いよいよプロ野球が開幕しました! 今年はどのチームが優勝するのか、応援しているチームの動向に一喜一憂している方も多いのではないでしょうか。
華やかな舞台で、鮮やかなプレーを見せるプロ野球選手たち。しかし、一軍で活躍するヒーローたちの陰には、たくさんの「二軍選手」の存在があります。

プロ野球通でもなかなか知り得ない、そんな「二軍のリアル」を、現役監督である田口壮さんが解説してくださっているのが『プロ野球・二軍の謎』です。元メジャーリーガーだからこそ書ける日米ファームチームの違いや、二軍の試合の楽しみ方、監督としての苦労話など、プロ野球ファンなら読んでおきたい一冊です。
本書の発売を記念して、内容の一部を抜粋しお届けいたします。

 

 

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■ 二軍の試合の特徴

 二軍はあくまでも一軍のために存在しています。とにかく勝利あるのみという一軍に対し、勝利と同時に育成が求められるのも、二軍の特徴です。

 また、二軍の試合では「試してみること」が多く見られます。一軍の試合では試せないことをあえてやってみたり、様子を見る場としても使われます。

 二軍の試合を観戦中に、ボコボコに打たれている先発投手をなかなか代えないというシーンがあったとすれば、「この投手に最低3イニングは投げさせるように」なんていう一軍からの指令が出ているかもしれません。

 二軍戦は、ケガから復帰途中の一軍選手が、調整をするための場にもなります。いざ一軍の試合ともなれば、中途半端なプレーはできません。長いシーズンで、どこにもケガを抱えていない選手など皆無と言っていいでしょう。ですから、「何があっても動ける」というところまでは回復しておらず、もう少し調整が必要な選手はしばらく二軍にいて、「今日は2打席だけ立っておくか?」「まだ足が不安だから塁に出たら交代するか?」など、監督・コーチと相談しながらプレーすることがあります。

 少し無謀なくらいガツガツした部分を見せられるのも、二軍の試合の特徴です。粗削りで、不恰好ですが、熱がこもっています。

 一軍に上がれば、緻密な作戦に組み込まれます。ときとしてがちがちに緊張することもあるでしょうが、しかし失敗は許されません。そんな場で、一軍慣れしていない選手は、失敗を恐れて小さくまとまりがちなのです。だからこそ二軍の場では、出せるものを思い切り出して、失敗を重ねていけばいいのだと僕は思っています。中途半端にその場を上手に切り抜ける要領の良さを磨くのではなく、力いっぱいぶつかっていって玉砕するような体当たりのプレーをしてほしいのです。

 二軍の試合では随所に、「なんじゃそりゃー!?」と思うようなシーンを見るかもしれません。しかしそれが、うっかりミスや集中力のなさから来る怠慢プレーではなく、明らかに全力で振った末の三振や、全力で追った末のエラーであったなら、どうかそのプレーにも拍手や声援を送っていただければと思います。選手はその応援によって救われ、そして成長していくのです

  

■ 2017年シーズンはここに注目!

 2016年のドラフトにおいて、オリックスには14名もの新人選手が入団しました。うち、育成選手が5名です。これが何を意味するかは、もうファンのみなさんもお気づきのことと思います。「将来の戦力をじっくり育てる」という意味もありますが、僕にとっては「焦る二軍の選手たち」こそが、育成選手が増えたことによる相乗効果であり、意義であると考えています。

 二軍の試合に、ベンチ入りの人数制限はありません。けれどあんなに身体の大きな人たちが全員入ってしまったら、物理的に苦しいのです。息ができないのです。つぶされてしまいます。

 ……それはまあ、冗談ですが、ベンチに入れる人数は制限するつもりです。なぜか? 競争をさせるため、戦えるぎりぎりでやっていくつもりなのです。ですから、ここが勝負どころ。二軍の選手は「支配下選手」で、育成は支配下ではありません。しかし、二軍の試合に出られるのはどちらも一緒ですから、僕は支配下であれ、育成であれ、使いたい選手を積極的にベンチに入れるでしょう。つまり、今後は二軍ベンチ入りすらできなくなる支配下選手が出てくるかもしれない、ということです。

 とりあえず支配下だからベンチには入れる、という時代の終焉です。二軍の選手は2017年から、下剋上の恐怖にさらされるのです。二軍と一軍のレギュラークラスでは、実力差はかなり大きなものですが、二軍と育成の実力差は、そこまでの開きはありません。食うか食われるかのこのベンチ入り争い、フルーツバスケット的な椅子取りゲームを、ぜひお見逃しのないようお願いします。

 

次回の試し読みは、「プロ野球界の変遷」について。4月21日(金)の更新予定です。お楽しみに。 

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■田口壮さんの本

プロ野球・二軍の謎

這い上がるか、クビか。
奮闘する二軍のリアルを現役監督が解説!
一軍を支え、一軍を目指すプロ野球の二軍。各チームに所属する約70名の「支配下登録選手」のうち、一軍登録された28名を除く最大42名の彼ら二軍選手は、どんな日々を送っているのか? 一軍の状況次第で急遽昇格することもあれば、二軍戦への出場機会ですら一軍選手に奪われることも。調整中のベテランと新人選手が入り交じり、「プロの厳しさ」を肉体的・精神的に学ぶ「二軍のリアル」を元メジャーリーガーの現役監督が解説。さらには、日米ファームチームの違いや二軍の試合の楽しみ方、監督ならではの苦労や裏話も満載。


第一章 プロ野球の二軍は何をしているのか?
▶一軍と二軍の違い/二軍と育成の違い/二軍にはどんな選手がいるか/プロ選手の練習、その一例…
第二章 日本の二軍とアメリカのマイナー
▶ピラミッド型のマイナー、一軍の調整場である二軍/文字通り「ハングリー」なマイナー/身分が保証される日本と明日をも知れないマイナー…
第三章 二軍の試合が100倍面白くなる!? 観戦ガイド
▶ウエスタン・リーグ、各チームの特徴/二軍のオーダーの組み方/二軍の試合の特徴/ファンとの距離が近い二軍…
第四章 新人監督のマンスリー・ダイアリー
▶いまが這い上がるチャンス 「負け癖」が最大の敵/野球の基本が「勝負の鉄則」とは限らず/エネルギーは内に秘めるな 表に出せ…
第五章 二軍監督という仕事
▶時代によって変わるのはプロ野球界も同じ/「新人類」と「ゆとりど真ん中」世代のギャップ/選手を納得させるのも監督の仕事/監督には「瞬発力」が必要…