冊発表

◎円城塔の本棚(田辺青蛙調べ) レシピ編

『粥百選:精進粥と中華粥とおかず』高梨尚之、 翠香園
『和中華』堤人美
『蒸しなべレシピ』岩崎啓子
『家庭で作れるトルコ料理』荻野恭子
『小さめの「ストウブ」で 早く楽にもっとおいしく!』今泉久美
『べにや長谷川商店の豆料理』べにや長谷川商店
『干し野菜百科』濱田 美里
『The基本200 (ORANGE PAGE BOOKS)』小田真規子
『池波正太郎の江戸料理を食べる』野崎洋光、重金敦之
『「分とく山」野崎洋光 季節を楽しむおもてなしの食卓』野崎洋光
『洋風料理 私のルール』内田真美
『フライパン1本でできるお手軽フレンチ』ダニエル・マルタン
『ウー・ウェンの北京小麦粉料理』ウー・ウェン
『体に美味しいブルガリア―ヨーグルトとハーブたっぷり 大使のキッチンで、「さあ、めしあがれ!」』明石和美、 長谷川朝美
『家で作れる[本格]中国料理: おもてなしに、毎日の食卓に』波多野 亮子
『だし醤油さえあれば、誰でもできる! 老舗醤油屋さんの本格ごはん』鎌田商事
『カリフォルニアばあさんの料理帖』レイ久子、 chiblits
『フランス 地方のおそうざい―かんたんレシピと地方のワイン』大森由紀子
『15分でうまっ! ベトナム&タイごはん 単行本』高谷亜由
『台湾かあさんの味とレシピ: 台所にお邪魔して、定番の魯肉飯から伝統食までつくってもらいました!』台湾大好き編集部

 このリストは家にあるレシピ本のほんの一部です。
 家にある調理器具はよく使いこまれており、様々なスパイスの瓶が行儀よく並んでいます。私が台所にいると、夫は物凄く不安そうな顔になりますが、私は夫が台所にいると何だかほっとします。
 夏はエスニック系の料理と果物料理がよく出ます。
 ここ最近ではクスクス料理が多いですね。ごはんを炊く気力がない時はクスクスがお勧めらしいです。
 私も学生時代、クスクスにお湯かけて檸檬汁をかけて、塩と胡椒だけでよく食べていました。
 大ざっぱな料理なら、作るのも食べるのも、結構好きなんですが、でも夫が求めている食生活は腹が満たされればええねんっていうのでは無さそうです。
 どのレシピ本も読み物ではなく、実用書として使われているのを見て、凄いなあ……と思っています。
 自分じゃ、絶対に出来ないですね(断言)。


◎円城塔の本棚(田辺青蛙調べ) 小説+実用書編

『すごい物理学講義』カルロ ロヴェッリ
『脳はなぜ都合よく記憶するのか 記憶科学が教える脳と人間の不思議』ジュリア・ショウ
『貨幣システムの世界史 増補新版――〈非対称性〉をよむ (世界歴史選書)』黒田 明伸
『生物はなぜ誕生したのか:生命の起源と進化の最新科学』ピーター・ウォード,ジョゼフ・カーシュヴィンク
『消滅した国々―第二次世界大戦以降崩壊した183ヵ国』吉田 一郎
『偶景』ロラン バルト
『図書館大戦争』ミハイル エリザーロフ
『木に登る王:三つの中篇小説』スティーヴン・ミルハウザー、 柴田 元幸
『謡曲二百五十番集』大谷 篤蔵、 野々村 戒三
『異形の愛』キャサリン・ダン
『スパム[spam]:インターネットのダークサイド』フィン・ブラントン
『最後の性本能と水爆戦 (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)』道満 晴明
『未来政府』ギャビン ニューサム,リサ ディッキー
『書体大百科字典』飯島 太千雄
『天使の爪』アレハンドロ・ホドロフスキー
『江戸の遊び絵』稲垣 進一
『古都がはぐくむ現代数学: 京大数理解析研につどう人びと』内村直之
『籠の鸚鵡』 辻原登
『通天閣 新・日本資本主義発達史』酒井 隆史
『そして最後にヒトが残った―ネアンデルタール人と私たちの50万年史』クライブ・フィンレイソン

 色々ある中から、適当に目についたタイトルを選んで載せてみました。
 もちろん、ほとんど私が読んだことない本ばかりです。(私の既読本も含まれています)
 家の本棚にある物ばかりなので、読もうと思えばいつでも読めるのですが……いつか手に取ることってあるのかなあ?
 夫は年数百冊の単位で本を読んでおり、私は年十数冊といった程度でしょうか、読む量にはかなり差があります。
 夫は本を保管する為だけの部屋を、家から歩いて5分ばかりの所に借りています。
 そこもかなり埋まりそうな状態になっているようなのですが、今度はどうするんでしょうね。


◎田辺青蛙の本棚(自主申告)

『大阪伝承地誌集成』三善貞司
『愛知妖怪事典』あいち妖怪保存会
『ときめく妖怪図鑑』門賀美央子、 東雅夫
『ブレンダと呼ばれた少年―ジョンズ・ホプキンス病院で何が起きたのか』ジョン・コラピント
『伊藤潤二の猫日記 よん&むー』伊藤潤二
『生と死の分岐点―山の遭難に学ぶ安全と危険』ピット・シューベルト
『液体殺人―連続毒ドリンク事件』永寿日郎
『死のクレバス―アンデス氷壁の遭難』J. シンプソン
『凍える帝国―八甲田山雪中行軍遭難事件の民俗誌 (越境する近代) 』丸山泰明
『マダムGの館』グレゴリ青山
『うまい雑草、ヤバイ野草 日本人が食べてきた薬草・山菜・猛毒草 魅惑的な植物の見分け方から調理法まで』森昭彦
『涙を流し口から火をふく、四川料理の旅』中川正道、 張勇
『ワインは楽しい!』オフェリー・ネマン、 ヤニス・ヴァルツィコス
『シリアルキラーズ -プロファイリングがあきらかにする異常殺人者たちの真実』ピーター・ヴロンスキー、 松田和也
『ブラジルから来た少年』アイラ・レヴィン
『子供たちは森に消えた』ロバート・カレン
『嘘をついた男』エマニュエル・カレール
『オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険』鈴木光太郎
『南へ―エンデュアランス号漂流 』アーネスト・シャクルトン
『海岸列車』室井大資

 夫の書架とは違って、数学や物理関係の本や経済や、PC関係の本は含まれていません。
 遭難物……最近は山に関するものが増えて来ています。
 でも、夫婦揃って登山経験はありません。
 こうやって見てみると、ドキュメンタリー物の割合が多いですね。

 

2.もし続きが出たら課題図書に選びたい本20選(田辺青蛙から円城塔へ)

『フォーチュン・クエスト』深沢美潮
『弘兼流 60歳からの手ぶら人生』弘兼憲史
『天使なんかじゃない』矢沢あい
『熊が人を襲うとき』米田 一彦
『ハナシがちがう!―笑酔亭梅寿謎解噺』田中啓文
『ピアノのムシ』荒川三喜夫
「梅の入れ墨」(『島抜け』収録)』吉村昭
『天空戦記シュラト』あかほりさとる
『青の化石 (富士見ファンタジア文庫―道士リジィオ)』冴木 忍、 鶴田 謙二
『鉄鼠の檻』京極夏彦
『蟻帝伝説クリスタニア』白井英、水野良 
『モルフォチョウの碧い輝き―光と色の不思議に迫る』木下修一
『でろでろ』押切蓮介
『うたう百物語 Strange Short Songs』佐藤弓生
『遊星ハグルマ装置』朱川湊人、 笹公人
『ポケット版 大阪名物: なにわみやげ』井上理津子、団田芳子
『バーナード嬢曰く。』施川ユウキ
『復刻版 怪談人間時計』徳南晴一郎
『怪談現場 東京23区 』吉田悠軌
『よい匂いのする一夜 』池波 正太郎

 入れようかどうしようか悩んでいる時が、連載中とても楽しかったですね。
 上のリストは私の中高生の時にドハマりした作品と、最近読んで(もしくは読み直して)うおおおっと感じた作品を中心に選んでいます。

(後編につづく)

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田辺青蛙

1982年大阪府生まれ。オークランド工科大学卒業。
2006年、第4回ビーケーワン怪談大賞で佳作となり、『てのひら怪談』に短編が収録される。2008年、『生き屏風』で、第15回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。
現在大阪に作家の夫と在住。そんな夫とのアメリカ旅行記&エッセイ集の『モルテンおいしいです^q^』(廣済堂出版)『読書で離婚を考えた。』(幻冬舎)発売中。
怪談と妖怪ネタを常時募集中。

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