飛騨の高山では、乾燥させた朴の葉を七輪の炭火の上にのせ、味噌とざく切りした葱をのせて焼く「朴葉焼き」が名物だ。こうして焼いた葱味噌で酒を飲み、シメに残った葱味噌をめしの上にのせて食べる。山里の風情があり、観光名物となっているが、高い山々に囲まれ気温が零下となる冬は、食事のときに漬物や天ぷらなど何でもこの朴葉の上にのせてあたためて食べる習慣がある。朴葉の香りがなんともいい。  
 高山では毎年春と秋の二回、江戸時代から続く高山祭りが行われている。その昔は、この祭りの日に地主が小作人たちを家へ招いて徳利の酒と楪子と呼ばれる中皿に赤飯、ひめたけやぜんまいの煮付、天ぷらやかまぼこなど、飛騨地方ならではの料理を盛り合わせたご馳走でもてなしていたらしい。  
 あるとき高山で本式の楪子を食べて以来、我が家では、色々なおかずを一人前ずつの中皿に盛りつけたのを、「ちゃつ」と呼ぶようになった。お客が来たときなど、大皿にどんと出して、どうぞどうぞとすすめるのもよいけれど、こういう一人皿はお互いに気遣いしなくていいし、お酒もこの方がのんびり飲めるような気がする。  
 春は、まぐろや蛸の刺身、かまぼこ、うずらの卵、里芋や蓮根、牛蒡の煮しめ、菜の花、昆布じめ、うどなどを盛る。夏なら、ポテトサラダ、きゅうり、ピーマン、アルファルファ、アスパラガス、トマト、ソーセージ、ハム、竹輪、チーズなどを盛り、マスタードとマヨネーズを合わせたのを傍らにのせる。季節のものを集めて、色どりや盛りつけ方を工夫するのが楽しいのだ。

 

 

この記事をシェア
この連載のすべての記事を見る

★がついた記事は無料会員限定

関連書籍

牧野伊三夫『かぼちゃを塩で煮る』
→試し読み・電子書籍はこちら
→書籍の購入はこちら(Amazon)