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2017.06.18

「頑張るぞ!」と自分を鼓舞しても無意味な理由

小池 龍之介

「頑張るぞ!」と自分を鼓舞しても無意味な理由

 前回まで記してまいりましたところの、「脳内おばさん井戸端会議」の話は、突きつめますとまたしても「無我」の諸法へと落ち着いた次第でありまして、「またその話か! 頭では分かっても実践できそうにないなあ」と思っておられるかたも、多いかもしれません、ね。

 けれどもふいっ、と、この事実が瞑想的な身体レベルで「ああ」と腑に落ちてしまえば、これほど単純明快で当然な特効薬はないくらいのものなのです。

 と同時にまた、必ずしも瞑想の境地の話としてのみ限定しなくても、実はすこぶる日常的で、実用的に応用することもできそうですよ。

 今回は自分自身に応用する場合について、次回は他者に応用する場合について、2回に分けて述べてみましょう。

 たとえば皆さんが仕事をしているときに、頭の中で「脳内おばさんたち」のお喋りが始まったとしましょう。「よし、頑張るぞ!」「でも、昨日みたいに、うまく行かなかったら嫌だなあ」「そんなネガティブなこと考えてないで、とにかく頑張ろう」「よし!」「ところでコレとアレ、どちらのタスクから始めようか」「うーん」「ああ、ムダに時間がすぎている」……など、など。

 実は、誰しも、こうしたおばさんたち(いわば脳内でグループ化された神経細胞たちのネットワーク)が、頭の中のこっちで、あるいはあっちで、あるいはそっちで電気信号をやり取りして、ペチャクチャと自動会話をしているにすぎないことを、「私による、私のための、大切な考えだ」と思いこんで執着しています。そのせいで、声の大きなおばさんの声に夢中になるかのごとく、いわば「洗脳」されてしまい、その言いなりになるままに、エネルギーや時間をムダ遣いしているのですよ。

 さきほどの脳内お喋りの例であれば、「よし、頑張るぞ!」などという思考は、ただ単に脳内の膨大な神経細胞たちのうち、ほんの一部にすぎない細胞たちに電気信号が流れて、「頑張るぞ!」とお喋りしているだけにすぎません。それを本気にしてみたところで、ほとんど意味はないのです。だって、そのおばさんが「頑張らなアカンで!」と叫んだところで、他のおばさんたち、すなわち他の神経回路たちまで説得されて全て同じ色に染まるということは、有り得ないでしょう?

 ですから、「頑張るぞ!」などと思っても、実際に精進することには必ずしも直結しないのです。では、最大限に持てる力を引き出して精進するには、どうしたら良いのでしょうか。

 それは、「よし、頑張るぞ!」というおばさんの声について、「あー、脳の中のどこかほんの一部に電気が走って『頑張るぞ!』って、言ってるみたいだね、そっかー、そうなんだー」と、聞き流すことです。「昨日はうまく行かなかった……」と思い出しはじめても、「あーそう、そっちのおばさんは、そう思うんだね、そっかー」とでもいった風情に聞き流すのです。

 そして、「頑張るぞ!」も「うまくいかなかったら嫌だなあ」もどちらも、おばさんたちのどうでもいいお喋りだなあ、とばかりに聞き流し、意識の手元にはどんな声も残らないようにしてやる。

 かくして、おばさんたちが「頑張れ!」と言っていようと「嫌だ」と言っていようと、あるいはまた「どうしよう、迷っちゃう」と言っていようと、その声に対して「いや、違う」と逆らいもせず、「その通りだ」と鵜呑みにもせず、「へー、そうなんだー」と聞き流しておく。そうすれば、おばさんたちが騒いでいる真っ只中で、完璧に静かなのです。

 そして、ただ、なすべきことに取り組みます。Just do it!です。おばさんたちが何を喋っていても、「へー、そうですかー」と聞き流しながら、その真っ只中で、ただただ、今、この瞬間の、なすべきことへと専念するように、してみましょう。

 そうするなら、おばさんたちがたとえ何を騒いでいようと、言葉や概念抜きに(別に「頑張ろう」などと思わずとも)自然に精進努力する気力が心身に充実してくるのが、分かるはずですよ。

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