各紙の社説には、その新聞の主張が最も明確に表れます。しかし、毎日読むのはなかなかハードルが高いのも事実。人気時事芸人、プチ鹿島さんは、『芸人式新聞の読み方』のなかで、「大御所の師匠から言葉」として読むことを提案。さらにはその言葉遣いにも注目してみました。

『毎日』『読売』『朝日』がよく使う言葉を調べてみた

 新聞にはこれからも頑張ってほしいと心から思う。新聞を読む人が少なくなっているなんて話を聞くとなんだか寂しい。

 たしかに一般紙はとっつきにくいところがあるかもしれない。その象徴が「社説」だ。

「社説」は新聞社を代表して毎日何かを主張し、世の中を諭している。新聞記事の中でもいちばんエライ存在だ。

 まず常に上から目線。お説教のテーマは問わない。そこまで興味がないであろう地球の裏側のことでも「いかがなものか」。そして「こうするべき」と決まって言い出す。最後は「~したい」と締めくくる。世の中の森羅万象に意見しているけど問題解決にはならない。何か言っているようで何も言ってない。なんかおかしい。

 おまけに社説は普通に読むと難しい。じゃあどうするか。擬人化すればいいのである。私がよく提案しているのは社説を「大御所の師匠」だと思って読んでみることだ。

「ああ、また師匠が何か御大層なことを言ってるぞ」と思えば俄然楽しめるのである。

 また、新聞によって言葉遣いや、頻繁に出てくる語彙にも明らかに違いがある。『毎日』『読売』『朝日』の2015年分の社説をすべて調べてみたので、具体的に見ていこう。

 3社の社説の締めくくりで、多く使われた言葉を順位づけすると、

 

『毎日新聞』

 1位「~すべきだ(すべきである)」

 2位「~したい」

 3位「~ほしい」

 

『読売新聞』

 1位「~すべきだ(すべきである)」

 2位「~したい」

 3位「~ならない(なるまい)」

 

『朝日新聞』

 1位「~すべきだ(すべきである)」

 2位「~したい」

 3位「~ほしい」

 

 やはりと言うべきか、3紙とも「すべきだ」「したい」という提案系で社説を締めることが多かった。

 では、文中で多く使われる言葉遣いまで広げてみよう。

 

『毎日新聞』

 1位「~すべきだ(すべきである)」

 2位「~ほしい」

 3位「~したい」

 4位「~ならない(なるまい)」

 

『読売新聞』

 1位「~すべきだ(すべきである)」

 2位「~したい」

 3位「~ならない(なるまい)」

 4位「必要がある」

 

『朝日新聞』

 1位「~すべきだ」

 2位「~したい」

 3位「~ほしい」

 4位「~ならない(なるまい)」

 

 こうしてみると、『読売』は文中に「必要がある」が他紙より使われていることがわかる。

 

〝グラウンド外でも選手教育の在り方を再構築する必要がある。〟(11月11日)

 

 これは《野球賭博処分 信頼回復に全力を尽くしたい》という社説だ。たしかに『読売』にとって反省の「必要がある」年だった。

 これ以外の「必要がある」はどんなものか。抽出してみよう。

 

〝日本は米国とフィリピンなどと連携し、中国に自制を促していく必要がある。〟(「南シナ海情勢 人工島を合法と強弁する中国」6月2日)

〝日本は米国などと連携し、注視する必要がある。〟(「BRICs会議 中露の国際秩序挑戦が露骨だ」7月11日)

〝日本は米国と協調し、中国に自制を粘り強く促す必要がある。〟(「日中韓首脳会談 東アジア安定へ対話を重ねよ」11月2日)

〝周辺国は、中国軍の改革が習氏の計算通りに進むのか、注視する必要がある。〟(「中国軍機構改革 対米挑戦姿勢は緊張を高める」12月16日)

 

「必要がある」という言葉を抽出してみると、『読売』は中国にとても敏感なことがわかる。中国に対してはとにかく米国と「連携」して「注視」し、「自制を促す」ことが「必要である」のだ。

 さらに対中国に関しては、『読売』のオリジナルと言っていいフレーズを発見した。

「~は、中国ではないか」という言葉である。並べてみよう。

 

〝しかし、尖閣諸島周辺の日本領海や、南シナ海のフィリピン、ベトナムなどとの係争海域で、力による戦後秩序の変更を図ろうとしているのは、中国ではないか。〟(「戦後70年 未来志向で歴史と平和語ろう」1月3日)

〝「戦勝国」として世界秩序を守ると強調したいのだろうが、インドやベトナムとの武力衝突を繰り返し、戦後秩序に挑戦してきたのは、中国ではないか。〟(「中国全人代開幕 安定成長へ軟着陸できるか」3月6日)

〝先の大戦への反省を踏まえ、世界の平和と繁栄に貢献してきた戦後日本は、大多数の国に評価、信頼されている。「良識」が疑われているのは、むしろ中国ではないか。〟(「中国全人代閉幕 習政権の独善体質が目立った」3月16日)

〝中国の王毅外相が「米に軽率な行動を慎むよう促す」と反発したのは筋違いだ。「軽率な行動」を控えるべきは中国ではないか。〟(「米艦南シナ海に 中国の軍事拠点化を許さない」10月29日)

 

 見事なほどの『読売』の必殺フレーズではないか! 対中国専用の「いろいろ言ってるけど悪いのはお前じゃないか!」という、『読売』の激しいつぶやき。エアツッコミとでも言おうか。擬人化するならもちろんナベツネを想像してほしい。

 他紙では見られない『読売』独特の語彙はまだある。「看過できない」という言葉だ。

 

〝新銀行東京が行き詰まった原因について、石原氏らが、設立時の経営陣にあるとの説明を繰り返してきたのは看過できない。〟(「新銀行東京 経営統合でも残る独断のツケ」6月14日)

〝国民に誤った期待を抱かせたことも看過できない。〟(「ギリシャ危機 国民投票は悲劇の幕開けか」7月7日)

 

 では、こちらも紹介しておこう。

 

〝国民の人権擁護に努める弁護士が一方的に弾圧される事態は看過できない。〟(「中国弁護士拘束 習政権の強権統治を憂慮する」7月15日)

〝中国が南シナ海情勢を緊張させていることは、看過できない。〟(「南シナ海情勢」8月3日)

 

 やっぱり『読売新聞』は中国を看過できないのであった。 

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では、『毎日新聞』『朝日新聞』の独特の言葉遣いはどうか? 続きは、『芸人式新聞の読み方』でどうぞお楽しみください。

 

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