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2017.04.21

なんだか面白いので、まだ続けるよエッセイ46

かつて旅先で出会った彼女たちに、どうしても知られたくない、「あの日の秘密」。<とびきり美味しいカレーのレシピつき>

歌う旅人・香川 裕光

かつて旅先で出会った彼女たちに、どうしても知られたくない、「あの日の秘密」。<とびきり美味しいカレーのレシピつき>

4月です。
新社会人の姿がキラキラしています。
そんなときに思い出した、あの日の「カレー」。
はたしてどんな秘密を抱えているのか!?
あのときの彼女たちは、新しい道で頑張っているのかしらん?

   *  *  *
エッセイ
ゲストハウスのバーモントカレー

 何気なく電車に乗っていると、真新しいリクルートスーツに身を包んだフレッシュな若者がスマホを覗き込みながらつり革に掴まっている。大学を卒業して、就職し、これからバリバリ働くのだろうか。初々しく、希望と不安の狭間に揺られている姿を見ると、何だか微笑ましい。これからいろんな仕事や人間関係に揉まれて、一喜一憂していくのだ。がんばれ、社会人1年生。
 僕も20代前半で一度就職した。そのとき、自分もずいぶん大人になったもんだなぁ、と思っていたのだが、上司からはまるで子どものように扱われていた(今思うと、上司や先輩方からは、ずいぶん可愛がってもらって居心地が良かったけど)。
「20歳なんて子どもみたいなもんだよ」
上司にそう言われるとムッとしたものだが、30歳になって、その意味が少し分かる気もする。
 まあ、40代50代の先輩方からみれば、今の30歳の自分も、子どもみたいなもんなのかもしれないが。
 ちなみに齢100歳のおじいちゃんから見たら、80歳のおじいちゃんはどう映るんだろうか。端から見たら、どっちもおじいちゃんだ。「この若造!」とか思うんだろうか。いずれにせよ、日々成長していきたいものである。

 以前このエッセイにも書いたことがあるが、ライブツアーの際に、出会いを求めて「ゲストハウス」に宿泊することがある。特に、沖縄に行くときは必ず泊まる。単純に宿泊費を浮かせられるのと、沖縄に来てゲストハウスに泊まるなんて人は大抵人当たりが良く、おもしろい人が多いからだ。
 沖縄のゲストハウスは、なかなか居心地が良い。宮古島には、行きつけの宿があり(『旅の途中』という)、これまでに3度ほど、数日間滞在した。
 ゲストハウスというのは、民宿のようなところで、普通の一軒家だったりする。トイレやお風呂等は共同スペース。キッチンが自由に使えたり、洗濯ができたりもする。つまりは、“旅先で、旅人同士が共同生活する”というような宿である。
 個室かドミトリーか選べたりもするが、ドミトリーで1泊2000円~4000円程。大抵、これくらいで泊まれる。ちなみに、『ゲストハウス 旅の途中』は、オーナーが‘’ゆうこ姉‘’という女性オーナーということもあって、キッチン用品がしっかり充実しているので、旅先にもかかわらずゆっくり料理してみんなで食べるなんてこともできて、すごく愉しい。
 夕方、日が傾いて涼しくなってくると、サトウキビ畑の脇道を散歩しながら、買い物に行く。「明日はどこのビーチに行こうかなぁ」なんて考えながら、オレンジ色に染まり、湿った海風を浴びるのだ。たまらなく幸せな時間である。

 かつて「マネージャー替わりにわしもついていく!」と、広島から宮古島までくっついて来た友人がいた。“クリちゃん”というおじさんだ。男二人でゲストハウスに宿泊していた。
「よし! 今夜は絶品のカレーを作ろう!」
 と思い立ち、カレーの材料を買いに近所のスーパー「マックスバリュ」へ行ったことがある。


 店内に入ると、すさまじくエアコンが効いていて寒い。基本的に、僕の地元の店舗と内装は変わらないが、やはり扱っている商品がやや異なっている。“海ぶどう”や“スパム缶”、“マンゴー”や“パイナップル”等、沖縄ならではの食材が豊富にあった。せっかくなので、海ぶどうも、もずくも、全部買っていくことにした。
 珍しかったのは、“來麩(くるまふ)”というお麩があったことだった。僕の地元でも、少し高級のスーパーに行けば売ってたりするようだが、これは沖縄の名産品らしい。様々な種類の“來麩”が格安で売っていた。
 お酒もたくさん買って、「今夜はカレー&來麩パーティーじゃ~!」とクリちゃんもご機嫌だった。
 宿に戻ると、ゆうこ姉が「おかえり~」と迎えてくれた。ちなみに、旅先で「おかえり」と「ただいま」という響きを聞くのって、すごく心地良い。
 買ってきた野菜をザクザク切って、カレー鍋に入れていく。クリちゃん直伝の“ほとんど水なしカレー”の作り方を教えてくれるらしい。作り方は簡単で、まず肉を炒めて、細かく刻んだたっぷりの玉ねぎ、じゃがいも、ニンジンをあらかた炒めたら、野菜が浸からない程度、ジャガイモが多少顔を出す程度の水を入れる。あとは中火でひたすら煮る。そうすることで、野菜の水分が出て「え!? 水、こんなに入れたっけ!?」てくらい、ちゃんとカレーになるのである。
 カレーを煮ている間に、麩チャンプルーも作った。
 來麩はドーナツ状に大き目に切って、だし汁に浸し、絞ったあとに卵をからめて野菜やスパムと一緒に炒める。あんまり塩コショウはせず、ダシ粉末で味付けしたら、最後に「これでもか!」ってくらいカツオ節を振りかけたら、完成。
 出来合いの“ジーマーミー豆腐”と“もずく酢”もお皿に盛り付けて、あとはカレーの完成を待つのみである。

 旅先での料理は楽しい。料理の匂いに包まれて、お酒をチビチビ飲みながら、のんびりと夜を愉しむのだ。
 しかし、沖縄。ただただ、暑い・・・。
 そもそも蒸し暑い場所なのに、火まで使うもんだから、汗が滝のように流れる。ふと隣を見たとき、クリちゃんもしっかりと「おやじ汗」をかいていた。ずいぶん“切なくなっている額”から、ダラダラと汗を流していた。
「くりちゃん…。汗拭いたら…!?」
 そのおやじ汁がカレーの隠し味にでもなったら、たまったもんじゃない。
 しかしクリちゃんは、
「う~ん、うまそうにできてきたのぉ~」
 と、カレー鍋のフタを開けて、のぞき込むばかり…。したたる汗にハラハラだ。
 もう見まい…。十中八九、このあと惨事が起きるが、もう止めようがない。
 見てしまったら食べられなくなるので、僕は見るのをやめた。

 完成したカレーは、水分が少ない分、すごく濃厚でコクがあり、大変美味しかった。
 來麩は、まるでお肉のような触感で食べごたえがあり、ごはんが進む仕上がりだった。
 そうこうしていたら、「ただいまぁ~!」と、他の宿泊客の女の子達も帰ってきた。みんなでカレーや麩チャンプルーを囲んで、カレーパーティーがはじまったのである。
 くりちゃんの汗が入ってるかもしれないカレーは、非常に人気で、何も知らない若い女の子達は、おかわりまでしていた。僕はなんとなく一杯でやめておいた。

 彼女達は東京から来ていた医大生で、今は研修医として医療の現場でがんばっているらしい。今後の日本の未来のためにも、是非とも活躍してほしい。
 彼女たちがこのエッセイを覗いてないことを祈るばかりである。

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