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2017.04.20

優しい味のヴィシソワーズ

矢吹 透

優しい味のヴィシソワーズ

 出口のない恋愛をしていた若い頃、週末のブランチに、表参道のフレンチ・レストランをしばしば訪れました。
 青山通りから根津美術館に抜ける道を少し入ったところの、ビルのペントハウス階にある小さなその店は、大きなガラス張りの窓から、晴れた日には燦々と陽が降り注ぎ、とても気持ちのよい空間でした。
 よく冷えたシャルドネとカヴェルネ・ソーヴィニヨンをそれぞれ、グラスで1杯か2杯。締めは必ず、エスプレッソ・ドッピオ。
 私はよく、ヴィシソワーズとリィ・ド・ヴォーのソテーを頂いていたような記憶がございます。
 焼き立てのパンに発酵バターが美味しかったその店も、今ではもうありません。

 事の経緯はよく覚えておりませんが、ある日、その店で、私は食事の最中に号泣し、お店の方が控え目に、濡れたタオルを持って来て下さって、涙を拭いながら、ヴィシソワーズを啜ったことがございました。

 とても優しい味のヴィシソワーズでした。

 冷蔵庫に賞味の期限の近い生クリームと牛乳があったので、使い道を考えた結果、ヴィシソワーズを作ることにいたしました。

 じゃがいも1個の皮を剥き、5ミリ幅くらいの薄切りにします。皿に、重ならないように並べて、ラップをし、600Wで2分半、電子レンジにかけます。
 電子レンジにかけたじゃがいもを、すぐに水洗いするのが、重要です。澱粉質のぬめりを流してしまわないと、出来上がりがさらっといたしません。
 洗った後のじゃがいもは、ペーパータオルなどで水気を取っておきます。

 フライパンにバターをひとかけら落とし、薄くスライスした玉葱半個を炒めます。本当は飴色になるまで頑張りたいところですが、なかなか大変なので、玉葱が透き通って来ましたら、それでよいことに、私はいたします。

 ミキサーにじゃがいも、玉葱を入れます。生クリームと牛乳の量にはあまりこだわらなくて大丈夫です。使い切りたいのであれば、ミキサーに入るだけ、それぞれありったけを入れます。
 白胡椒と塩を少々加え、ミキサーにかけます。
 じゃがいもと玉葱の形がなくなりましたら、一度、味をみます。少しずつ塩を足しながら、何回かミキサーを回し、ちょうどいい味加減にいたします。
 塩を入れ過ぎてはいけません。少しずつ、塩を足して、味をみて行くと、玉葱や生クリームの甘さと塩っ気のバランスが取れる奇跡の一瞬が訪れます。
 怖ければ、やや味が薄い、と感じるくらいでストップするのが、無難です。食べる時、味が薄すぎれば、塩を振ればいいのです。足しすぎた塩は、引くことができません。

 ヴィシソワーズは、レシピによっては、チキン・ブイヨンなどを加える方法もあるようですが、塩だけで調味した方が、素材の味が生きて、優しい味になるような気がいたします。

 昔は、ヴィシソワーズを作るためには、裏漉しが必要でした。今はミキサーの性能がよいので、特別、裏漉しにかけなくても、スムースなヴィシソワーズが出来上がります。

 とても便利な世の中になりました。気をつけなければならないのは、無駄は省きつつ、心の余裕や遊びの部分は、失ってしまわないように、のりしろを大切に暮らして行くことではないでしょうか。

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