不思議な深海生物について、最新研究からわかったことを美しい写真とともに紹介するビジュアルブック『深海散歩 極限世界のへんてこ生きもの』(監修・藤倉克則〈海洋研究開発機構〉)が発売になりました。
その中から今回は「大きな目で見つめる先には――スタイルフォルス コルダタス」を試し読みとして公開します。真っ暗闇の深海で少しでも周りを見ようと、こんな形に進化した魚がいるのです。

大きな目で見つめる先には

私たちは、暗い場所で周りをよく見ようとするとき、目を大きく開け、さらに、少しでも目を対象に近づけようとする。

スタイルフォルス コルダタスは、アカマンボウ目に属する魚。長い進化の過程で、深海にあってそんな努力を続けているうちに、こんな姿のものが生き残ったのだろう。英名は「tube eye(筒状の目)」。その名のとおり、大きな目は筒状で両目を合わせると双眼鏡のよう。暗い深海でも、より多くの光を集めることができる。

口は、とても小さなおちょぼ口。ただし、口の奥が袋状になっていて、頭をぐっと上げると口内が広がり、スポイトのように獲物を吸い込むことができる。頭を上げたときの口内の容積は、ふだんの38倍以上にもなるという。獲物は小さなプランクトン。体を垂直にして泳ぎ、上にいるプランクトンを双眼鏡の目で探す。見つけると、大きな目でしっかり距離を測り、おちょぼ口で大量に吸い込む。

 

スタイルフォルス コルダタス
Stylephorus chordatus

頭部のほとんどを目が占める。できる限り「見る」ことに特化したのだろう。体長は30cmほどになるが、英名の別名は「thread tail(糸のような尾)」。体は細く、糸状の尾ビレをもつ

写真/amanaimages​

 

次回の「第3回 「かわいい」「不気味」賛否うずまく深海ダコ」は7月8日(土)に公開予定です。

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