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スピルバーグの映画『E.T.』が公開されてはや35年。H・G・ウェルズの小説『宇宙戦争』は出版から119年。SFの世界ではおなじみの宇宙人ですが、それはあくまで空想の産物でした。

しかし先日、生命が存在できる環境である可能性のある惑星(すでに数十個発見されています)が新たに10個も発見されたというニュースが流れるなど、地球外生命の科学的な研究への期待がにわかに高まっています。

果たして現在の科学は、どこまで地球外生命に迫っているのか?
そもそも、地球外生命は存在するのか?

研究国立天文台天文情報センターの縣秀彦(あがたひでひこ)さんの新書『地球外生命は存在する!』からの短期集中連載です。

 

「もうひとつの地球」をさがして

 この宇宙の中で、地球以外に生命の宿る星はあるのでしょうか。

 不思議なことに、文明が発祥し天文学がスタートしてから数千年、望遠鏡が発明されてから400年、人工天体が地球の大気圏外や惑星を直接探査できる時代になってから50年を過ぎた現在でも、地球以外では知的生命体はおろかバクテリアのような微生物でさえ見つかっていません。

 しかし、天文学と宇宙探査技術が進歩する昨今、古代より人類が追い求めていた夢の発見まであと一歩のところまで来ていると、国立天文台で日々研究を続けながら、私は強く感じています。

 身近な太陽系においては、火星、そして木星の衛星や土星の衛星などに、地球外生命が存在する可能性はいまだ否定されていません。また、火星探査は現在進行形で、いつ生命の痕跡発見のビッグニュースが飛び込んでくるかわかりません。

 

 一方、もし私たち人類以外の知的生命体が宇宙のどこかに存在するとしたら、太陽系外に広がる宇宙で星座を形作っている恒星たちの周りの惑星や衛星だろうと、現在では考えられています。

 1995年以降、太陽系外の惑星(系外惑星)が次々と発見されるようになり、その数は確認されただけでも、3600個(2017年4月現在)を超えています。早い時期に発見された系外惑星の多くは、直径が地球の10倍以上もある木星のような巨大なガス惑星でした。

 しかし、検出技術が進むにつれて、中には地球サイズの惑星やハビタブルゾーンに存在する惑星も見つかり始めています。「ハビタブル」とは居住可能という意味であり、恒星からの距離がちょうどよく、水が液体のまま惑星の表面に存在できる領域を、天文学者たちはハビタブルゾーンと呼んでいます。

 生命には液体の水(海)が必要ですが、惑星が恒星に近すぎると表面の水は蒸発してしまい、反対に恒星から遠い位置にあると、温度が低すぎて氷になってしまうのです。太陽系の場合、その範囲は0・8~1・5天文単位程度(太陽と地球の平均距離を1天文単位とし、その距離は約1億5000万キロメートル)と言われ、地球は、太陽系のハビタブルゾーンに位置しています。

太陽系のハビタブルゾーン ※研究者によって、主張している値は若干異なる

 常識的に考えるなら(その科学の「常識」というのは、過去に何度もひっくり返されてきた歴史がありますが)、地球以外の天体に知的生命体が住んでいるとしたら、豊富な液体の水(海)と酸素やオゾンなどの大気に覆われている惑星が、まずは候補に挙がるでしょう。

 このようなハビタブルゾーンに位置する地球型惑星で、近い将来、大気や海の存在が確認できれば、その惑星は地球同様に生命を育んでいる可能性が高まります。

 

宇宙生物学(アストロバイオロジー)とは

 しかしその一方で、宇宙の中で生命が宿る星の条件は、実はまだよくわかっていません。私たち地球人は、唯一地球のみを生命が宿る星として認識していますので、その条件がわからないのです。

 この、よくわかっていないことを追究しようとしているのが、「アストロバイオロジー(宇宙生物学)」と呼ばれる天文学と生物学の複合研究分野です。

「astrobiology」は、もともとNASAの造語で、NASAの定義によると「宇宙における生命の起源、進化、分布、および未来を研究する学問」とのことです。本格的な研究が始まったばかりですので専門家によって定義はまちまちですが、関わる研究分野は広く「分子生物学」「微生物生態学」「生化学」「地球化学」「物理学」「地質学」「惑星科学」、そして「天文学」など、様々な分野から次々と研究者が参入しつつあるトレンディーな研究分野とも言えます。

 そしていま、アストロバイオロジーの研究者たちは、
「宇宙における生命の起源は?」
「地球以外の場所で生命はどのように進化することが可能か?」
「宇宙のどんなところであれば(どんなところにまで)生命は存在できるのか?」
「将来、人類は他の生命を探し出すことができるのか?」、
さらには「知的生命体と巡り合うことができるのか?」といったテーマで「宇宙と生命」について真面目に研究しています。

「真面目に」とわざわざ断ったのは、SF(サイエンス・フィクション)としての宇宙人の話題と、サイエンスとしての宇宙生命の話は分けて扱った方がよいからです。

 

地球外生命の発見がもたらすもの

 さて、地球外生命体を見つけ出すもっとも確実な方法は、太陽近傍の恒星を詳しく調べ、ハビタブルゾーンに存在する地球サイズの惑星を探し出し、その大気の温度や組成を調べることです。そのためには、次世代の大型望遠鏡や専用の宇宙望遠鏡が必要だと考えられています。

 私が勤める国立天文台は、現在、「TMT(Thirty Meter Telescope:口径30メートル望遠鏡)」という大きな望遠鏡を建設しようとしています。日本、米国、カナダ、中国、インドの国際協力による一大プロジェクトです。このTMTを使って系外惑星を直接観測し、地球外の生命が存在する(した)シグナルを見つけることが我々の大きな目標のひとつです。

 どこか遠くの系外惑星の大気のスペクトル(虹)をTMT望遠鏡で集めてみると、そこに酸素が見つかる、窒素や二酸化炭素や水もある。もし、そんな地球に似た惑星が発見されたら、生命が存在する可能性があるのです。そこに向かって電波や光でメッセージを送ると、20光年先の星だったら往復40年で返事が来る。50光年先の星だったら100年で返事が戻ってくるかもしれないのです。人類はまだまだ長生きしないといけません。

 私個人の楽観的な予想ですが、人類が21世紀中に生命が宿る星を見つけ出す可能性は50%以上あると思います。

 もしかしたら、皆さんが生きているうちに、知的生命体発見の大ニュースを聞くことができるかもしれません。なんとすごい時代に私たちは生きているのでしょうか。

 知的生命体の発見が現実のものとなれば、人類の価値観は大きく転換し、目先のことのみにとらわれる生き方を問い直すことになるでしょう。大げさな言い方ではありますが、「もうひとつの地球」を発見できるかどうかは、人類の生き方を変えるきっかけとなるような気がしています。

 近い将来、いまの時代は「地球外生命発見前夜」と呼ばれるようになるのかもしれません。人類の生き方が決定的に大きく変わる可能性のあるいまだからこそ、本書『地球外生命は存在する!』では、アストロバイオロジーの歴史を振り返り、人類が抱き続けてきた地球外生命発見への期待と、太陽系内の生命探査、太陽系外に存在するであろう第2の地球探しの最新動向について、お伝えしたいと思います。

 さあ、最先端の天文学研究の現場から、宇宙と生命誕生の謎に迫っていきましょう。

*  *  *

※次回「火星人探しに人生を賭けた男(仮)」は6月26日(月)公開予定です

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「人類が21世紀中に、地球以外の星で生命を見つける可能性は50%以上」と著者。というのも、地球外生命が存在する可能性が高い、地球とよく似た環境の系外惑星(太陽ではない恒星を周回する惑星)が、最近になって次々と発見されているからだ。地球外生命は、人類のような生命体なのか、それともはるかに進化した生命体なのか? そもそも生命はどのように誕生するのか。生命誕生の謎から系外惑星探査の最新動向まで、わかりやすくドラマチックに解説。人類究極の謎に迫る一冊。