堤防からフェリーを見送るやまやろう

 僕の記憶が確かならば、酒井くんはほぼ初日から「謎の先住民」の格好のまま、午前8時40分に着く始発フェリーのお出迎えと、午後5時に出る最終フェリーのお見送りを始めた。彼がそれをやる定位置は、港をぐるっと遠回りし、さらに長い防波堤を延々と歩いて行った突端。そこで無言のまま、手に持ったオリジナルの盾のようなものを船客に向かって大きく振る。けっこう時間と労力がかかるその日課を、彼はそれから最終日までの1ヶ月半、欠かすことなく続けた。しかもそれは完全に自発的なことで、僕は一言も「やってくれ」とは言ってない。どうやらそれは「ヤーガン族のような格好をしたい」と僕にメールで申し出た時――島に来る前から抱いていた、確固としたイメージのようだった。

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