果たして現在の科学は、どこまで地球外生命に迫っているのか?
そもそも、地球外生命は存在するのか?

研究国立天文台天文情報センターの縣秀彦(あがたひでひこ)さんの新書『地球外生命は存在する!』からの短期集中連載、最終回は地球の属する太陽系から飛び出して、宇宙旅行に、そして時間の旅にお連れします。

 

おり姫とひこ星を探して ~地球から天の川へ

 太陽系の果てでは、彗星の卵たちが太陽系を球殻状に取り囲んでいます。「オールトの雲」です。

 天文学者は通常、彗星の巣であるオールトの雲までを太陽系と認識しています。つまり、太陽の重力によってその周りを公転している天体が存在する範囲です。太陽系を球殻状に取り囲むこの領域から、多くの彗星が地球にやってきています。太陽系の形成史から見ても、オールトの雲までがいまから46億年前に誕生した太陽系の一員と考えられています。

 地球からオールトの雲までは、太陽─地球間のおよそ1万倍もの距離があります。

太陽系の果て、オールトの雲

 

 太陽系を飛び出し、さらに遠くへ進む場合は「光年」という距離の単位が使われています。光年とは、光が1年で進む距離。1光年は約9兆5000億キロメートルです。遥か遠いところまで来ました。

 ちなみに光は、宇宙空間を1秒間に30万キロメートル進みます。私たちがいま見ている太陽の光は、地球までの約1億5000万キロメートルの距離を、8分19秒かけて進んできたものです。私たちが1年前に放出した電波は、光も電波も同じ速さで進みますから、ものすごく感度の高いアンテナがあれば、1光年(9兆5000億キロメートル)先のところまで到達していることがわかるでしょう。

近隣の恒星たち

 

 日本人の誰もが幼い頃に耳にする七夕の伝説がありますが、実際、私たちからおり姫星(こと座のベガ)までは25光年、ひこ星(わし座のアルタイル)までは17光年かかります。ベガとアルタイルの距離は15光年。つまり、光でも15年かかってしまうのです。仮に、おり姫が携帯電話で「ひこ星さん、7月7日に会いましょう」と電話をすると、ひこ星には15年で届きます。ひこ星が返事をすると、30年かかっており姫に届くことになります。

 遠くにあるものほど、昔のものしか見えない。昔の情報しかわからないというのが宇宙を観測する際の事実、宇宙が4次元であるという理由です。宇宙は縦、横、高さの3次元プラス時間軸という4次元で考える必要があります

 

さよなら天の川 ~アンドロメダへの旅

 さて、私たちが住んでいる太陽系を含む巨大な星の渦巻きが天の川銀河(銀河系)です。天の川銀河は雲のようにも見えますが、ガリレオ・ガリレイが400年前に望遠鏡で観察し、これは雲ではなくて星の集団だと気づきました。

天の川銀河全体と太陽系

 太陽系の位置から見たこの渦巻きは、白い雲のように空をぐるっと一周しています。一周している雲の一番濃い部分が、夏の星座さそり座やいて座の方向、その反対側が冬の星座となっています。天の川銀河は端から端までが10万光年。太陽系の場所は中心から約2万6000光年離れたところです。

 その天の川銀河には、実に1000億を超える、太陽のように自ら輝く恒星が存在しています。恒星の周りには次々と惑星が見つかっており、そのうちの約2割は地球に近い大きさであることがわかっています。さらに、そのうちの十数個は液体の水が存在している可能性のある星です。

 ただし、おり姫とひこ星の話と同様に、その惑星まではとても距離がありますので、私たちが気軽に出かけていくとか、宇宙人が訪ねてくるということは考えられません。

 前述のボイジャー1号が我々の太陽系を脱出するには、数千年以上かかります。それくらい遠い世界なのです。

 

 さあ、天の川銀河を離れ、さらに遠くの世界を見にいきましょう。

 宇宙は銀河でできています。このうちアンドロメダ銀河は、私たちの網膜で、光の粒々を捉えられる一番近くの天体です。この外側にも銀河は広がっていますが、肉眼では見ることができず、望遠鏡で距離や位置を測っています。

 秋の代表的な星座のひとつ、アンドロメダ座に注目しましょう。アンドロメダとはギリシャ神話に登場する古代エチオピアの美しい王女の名前です。星座絵で見ると、このアンドロメダ姫の腰のあたりに、私たちは肉眼で米粒大ほどのアンドロメダ銀河を見ることができます。まさに“こしひかり”です。アンドロメダ銀河は、230万光年離れています。つまり、230万年を経て私たちの目に入ってくるのです。

 

人類発祥とグレートジャーニー

 230万年前に遡ってみると、それはまさに、アフリカの大地で初めて、私たち人類の祖先が二本足で歩行を始めた頃の時代です。

 驚くべきことに、その当時の記憶が、私たちの体をつくっている60兆個もの細胞の多くに、そのまま残っているのです。私たちはDNAの塩基配列によって、父親と母親から遺伝情報をもらっています。

 ここで、私たちの遺伝子が、当時の遺伝子とどう違うのかを考えてみます。自分と周囲の人との遺伝子の違いは、親戚同士でない限り0.1%程度です。さらに20世紀の初頭に行われた、チンパンジーの遺伝子解析では、人類と98.4%同じだということがわかりました。チンパンジーと私たち人間の遺伝子の中身は、1.6%しか違わないのです。

 そして、次に人間に近いオランウータンとの違いは3%ほど。つまり、チンパンジーやオランウータンの祖先と一緒に木の上で生活していた人類の祖先が、二本足でアフリカの大地を歩き始めたときの遺伝子と、いま私たち一人ひとりが持っている遺伝子の情報はわずか3%も違わないのです。

 

 ですから、私たちの体を構成している細胞の中には、当時と全く同じ遺伝情報=記憶が97%も残っていると言えるのです。それを私たち共通の祖先たちは数百万年間、命としてつなぎ、何十万回もの交配によって子孫を残し、子孫にその遺伝子を伝えてきました。その共通の祖先を持つ子どもたちが、いま、地球上には73億人もいます。73億人の遠い遠い祖先は、アフリカの大地を手をとり合って歩き始めた、たった一組のカップルだったのです。

 共通の祖先だとわかったとたんに、人間同士、国同士でいさかいをしていることが、なんてバカバカしいことだと思えるのではないでしょうか。

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この続きは幻冬舎新書『地球外生命は存在する!』でお楽しみください。

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「人類が21世紀中に、地球以外の星で生命を見つける可能性は50%以上」と著者。というのも、地球外生命が存在する可能性が高い、地球とよく似た環境の系外惑星(太陽ではない恒星を周回する惑星)が、最近になって次々と発見されているからだ。地球外生命は、人類のような生命体なのか、それともはるかに進化した生命体なのか? そもそも生命はどのように誕生するのか。生命誕生の謎から系外惑星探査の最新動向まで、わかりやすくドラマチックに解説。人類究極の謎に迫る一冊。