“そして母になる”があってもいいのでは、という思いで書き上げたという『貘の耳たぶ』は、出産直後の母親が、自らの子を「取り替える」場面から始まる衝撃的な物語。全国の書店員さんから続々届いた感想をお送りします。


『貘の耳たぶ』は衝撃的でした。自分自身出産育児を経験しているため、ものすごく身に迫ってきてくるしくなりました。繭子の行動はあり得るような気もして、彼女だけを責められないと感じましたし、繭子がとても痛々しく思えてならず……。繭子の母親の影響も大きいですね。母子関係とは? 家族とは? 血縁とは? さまざまな社会的な問題提起の作品、芦沢央さんの一気に読ませる筆力、圧倒されました。
(吉見書店 吉見佳奈子さん)


『貘の耳たぶ』を読み進めながら、もしもわが家のむっちゃんがどこかの誰かによって取り違えられた子供だとしたら……。ここまで愛情たっぷりに育ててきたのに、愛してやまないのに、本当の子供ではないとしたら……。あの笑顔を見ることが出来なくなったとしたら、あの声を聞くことが出来なくなったとしたら、と想像してみましたが、胸が張り裂けそうになりました。そして、もしも血がつながっていないとしても、この一緒に過ごした4年を思い起こすと、何があっても離れたくない、離したくない、と強い感情がわきました。『貘の耳たぶ』を読んで、愛情とは、何なのだろう? 一緒に過ごした歳月に比例するものなのか、血に宿るものなのか、と漠然と考えましたが、答えは全くわかりませんでした。すごく波紋を呼ぶ作品だと思います。なんだか、モヤモヤとするけど、我が子への確かな愛情を確認することになった作品でした。
(谷島屋書店 野尻真さん)


我が子の幸せを祈らない母親はいません。だからこそ、なぜ言ってしまったのか……。彼女には死ぬまで十字架を抱え、交換せずに子供を育て上げてほしかったです。「ぼく、だいじょうぶじゃないよ」という子供の言葉がどうしても忘れられません……。子供を入れ替えるなんて決して許されることではないけれど、でも、声にならないSOSを発しながら育児を続ける繭子が、実は一番母親らしく感じました
(文教堂浜松町店 千葉裕子さん)


とても読み応えのあると同時に、とても重い、また辛い作品であった。第一章の繭子は、常に後ろめたさを抱え、ことあるごとに後悔するが、そんなに辛い思いをするなら、取り替えなければよかったのにと思ってしまうし、第二章の郁絵の物語も本当に辛い。なによりも二人の子どもたちが不幸である。が、小説の時点ではそこまでの深刻さがないのが救いか……。
辻村深月さんの『朝が来る』に近い印象を持ったが、芦沢さんらしい独特な雰囲気も持ち合わせている。まさに、「渾身」の言葉がふさわしい、魂の小説ではないかと思った。
(啓文社西条店 三島政幸さん)


溢れ出る涙で何度も読む手が止まった。最初から完璧な親はいないのに、なんで自分はちゃんと出来ないのだろうと……。子育てが終わった今だから言える。子育てをしながら自分も子供に育てられてきたのだと。
(ゲオ 星由妃さん)

 

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