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2017.03.10

第5回

アメリカの弁当箱

牧野 伊三夫

アメリカの弁当箱

                  
 台所では、何本かある包丁のなかで一〇〇円で買った包丁が主役になっている。もともと上等なものを買うまでの間に合わせのつもりであったが、思いのほかよく切れるので、使っているうちにだんだんと愛着が湧いてきた。一日使うと夕方には切れなくなるので、毎日、砥石で砥がねばならない。台所へ行くと、なんとなくこの包丁が砥がれるのを待っているような気がする。
 日々の調理は、だいたいこれで間に合っていたのだが、少し前にチーズ切り専用の包丁を購入した。コの字型の枠にバネを伸ばしたような針金を一本ぴんとはってあるだけのものだから、包丁とは呼べないかもしれない。長い棒状のプロセスチーズを切るとき、刃にぺたっとチーズが吸いつくようになって、やたらと力を入れなければならなかったが、この包丁を使うとずっと楽になった。    
 我が家ではしばしば、プロセスチーズを使った手軽な前菜で酒を飲みはじめる。そのひとつが「アメリカの弁当箱」と呼ぶものである。ただ皿にプロセスチーズとハムとりんごとパンを切って皿に並べただけだが、四つの組み合わせは実にすぐれている思う。もうずいぶん昔、学生時代にアメリカから帰国した友人に、向こうの学校では弁当にこの四つをハンカチで包んで持っていくのだと聞き、スケッチの折などに真似て持っていった。なかなかおいしいので酒の肴にもして、いつしか「アメリカの弁当箱」と呼ぶようになった。皿からつまんで一口ずつ順番にかじっていくと、口のなかで混ざり合い、絶妙なハーモニーが生まれる。

 

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