お腹が空いているときに、カレーを煮込むにおいを嗅いでしまうと、もうどこかでカレーライスを食べないとおさまらなくなる。いくつになろうと、あれだけは腹一杯になるまでかき込みたいと思う。
 夕食がカレーライスというとき、早く食べたいと思う一方で食べると酒が飲めなくなってしまうという矛盾。二つの欲望によって自分が引き裂かれるような状況に陥ることになる。先に何かで飲んでおいて、シメにカレーライスを食べるという手もあるぞと何度か試みたが、どちらも中途半端になってつまらないのだ。カレーライスは、まっ白な空腹のところに入ってきてもらいたい。こうした状況はトンカツのときにも起きるが、トンカツの場合は最初に肴にして酒を飲み、あとでごはんのおかずにすればいい。しかしカレーはそうはいかない。そこで、僕はカレーライスを食べながら酒を飲む方法を考えた。カレーを作るときは市販のカレーのルーに玉ねぎとかなり多めの豚肉だけを具にしてレシピよりも水を多めに入れ、その分、塩を足して煮込む。
 豚肉がやたらと目立つ、しゃびしゃびのスープのようなカレーが出来たら、深皿に盛っためしにかけ、豚肉を肴に酒を飲む。ブロッコリーやピーマン、ほうれん草などの野菜のトッピングをのせて一緒につまんでもいい。この肴はレモン酎ハイやホッピーなどと実によく合う。飲んでいるうちに具が無くなったらまた足すのである。仕上げに沢庵漬をのせ、茶漬けのようなさらさらした具の無いカレーライスを食べる。まさにカレーライスで飲む、だ。そばのアタマを肴に飲むことをヒントに考えてみたのだが、正直、何もここまでしなくてもよいではないか、とも思っている。

 

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