いよいよプロ野球が開幕しました! 今年はどのチームが優勝するのか、応援しているチームの動向に一喜一憂している方も多いのではないでしょうか。
華やかな舞台で、鮮やかなプレーを見せるプロ野球選手たち。しかし、一軍で活躍するヒーローたちの陰には、たくさんの「二軍選手」の存在があります。

プロ野球通でもなかなか知り得ない、そんな「二軍のリアル」を、現役監督である田口壮さんが解説してくださっているのが『プロ野球・二軍の謎』です。元メジャーリーガーだからこそ書ける日米ファームチームの違いや、二軍の試合の楽しみ方、監督としての苦労話など、プロ野球ファンなら読んでおきたい一冊です。
本書の発売を記念して、内容の一部を抜粋しお届けいたします。

 

 

 

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■ ピラミッド型のマイナー、一軍の調整場である二軍

 日米プロ野球チームのシステムとして、もっとも違っていることのひとつに、下部組織の数があります。近年は日本でも、三軍を置いて選手を育成したり、広島のように直属のベースボールアカデミー(ドミニカにある「カープアカデミー」のこと。外国人選手の発掘や育成を目的として1990年に誕生)を設立するチームが出てきましたが、アメリカは三軍どころの話ではありません。メジャーが一軍だとすれば、二軍にあたる「3A」、三軍にあたる「2A」、さらにその下に「アドバンスドA」「クラスA」「ショートシーズンA」(この3つを合わせて「1A」)、「ルーキー・アドバンスド」「ルーキーリーグ」(この2つを合わせて「ルーキーリーグ」)と7つもの下部クラスが存在するのです。

 

 

 一応、マイナーが7つのクラスに分けられているとはいえ、メジャーから見れば、やや年齢層が高い3Aも含め、いずれも似たような下積み生活です。たとえプロと名がついても、ハンバーガー程度の食事しかできない過酷な環境から、たとえば2Aなどは「ハンバーガー・リーグ」と揶揄されることもあります。

 マイナーの選手たちの多くは、野球をすることで得られる賃金だけではとうてい食べていけず、アルバイトをしたり、なんらかのスポンサーを見つけて援助をもらい、メジャーリーガーになる日を夢見てプレーしているのです。中には奥さんや彼女が働くことで、食べさせてもらっている選手もいます。

 現在の日本のプロ野球には「育成枠」があり、将来的に戦力として契約できる可能性のある選手を各球団が持っています。それゆえ、日本でも三軍を置くチームが出てきました。しかし、現在日本に存在する二軍、三軍の環境は、アメリカのマイナーチームより恵まれていると言えます。その環境の違いについてはおいおい触れていきましょう。

 ともあれ、日本のプロ野球における二軍は、選手を育てる場所であると同時に、一軍が勝つための人材を派遣する場所、もしくは一軍選手の調整のための場所といった役割があります。日本の二軍は、すべては一軍の勝利のために存在しているのです。

 アメリカにおけるマイナーリーグの存在意義もまた、メジャーの勝利のためという部分は同様ですが、特にすぐ下の3Aには、「育てる」という意識とともに、即戦力がしのぎを削って「一軍昇格を待つ場所」という印象があります。ですから、シーズン中であろうがなんであろうが、「うちのチームにとって無用」となった瞬間にクビを切られます。日本の二軍の選手は、よほどの不祥事でも起こさない限り、シーズン中にいなくなることなどありません。

 ですから、マイナーの選手は突然のクビに備えて、普段から「次の仕事」の準備に余念がありません。彼らには常に、ある日突然野球ができなくなるかもしれない、という覚悟があります。球団側にとってマイナー選手は「ダメならいらない」「クビにしてもまだまだほかがいる」という使い捨て感覚の相手、と言い切ってしまうのは辛辣すぎるでしょうか? いやしかし、それくらいアメリカのスポーツビジネスは情け無用だということです。普段どれだけ仲が良くても、契約に関しては、情を一切絡ませない、という印象があります。

 マイナーリーグにはたとえば3カ月など、短いシーズンを戦うリーグもあって、給料も週給5000円ほど、というシステムさえあります。だからこそ、とにかく1年は「プロ野球選手」を名乗ることを許され、支配下選手なら最低でも年俸440万円(育成選手は240万円)が保障され、じっくり育ててもらえる日本の二軍選手は恵まれている、と思わずにはいられないのです。

 

次回の試し読みは、「日米プロ野球・キャンプに見る違い」について。4月14日(金)の更新予定です。お楽しみに。 

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■田口壮さんの本

プロ野球・二軍の謎

這い上がるか、クビか。
奮闘する二軍のリアルを現役監督が解説!
一軍を支え、一軍を目指すプロ野球の二軍。各チームに所属する約70名の「支配下登録選手」のうち、一軍登録された28名を除く最大42名の彼ら二軍選手は、どんな日々を送っているのか? 一軍の状況次第で急遽昇格することもあれば、二軍戦への出場機会ですら一軍選手に奪われることも。調整中のベテランと新人選手が入り交じり、「プロの厳しさ」を肉体的・精神的に学ぶ「二軍のリアル」を元メジャーリーガーの現役監督が解説。さらには、日米ファームチームの違いや二軍の試合の楽しみ方、監督ならではの苦労や裏話も満載。


第一章 プロ野球の二軍は何をしているのか?
▶一軍と二軍の違い/二軍と育成の違い/二軍にはどんな選手がいるか/プロ選手の練習、その一例…
第二章 日本の二軍とアメリカのマイナー
▶ピラミッド型のマイナー、一軍の調整場である二軍/文字通り「ハングリー」なマイナー/身分が保証される日本と明日をも知れないマイナー…
第三章 二軍の試合が100倍面白くなる!? 観戦ガイド
▶ウエスタン・リーグ、各チームの特徴/二軍のオーダーの組み方/二軍の試合の特徴/ファンとの距離が近い二軍…
第四章 新人監督のマンスリー・ダイアリー
▶いまが這い上がるチャンス 「負け癖」が最大の敵/野球の基本が「勝負の鉄則」とは限らず/エネルギーは内に秘めるな 表に出せ…
第五章 二軍監督という仕事
▶時代によって変わるのはプロ野球界も同じ/「新人類」と「ゆとりど真ん中」世代のギャップ/選手を納得させるのも監督の仕事/監督には「瞬発力」が必要…