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シンギュラリティ・ビジネス

2017.06.13 公開 ツイート

なぜすべての技術は儲からなくなるのか? 齋藤和紀

非収益化し、非物質化し、最終段階へ

 ここで非収益化が起こるのは、その技術が生み出した商品そのものではありません。たとえば写真のデジタル化によって、コダック社はフィルムという収益源を失いました。また、かつては「現像」にもお金がかかっていましたが、いまはそのプロセス自体がなくなり、私たちは写真を撮ってすぐにSNSなどにアップし、みんなに見せています。

 この「非収益化」が物やサービスへの対価が消えることを意味するのに対して、5番目のDである「非物質化(Dematerialization)」は物やサービスそのものが消えることを意味しています。たとえばデジタルカメラの普及によってフィルムを使う従来のカメラは消えましたが、それだけではありません。次の瞬間には、そのデジタルカメラも姿を消し、スマートフォンで使うアプリのひとつになってしまいました。

 しかも、アプリ化したそれぞれの機能は、かつての「機械」よりもはるかに安く手に入るようになりました。これが6番目のD、「大衆化(Democratization)」にほかなりません。カメラのように昔は富裕層しか手にできなかった高価な物やサービスが、非収益化と非物質化による当然の結果として、誰にでも手に入るものになる。これが、エクスポネンシャルな技術進化がもたらす連鎖反応の最終段階です。

 科学技術のエクスポネンシャルな進化によって激変する社会を生きていくには、物事が以上のようなステップを経て進んでいくことを知らなければいけません。この「6D」を提唱するディアマンディスは、こんなこともいっています。

「直線的な思考しかできない者にとって、6つのDは6の死に神(Death)にほかな
らない」

 なんとも不吉な言葉ですが、実際、この展開を読むことができずに市場から撤退した
企業や業種がいくつもあるのですから、決して大袈裟(おおげさ)な話ではありません。エクスポネンシャルな進化への理解は、シンギュラリティ直前の時代を生きる私たちにとって、必要不可欠な基礎知識なのです。

 * * *

 次回は6月20日(火)に掲載予定です。
 さらに詳しくは、『シンギュラリティ・ビジネス――AI時代に勝ち残る企業と人の条件』をお読みいただけると幸いです。

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シンギュラリティ・ビジネス

2020年代、AIは人間の知性を超え、2045年には、科学技術の進化の速度が無限大になる「シンギュラリティ」が到来する。そのとき、何が起きるのか? ビジネスのありかた、私たちの働き方はどう変わるのか?

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齋藤和紀

1974年生まれ。早稲田大学人間科学部卒、同大学院ファイナンス研究科修了。シンギュラリティ大学エグゼクティブプログラム修了。2017年シンギュラリティ大学グローバルインパクトチャレンジ・オーガーナイザー。金融庁職員、石油化学メーカーの経理部長を経た後、ベンチャー業界へ。シリコンバレーの投資家・大企業からの資金調達をリードするなど、成長期にあるベンチャーや過渡期にある企業を財務経理のスペシャリストとして支える。エクスポネンシャル・ジャパン共同代表、Spectee社CFO、iROBOTICS社CFO、Exoコンサルタント。

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