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2017.06.03

「私」だけでなく「あなた」や「その人」もいないのです

小池 龍之介

「私」だけでなく「あなた」や「その人」もいないのです

 前回記した「脳内おばさん7000人井戸端会議」とは、脳内にある何千億個という神経細胞たちが、てんで勝手に電気的信号を交わし続け、その瞬間その瞬間に新たな、井戸端会議的お喋りを生み出し続けていることの、イメージ化に他なりません。

 神経細胞たちは、(人知れず!)次々に電気信号をやり取りし、新たな思考を紡ぎ続けていることでしょう。

 何千億個の神経細胞同士が組み合わさって生み出される回路の数はというと、それこそ天文学的な数に及びます。これら、神経細胞同士が連絡を取り合う回路のうちには、より電気信号が強く通うものと、そうでないものとがあると、言われています。

 執着し、繰り返し使われる回路はより強く、速く電気が通って、それに関わる神経細胞たちが発火しやすいパターンが強まってゆく、という具合に考えられることでしょう。

 嫌いな人について「嫌な人だと感じるのは当然だ」と執着するとはつまり、嫌いなその人のことを重要事項だと指定して、関連する情報を、他の情報よりも最優先して察知し、より速く、より強く電気信号を送り感情的に反応するように、神経回路が再調整されるということに、他ならないと申せるでしょう。

 それは言い換えれば、気にしている情報にまつわる神経細胞たちを最優先で電気的に発火させる代償として、他の、見えているはずの季節の風景や、聞こえているはずの鳥のさえずりや風の音や、花の香りや、微妙な身体感覚については、無自覚で不感症的になる、ということを招いているのですよ。このことは、他の神経細胞たちを通っている、より弱い電気信号については認識しなくなる、と説明できます。

 それはまた、脳内の、声の大きなおばさんのお喋りばかりが優先的に聞こえてしまうため、より弱い声のおばさんたちの声は、よく聞こえなくなることだとも、換言できそうですね。本当は、誰もがありとあらゆる幅のことを感じていて、心の中で小さな声がたくさん響いていますのに、そのうちのほんの0.1%にも満たない、たまたまがなり立てているだけの大きな声のことを、「これが私だ」と勘違いしているだけなのです。

 けれども、たとえどれだけ電気が通いやすく、使われやすくなっている神経回路であったとしても、いつも必ず使われるとは限りません。情報の入力が異なったり、状況や、機嫌の良さに違いがあったりすると、また別の回路に電気が流れ、全く別種の思考が勝手に生じるでしょう。

 ですから、同じ人が以前は優しく接してくれ、最近は意地悪に接してきたとしても、決してその人が前は騙していたわけではありません。単にその人の頭の中で、それぞれの時に、違うおばさんの声が強く前景化しているだけのことです。そしてポイントは、「どのおばさんを選ぼう」などと選択しているボスは、その人の頭の中にはいない、ということです。勝手に、電気の流れやすい執着回路同士が覇権を競いながら、より強くなったりより弱くなったりしているだけのこと。

「なーんだ、おばさんたちが勝手に喋ってることで、執着するにも値しないや……」と、執着していた手の力が抜けて、手の平からポロリと落としてしまうかのごとく観察していられれば、その回路(おばさん)の声には興味がなくなり、結果として、その回路は通電しにくくなって使われにくくなるはずです。けれども一般に誰もが、おばさんの声について「これが私だ」「これは私が考えているんだ」と思いこんでいるため、結果として、その時その時にたまたまがなり立てるおばさんたちの言う通りに、ロボットのように動かされているということ。

 いかがでしょう。こうした道理を洞察するなら、「あの人」や「その人」が、あのように振舞ったり、そのような言葉を話したりするのも、「おばさん」同士の反応を支配する因果律に従って否応なく、そのように起こらざるを得ないだけだと、理解できるのではないでしょうか。「その人」や「あの人」のせいでは、(究極的には、ですが!)ないのです。

 そもそも、「その人」とは、どこにいるのでしょう? 気にくわない考えを生じさせている、その人の頭の中の「あのおばさん」のことですか? それとも「そちらのおばさん」のことでしょうか? でも、どの道、別のおばさんへとすぐに移ろってゆくのに? それゆえ、「その人」なるものは、前頭前野の細胞の中にも、海馬の細胞の中にも、扁桃体の中にも、松果体の中にも、縫線核の中にも見出せないのです。それらは、勝手に各々、電気的に連携し合っているだけで、「私が、それらを全て操っている」と偉そうにできる部位(おばさん)は、どこにもないのですから。

 そう、ですから「私」とか「あなた」とか「その人」というのは、実在しないのです。「いない」のですから、自己愛も自己嫌悪も無用になりますし、「あの人」とか「その人」に執着したり憎悪することも無用になり、とっても気楽なものなのですよ。

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