モチベーション高く働く――。これは本当に理想的な働き方なのでしょうか? そもそもモチベーションとはささいな理由で上下する個人の気分。『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか』は気持ちに左右されない働き方こそ大事であると提案します。

張り切り過ぎる上司の空回り

 新任の管理職などにありがちなのが、張りきり過ぎの“オーバーマネジメント”である。要するに、やり過ぎ、管理のし過ぎである。メンバーの成熟度にもよるが、一定以上の経験のあるメンバーの場合、こうしたやり方は逆効果になる可能性が高い。

 高い理想を持ち、中にはかつての上司を反面教師とし、自分がその立場になったら、という意気込みをもって管理職としての職務にあたる人もいる。あるいは、新任管理者研修で学んだことをそのまま適用しようとする人もいる。

 外資系大手のハイテク企業でのこと、ある時、付き合いのあった担当のマネジャーが配置転換となった。新たに担当になった人は、新任でマネジャーになった人だった。年齢的に比較的遅めのマネジャー昇進のようだった。最初にお会いした時には、たいへんに目を輝かせて、「自分がマネジャーになったからには……」と熱い思いを語って聞かせてくれた。

「部下は今のところ2名与えてもらっています。今後はもっと増えていくと思いますが」とも言った。「与えてもらっています」という、自分の所有物のような言い方が若干気になった。「すごい意気込みだなあ」と感心する一方で、いくらなんでも肩に力が入り過ぎてはいないだろうかとも思われた。

 同席していた部下2名のうち、一方は入社2年目ということだった。もう1名は30歳前後の優秀そうなメンバーだった。若手の方は、上司と同じように目を輝かせて打ち合わせのメモを熱心にとっていた。一方のキャリアの長い方の部下は落ち着いた態度であったが、前向きな印象は特に感じられなかった。当のマネジャーは、その場でテキパキと指示を出し、それらについての大まかなスケジュールや、社内打ち合わせの日時まで、その場で決めていた。

 それから次にお会いした約2ヶ月後、当人は見る影もないくらい元気を失っていた。策定したプランが通らず、新しい方向を模索しつつも、これまでどおりの制度運用や労務管理に多くの時間を費やしているとのことだった。2名いた部下のうち、キャリアの長い方の部下は他の部署へ配置転換になっていた。本人自身が希望を出して異動したようだった。若い方の部下も、前回とは見違えて覇気がなかった。

 それでも、前回同様、そのマネジャーは、打ち合わせの内容に関わる点についてその場でいろいろと指示を出していた。しかし、部下の方はそれをメモするペンの走り具合が、どう見ても前回とは違っていた。手帳を開いて、ひと言、二言メモをとったかと思ったらすぐに手帳を閉じてしまう。どうも上司と部下の意識に乖離が生じているようであった。


上司は自分のことに忙しいくらいでちょうどいい

 その若手の部下の方を見ていると、採用時にやる気満々で、入社後徐々にやる気が低下していく人と同じプロセスを辿っているように思えた。結局は上司のひとり相撲であり、空回りの状態である。空回りする場合、どうしてそのようになってしまうのか。部下など関係者との間に何らかの乖離が生じるからであろう。

 まずは、「なぜ、それを行うのか」、そこが腹に落ちていなければ、先に進みづらい。次に、実行する意味は分かったとしても、「それにあたって何をすべきか、どのように進めるべきか」についての理解という点がある。上司が魅力的なゴールを設定し、こうすればそこへ必ず到達すると確信していたとしても、部下には理解できないことも多い。

 立場も違えば、経験値も違うので、当然といえば当然である。そのゴールが魅力的に思えなかったり、または、こういうプロセスを経て本当にそこへ到達できるのかどうか不安が拭えなかったりということも多い。こうした乖離を一つひとつ埋めていくことができなければ、上司の張りきりが空回りする状況は回避できない。

 顧客企業での管理職ヒアリングなどで、「部下を育成せよと言われているが、プレイングマネジャーであって、自分の業務もあるのでそこまで手が回らない」と言う意見を聞くことは多い。しかし、“オーバーマネジメント”による弊害を考えれば、実際はそれくらいでちょうどいいのではないかと思われなくもない。プレイングがなく、ピープルマネジメントだけだったら、多くの場合、“オーバーマネジメント”、あるいは細かな点を指摘し過ぎる“マイクロマネジメント”になってしまい、部下を萎縮させてしまう可能性は高いであろう。

「人を育てる」といった時間のかかることを中長期的視野でできる管理職はそう多くはない。目に付いた細かな点を指摘することは容易たやすい。それをマネジメントと勘違いしているケースは多い。
 

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ではどうするか? 詳しくは、『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか』をぜひご覧ください。

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モチベーション高く働く――。意欲が常に湧き上がっている、理想とされる働き方だ。モチベーションという言葉が仕事の場面で使われ始めたのは2008年のリーマンショック頃。同時期には職場うつの問題が急浮上している。高い意欲を礼賛する風潮が、働き方を窮屈にしたのだ。そもそもモチベーションとは、ささいな理由で上下する個人の気分。成果を出し続ける人は、自分の気分などには関心を払わず、淡々と仕事をこなす。高いモチベーションを維持する人などいない。気持ちに左右されない安定感ある働き方を提言する。

○パワハラ上司の多くはモチベーションが高い
○モチベーションの高い仕事依存症の人は生産性が低い
○仕事のできる上司が部下のモチベーションを下げる
○やりたくない仕事は、気持ちではなく、淡々と乗り切る……