極寒、高圧、猛毒……。その過酷さで人間を拒み続けてきた深海。しかしもしも散歩することができたなら、想像を絶する面白い生きものたちが「なんだこいつ?」という顔をしてこちらに寄ってくることでしょう。
そんな不思議な深海生物について、最新研究からわかったことを美しい写真とともに紹介するビジュアルブック『深海散歩 極限世界のへんてこ生きもの』(監修・藤倉克則〈海洋研究開発機構〉)が発売になりました。
その中から今回は「はじめに」を試し読みとして公開します。2000年前の王様も、深海に強く憧れていたようです。

はじめに

きらきらと光を受け、寄せては返す波打ち際から、水深10000mを超える漆黒の深海まで、この星のたったひとつの海はつながっています。太古の昔から、人は深い海への憧れをもっていました。いまから2000年以上も昔、アリストテレスの弟子でもあったマケドニア王アレクサンドロス3世は、深い海に強い興味をもち、ガラスの樽を作らせて海に潜ったと伝えられています。 

ふつう、200m以深を「深海」と呼びます。人間の侵入を拒み続けるその深海世界を科学的に知ることができるようになったのは、1872年から行われたイギリスの「チャレンジャー号」による世界一周海洋調査航海からです。

多くの人々の挑戦により、次第に明らかになってきた深海世界ですが、最初は深海生物の生きた姿を知ることはできませんでした。そのため、深海の生物は、標本となった奇怪な姿ばかりが紹介されました。

近年、有人潜水調査船や無人探査機、採集機器などの進歩によって、深海生物たちの生きた姿を知ることができるようになり、そのクールでキュートな姿や、極限環境に生きるための健気な生き様を、ようやく知ることができるようになってきました。

では、ご一緒に深海を散歩しながら、そこに棲む生物たちの魅惑の姿を眺めることにいたしましょう。

 

ババムニダ カリスタ
Babamunida callista
コシオリエビ科の一種。ヤドカリの仲間だ。オレンジと赤紫の縞が特徴のおしゃれな姿。全長は2cmほど。驚くと、エビと同じように後ろに跳ねて逃げる

写真/土田真二(海洋研究開発機構)

 

次回の「第2回 筒状の目、スポイト状の口、糸みたいな体の深海魚」は7月5日(水)公開予定です。

この記事をシェア
この連載のすべての記事を見る

★がついた記事は無料会員限定

藤倉克則『深海散歩 極限世界のへんてこ生きもの』
→試し読み・電子書籍はこちら
→書籍の購入はこちら(Amazon)

深海をのんびり歩いてみれば、きっと彼らが寄ってくる。
最新研究でわかった、生きる工夫をわかりやすく解説


藤倉克則/Dhugal JohnLindsay『深海のフシギな生きもの 水深11000メートルまでの美しき魔物たち』
→書籍の購入はこちら(Amazon)

はずれるアゴ!メスに吸収されるオス!有毒熱水大好きエビ!死体で子育て!かわいくて、怖くて、おかしくて、とっても奇妙な深海の生きものたちを、美しすぎる写真満載で解説。


藤原義弘『深海のとっても変わった生きもの』
→試し読み・電子書籍はこちら
→書籍の購入はこちら(Amazon)

深海ファン必携! 国立科学博物館の特別展「深海」でも展示されたJAMSTEC研究者・藤原義弘の写真を85点掲載。研究者である著者が深海調査船で、また自身の研究室で撮影した、生きたままの深海生物写真のみを載せている。地上で生存させることが難しく、標本撮影に頼ることが多かった深海生物の奇妙で美しい素顔とともに、最先端の深海情報をわかりやすく解説。一読すればあなたも深海生物のとりこに!