“そして母になる”があってもいいのでは、という思いで書き上げたという『貘の耳たぶ』は、出産直後の母親が、自らの子を「取り替える」場面から始まる衝撃的な物語。全国の書店員さんから続々届いた感想をお送りします。


大人は我が子が可愛い。大人でも間違いを起こす。大人だからこそ後戻りができない。どれだけの想いがこのページに溢れているのだろうか。心動かされるのに、彼女たちの無念や苦悩が十二分に伝わるのに、涙が出そうになるが容易に流せない辛さ。芦沢央はこの作品を書いたことによって壮絶であり鮮烈な物語の新たな地へと、また一歩、踏み出したのではないだろうか。
(大盛堂書店 山本亮さん)


面白かった! 取り替えてしまった瞬間からもうずっとずっと苦しかったんだけど、私はこういう「面白さ」を小説に求めているのだ、と思いました。辛く悲しく、わかりやすい正解もない。だから、誤解を恐れずに言うけれど、「面白い」。そして、芦沢さんの、この身を切るような血を吐くような文章は一歩置いて余裕で読む、なんてことを許してくれない。だから面白ーーい!! 小説はこうでなくっちゃ!! これは、芦沢央のベストだと思います。
(三省堂書店営業企画室 新井見枝香さん)


明らかに何かを問われている気がしました。でも答えなんてない。誰にも正解なんてわからない。子どもを授かり、産み、育てるというかけがえのない時間を元に戻すことはできない。そう思った直後に訪れる子どものハッとするしぐさが胸に刺さりました。
(文教堂北野店 若木ひとえさん)


何らかの偶然による過失の「新生児取り替え」ではなく、母親自身が我が子を交換してしまう。その心情はとても共感できなかった(当たり前の話ですが)。我が子と思い育ててきた子が、自分の子ではないと知ったら、とても正気を保てない。そんな設定でありながら、母親二人の視点で描かれるこの物語に引きこまれたのは作者の高い技術ゆえなのかな。タイトルの「貘の耳たぶ」の意味がラストですごく重く感じられました。
(本の王国知多店 莨谷俊幸さん)

読後、疲労感と寂寥感に包まれて、登場人物たちのこれからの幸せを願わずにいられなかった
(平惣本部 八百原勝さん)

 

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