モチベーション高く働く――。これは本当に理想的な働き方なのでしょうか? そもそもモチベーションとはささいな理由で上下する個人の気分。『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか』は気持ちに左右されない働き方こそ大事であると提案します。

仕事の方法を教えず、モチベーションのせいにする上司

「部下のモチベーションが低い」と言う上司は多い。

 自分の方針の不明確さや指導の拙さはさて置き、原因を部下のモチベーションのせいにしているともいえる。これもやはり成果の挙がらない管理職に多い。成果を挙げる方法が分からない場合に“やる気”に矛先を向けるのだ。

 そもそも、「やる気を出せ!」「モチベーションを上げろ!」と上司から言われたら、あなたはどのような気持ちがするだろうか。何かしら、情けない気持ちになりはしないだろうか。批判されているのは、仕事の中身や仕事の仕方ではない。「やる気」という自己の内面である。まるで子供扱いだ。

 また、そのようなアドバイスをする上司に対して、どのような印象を抱くであろうか。「デキる上司だなあ」との尊敬の念を持ち得るだろうか。決してそんなことはないであろう。「あのような上司には決してなるまい」と反面教師の代表例として記憶に刻まれるに違いない。もちろん会社や人事部がそのように言う場合も、同様の印象を持つであろう。

 中には、自ら「モチベーションが低い」と言う人もいる。どうしたらもっと成果が挙がるのかについて具体的な思考を巡らすことなく、「モチベーションが上がらない」と、すぐにやる気のせいにしてしまう。「本気を出せば俺だって」と、仕事の技術も身に付いていないのに、モチベーションの問題として片付けてしまう場合も同様だ。

「やる気が出ない」というのが口癖のような人もたまにいる。仕事が捗らないのは自分の能力が低いからではなく、単にやる気が出ないだけだと言いたいのだろう。さらには、自分がやる気が出ないのは、会社に問題があるとも言いたいのかもしれない。やる気というのは自分自身の内面のはずなのに、それが高まらないことについては外的要因に責任を求めたがる。やる気すら、自分から切り離して、第三者的に扱ってしまうのだ。

モチベーションを問題にする企業は業績が悪い

「社員のモチベーションが低い」と言う経営者もいる。

「モチベーション低下に課題を感じない企業は業績好調な企業である」との調査結果もあるとおり、モチベーションを問題視する企業は業績が思わしくないケースが多い。責任を社員に押し付けているわけだ。特に、「やる気」という精神論的な部分に業績低迷の原因を求めるのは、思考が働いていない証拠ではないだろうか。

 社員に対して、「若いのだから、もっと危機感を持て、元気を出せ!」と言う経営者も多いが、それは無理な話だ。経営者は常に光が当たっているので、業績が上がれば、経営者の手腕は賞賛され、社内外に認知される。裏方である社員には、そのようなモチベーション装置は働かない。限られた役割の中で、一部の機能を果たしているに過ぎない一社員が、経営者と同等の危機感が持てるわけもない。

 こういう経営者に限って、社員に会社への忠誠心を求めたがる。会社が社員を信頼せずに、どうして社員の忠誠心が得られようか。こういう経営者はたいてい、自社を他社と比較したがる。「従業員意識調査」をやっては「他社と比べてどうか」と聞き、人材のアセスメント(診断)をしては「他社と比べてどうか」と聞く。置かれた外的・内的環境がまったく異なる中で、そのような比較は何の意味もないのだが、とにかく他社に関心を寄せる。他社と比較して自社の組織風土が劣るとなれば、「管理職の組織マネジメントがなっていない」と言い、他社と比較して管理職の意識レベルや能力レベルが低いとなれば、「だから業績が上がらないのだ」と言う。

 結局、社員に責任転嫁したいだけなのだ。そうした結果を根拠として、「従業員意識改革プロジェクト」などを立ち上げてしまうわけだが、そのような発想をしてしまう経営者自身の意識こそが本来問題なのだ。「他社がどうだとか、そんなことに興味はない」と言える経営者は、日本企業では残念ながら多くはない。他社との比較に関心が高いということは、自社の社員を信頼していないことの裏返しである。そういう会社は、何かトラブルなど問題が起こった場合に他人のせいにするような、他責の風土となっていることが多い。相互信頼関係がないのだから当然であろう。
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続きは、『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか』をぜひご覧ください。

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モチベーション高く働く――。意欲が常に湧き上がっている、理想とされる働き方だ。モチベーションという言葉が仕事の場面で使われ始めたのは2008年のリーマンショック頃。同時期には職場うつの問題が急浮上している。高い意欲を礼賛する風潮が、働き方を窮屈にしたのだ。そもそもモチベーションとは、ささいな理由で上下する個人の気分。成果を出し続ける人は、自分の気分などには関心を払わず、淡々と仕事をこなす。高いモチベーションを維持する人などいない。気持ちに左右されない安定感ある働き方を提言する。

○パワハラ上司の多くはモチベーションが高い
○モチベーションの高い仕事依存症の人は生産性が低い
○仕事のできる上司が部下のモチベーションを下げる
○やりたくない仕事は、気持ちではなく、淡々と乗り切る……