果たして現在の科学は、どこまで地球外生命に迫っているのか?
そもそも、地球外生命は存在するのか?

研究国立天文台天文情報センターの縣秀彦(あがたひでひこ)さんの新書『地球外生命は存在する!』からの短期集中連載、第3回は地球外知的生命体とコンタクトをとろうとする試みについて。地球外生命に向けたメッセージは、はたして何語で書けばいいのでしょうか?

 

知的生命体とコンタクトをとる方法

 地球外知的生命体探査の先駆者であるフランク・ドレイクは、自ら知的生命体とのコンタクトを試みています。

 しかし、宇宙空間は生命体がUFO(未確認飛行物体)に乗って旅してこられるほどせまくはありません。最高速の宇宙船でも、数万年の長旅をしない限り隣の惑星系にはたどり着けないのです。

 例えば、太陽系全体の広がりはおよそ1万天文単位、すなわち太陽─地球間の距離の1万倍もあります。1977年に地球を旅立った「ボイジャー1号」が、太陽系を飛び出すのには数千年の歳月が必要です。太陽系内に知的生命体がいるのであれば、訪ねてこられる距離かもしれませんが、もし、太陽系の外側から地球を目指そうとすると、さらに膨大な時間がかかります。もっとも太陽系に近い恒星まで、光のスピードでも4年以上かかってしまいますが、ボイジャーのような探査機のスピードでは、数万年もの航海が必要なのです。

 宇宙とは、生命体にとってなんと広大な空間なのでしょう。

 

 そこで、ドレイクは宇宙人からのメッセージを受け取ることと、宇宙人に向けて電波でメッセージを送ることを試みています。このような地球外知的生命体探査の活動を、一般には「SETI(セチ/Search for Extra-Terrestrial Intelligence)」と呼んでいます。

※写真はイメージ ©NASA

 

 ドレイクがまず行ったのは、惑星が存在しそうな恒星に電波望遠鏡を向けて、宇宙人からの電波メッセージを受信しようという計画でした。最初のSETIは、1960年に行われた「オズマ計画」です。

 ドレイクは、宇宙人の存在が期待される恒星として、くじら座のタウ星(地球からの距離は12光年)とエリダヌス座のイプシロン星(地球からの距離は11光年)を選びました。この2つの星が選ばれた理由は、太陽系に近い恒星であることと、サイズとその表面温度も太陽と似ているからです。

 ドレイクは、これらの恒星の周りに惑星が存在すると仮定し、そこから人工電波が地球に向かって発信されていないかを、米国グリーンバンクにある国立電波天文台の電波望遠鏡で、4カ月間、計150時間にわたって探りました。残念ながら、オズマ計画では人工電波は検出されませんでしたが、地球外知的生命体からの電波を誰よりも早く見つけ出そうというSETIの試みは、その後世界中に広がっていきました

 

宇宙人へのメッセージは何語で書けばいい?

 相手が電波を発するのを待つのみではなく、こちらから積極的にメッセージを送ろうという活動も始まりました。

 ドレイクとともに並び称されるアストロバイオロジーの父、米国のカール・セーガンは、1974年、プエルトリコにある当時世界最大(口径305メートル)のアレシボ電波望遠鏡より、2万4000光年離れた球状星団M13に向けて、地球人からのメッセージを発信しました。宇宙人が解読可能な情報とは、いったいどんなものでしょうか。

 もちろん、英語や日本語といった言葉は通じません。人類が世界共通で勝ち得た最初のコミュニケーションツールと言えば、まずはボディランゲージでありましょう。そして言語を獲得し、音楽、数学、天文学……と、その幅が広がります。

 しかし、電波に乗って宇宙空間を渡っていく信号は、トンとツーで表現されるモールス信号同様、0か1かのデジタル信号(2進数)です。

 M13の宇宙人は、このメッセージの2進数をまずは素因数分解し、素数を見つけ出します*1。そして、23×73の素数からそれぞれを横軸、縦軸のマス目とし、0を白く、1を黒く塗りつぶしていくと、そこに地球人からのメッセージが図示されるという仕組みでした(次図参照)。

*1 編集部注:メッセージは1679個の0か1かのデジタル信号で構成されており、1679を素因数分解すると23×73になる。

アレシボ電波望遠鏡から送った電波信号。
左上から順に、1から10までの数字の表記ルール、地球上の生命をつくる元素の原子番号、DNAの化学式と二重らせん構造の図、人の形と新潮、地球上の人口(当時)、太陽と9つの惑星(冥王星を含む)、電波望遠鏡の形と大きさを示している。

 

 余談になりますが、このメッセージの仕組みと内容は、とてもよく考えられた情報処理の練習問題として紹介されることもあります。実際に米国のある大学で理系の大学生にこの暗号を解読させてみたところ、かなりの学生がほぼ理解できたそうです。ですので、これを電波望遠鏡で受け取れる能力のある宇宙人であれば、無事に解読できるでしょう。

 宇宙人がこのメッセージを解読して返事が届くのは4万8000年後。セーガンらは、本当にそんな気長に待たなければならない返事を期待して電波信号を発信したのでしょうか。私には、「地球人よ、長生きしよう」というメッセージこそが、彼の真のねらいだったような気がしてなりません。

 

カール・セーガンからの手紙

 20世紀、宇宙探査黎明期(れいめいき)のカリスマ天文学者カール・セーガンの茶目っ気は、それだけではありません。

 1972年、73年に相次いで打ち上げられた「パイオニア10号・11号」。世界で最初の深宇宙探査機2機は、木星と土星をそれぞれ探査した後、太陽系を飛び出すルートで現在も飛行を続けています(ただし、探査機からの信号は途絶)。

 このパイオニア2機には、カール・セーガンから宇宙人に向けてのメッセージが、金属板に描かれて搭載されています

 次のイラストはセーガンの発案で、彼の当時の夫人である芸術家リンダ・サルツマンが描いたものです。無防備で友好的な姿を示す地球上の男女が描かれていますが、当時は、「宇宙にポルノをまくのか」と批判する人もいました。

パイオニアに搭載されたメッセージ ©NASA Ames

 

 金属板の下部には、太陽系の第3惑星である地球からパイオニアが飛び立ったことが示してありますが、その太陽系とはいったいどこにあるのでしょう。

 イラストの左半分にある図は、当時知られていた太陽系からのパルサーの方向と距離が描き込まれています。つまり、この金属板を手にした宇宙人は、パルサーの位置関係を手がかりに、天の川銀河のオリオン座アーム上にある「太陽系」の第3惑星に、知的生命体が存在することを簡単に理解するでしょう。ポルノ批判はともかく、当時、この無防備で弱点だらけ(すきだらけ)の地球人を見て、宇宙人が侵略に来たらどうするんだという不安を口にする科学者がいたのも事実です。

 しかし、セーガンの卓越したその視界には、文明を長く維持し、私たちホモ・サピエンスより進化した地球外知的生命体は、他の生物を攻撃するような野蛮性を持っていないという確信と、宇宙人はそんなせまい了見ではないという科学的裏付けがあったに違いありません。

 

 さらに、セーガンは、1977年に打ち上げられたボイジャー1号と2号に、地球上の様々な自然や人間の生活の様子を撮影した115枚の画像、世界各国55の言語で語られたメッセージ(あいさつの言葉)、そしてベートーベンの楽曲も含む世界各地の音楽を収めたレコード・ディスクを搭載しています。

 まるで大海に流した手紙入りのガラス瓶のように、いつの日かパイオニアやボイジャー探査機を宇宙空間で拾い上げ、地球人からのメッセージを読んで返事を送ってくれる宇宙人は果たしているのでしょうか。科学的に考えれば、とてもとても可能性の低いお遊びのような試みですが、将来の人類に夢をつなぐかけがえのない試みとも言えるのではないでしょうか。

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※次回「生命は宇宙で生まれた?左手型アミノ酸の謎(仮)」は7月3日(月)公開予定です

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「人類が21世紀中に、地球以外の星で生命を見つける可能性は50%以上」と著者。というのも、地球外生命が存在する可能性が高い、地球とよく似た環境の系外惑星(太陽ではない恒星を周回する惑星)が、最近になって次々と発見されているからだ。地球外生命は、人類のような生命体なのか、それともはるかに進化した生命体なのか? そもそも生命はどのように誕生するのか。生命誕生の謎から系外惑星探査の最新動向まで、わかりやすくドラマチックに解説。人類究極の謎に迫る一冊。