モチベーション高く働く――。これは本当に理想的な働き方なのでしょうか? そもそもモチベーションとはささいな理由で上下する個人の気分。『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか』は気持ちに左右されない働き方こそ大事であると提案します。仕事ができる人は、自分の気分などには関心を払っていないのです。

「モチベーション」という言葉はネガティブな会話の中で使われる

 営業成績が上がらない営業マンがいる。原因はいろいろ考えられる。商品をよく理解していないとか、理解していても営業トークが未熟で商品の魅力をうまく伝えられないとか、クロージングが苦手であるとか、あるいは、そもそも顧客ターゲットを間違っている等々。そこで具体的にアドバイスできる上司がいると、結果が出やすくなる。一方、上司が、「やる気だ、やる気を出せ!」ばかり連呼するような人であると、状況は変わらないばかりか、当人は精神的に追い込まれていく。

 これは、鉄棒の逆上がりができない子供に、鉄棒の握り方や腕の曲げ方、足の蹴り上げ方などのアドバイスをせずに、「やる気がないからできないんだ、やる気を出せ!」と言い続けるのと変わらない。

「モチベーション」は、前向きな言葉である。しかし、会社内でその言葉が使われる場合、ネガティブな会話の中であることが多い。社員の笑顔が少ない会社のような、職場に余裕のない会社で多く使われる傾向にある。

 同じ言葉でも、ポジティブな文脈で使われる場合と、ネガティブな文脈で使われる場合とがある。言葉自体は前向きでも、文脈としてはネガティブに使われる言葉は意外と多い。「チャレンジ」や「イノベーション」などもそうだ。チャレンジがどんどんなされている組織や、イノベーションが次々に起こっている組織では、それらの言葉を使った会話はなされない。そうではなく、チャレンジングな行動が見られない場合など、特に、以前と比べてそうした行動が少なくなってきている組織において、「最近の若者は失敗を怖れてチャレンジしない」とか、「言われたことはやっても、それ以上のチャレンジはしない」など、盛んに用いられるようになる。

 モチベーションも同様に、皆のモチベーションが高い状況においては、あえて会話の中に出てくることはない。モチベーションに問題を感じる状況において、盛んに登場することになるのだ。

 なぜ、状況が悪くなると、モチベーションという言葉が浮かぶのか。それは、悪い状況に対して深く考えを掘り下げることなく、簡単に解答を導き出そうとすると、「やる気だ、モチベーションだ」となるからだ。「やる気がないからうまくいっていないのだ」と。

結局、モチベーションという言葉は、“思考停止のキーワード”ともいえる。便利な言葉なので、安易にその言葉に飛びつきがちなのだ。

 一方、状況が良い時は、モチベーションという概念そのものが消失しているといってもよい。いわゆる“フロー”といわれる状態や、そこまでいかなくともプロセスへの集中度が高い時には、モチベーションという考え自体、不必要なものとなる。

“フロー”とは、心理学者のチクセントミハイによって提唱された概念で、「対象に集中し、その活動に没頭し、楽しさを感じ、時間の感覚が消え去り、そのすべてを自分でコントロールしているという感覚のある心理的状態」をいう。そのような状況においてはもはや、モチベーションなど問題にはならない。ストレスをまったく感じない状況において「ストレス」という概念が消失しているのと同様だ。

 そう考えると、モチベーション向上ということを至上命題として、モチベーションを高めることに腐心するよりも、モチベーションという概念を消し去ることこそが、モチベーションマネジメントのゴールともいえるのではないだろうか。 
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続きは、
『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか』をぜひご覧ください。

 

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モチベーション高く働く――。意欲が常に湧き上がっている、理想とされる働き方だ。モチベーションという言葉が仕事の場面で使われ始めたのは2008年のリーマンショック頃。同時期には職場うつの問題が急浮上している。高い意欲を礼賛する風潮が、働き方を窮屈にしたのだ。そもそもモチベーションとは、ささいな理由で上下する個人の気分。成果を出し続ける人は、自分の気分などには関心を払わず、淡々と仕事をこなす。高いモチベーションを維持する人などいない。気持ちに左右されない安定感ある働き方を提言する。

○パワハラ上司の多くはモチベーションが高い
○モチベーションの高い仕事依存症の人は生産性が低い
○仕事のできる上司が部下のモチベーションを下げる
○やりたくない仕事は、気持ちではなく、淡々と乗り切る……