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2017.02.15

第56回 セブde正月<後編>

いとうあさこ

第56回 セブde正月<後編>

 もう節分もバレンタインも終わったこの時期に、まだ正月話とはなんたるや。とうとうラストなのでご勘弁。

 そんなこんなで到着したカオハガン島。いや、こっちも悪いですよ。下調べゼロで向かったんですから。でもこの辺りの海の綺麗さは有名でアイランドホッピングと称して、たくさん浮かぶ島から島へダイビングしたりのんびりしたりしながら回るツアーもある位。そんな素敵な島々の中からお勧めされたカオハガン島ですから。そりゃ超リゾートアイランドだと思って行きましたよ、こっちは。それが近づいてくる島の風景はリゾートとは程遠い、普通に島民がいて普通に生活をしている島なんですから。

 そうなってくるとですよ。この島が本当にカオハガン島なのかも疑わしい。しかもツアー客は私と大久保さんの2人だけなので確認もできない。

 おびえながら島に上陸すると走り回っていた子供たちが一斉にこっちを見る。“イチ、ニ、サンゴ礁”でおなじみサンゴ礁君はさっきまで笑って喋っていたのに、無表情で住居の間の狭い道をすり抜け私たちを奥へいざなう。広場のようなところでは若い男たちが集まって大音量で音楽かけながら何かしている。よく見ると豚を3頭さばき中。男たちもチラッとこっちを見る。ああ、さよなら、日本。きっともう戻ることはないのね。

 しばらくすると急にサンゴ礁君が遠くを指さして「オモヤ」と。オモヤ? あ、母屋?確かにちょっと大きめの“母屋っぽい”平屋が見えてきた。近づくと綺麗な日本人女性が「ようこそカオハガン島へ!」あ、本当にカオハガン島だった。ホッ。そしてもしやサンゴ礁君の奥様のヨーコさん?「はい」ホントにビューティフル。「でも本当はユウコなんです。こっちの人は“ユ”が発音できなくて。主人にもずっとヨーコと呼ばれています」

 ユウコさんによるとここは約25年前に日本人の崎山さんという方が買った島で。島を買うとだいたいは元々住んでいる人たちを追い出してリゾート開発するけれど、崎山さんは住んでいた人たちをそのままにオモヤや各所に宿泊できるお部屋を作って観光客を受け入れているとのこと。

 まずは島の探索から。さっきは恐怖で直視できなかった風景も、安心したら全然違って見えてきます。すれ違う島の方にも「こんにちは!」なんてまさかの日本語で挨拶しちゃったりして。

 小さな作業場があってお土産にもなる木製のお箸やお皿を作っていたり、カラフルな布を縫い合わせたカオハガンキルトが売られていたり。「Honesty is Best Policy」の校訓を掲げた小学校もあるし、図書館みたいなところには島の子供が集まっている。お菓子などを売っている小さな商店もいくつかあって。そして先ほどの広場へ。どうやら今日は島一番のお金持ちの娘さんの結婚式で。そのパーティの準備で豚をしめていたんだそう。

「血も含め一切捨てるトコないんですよ」とお姉さん。「心臓はさばいた人だけが食べられるんですよ」正直この手の話は苦手な方なのですが、何故だかまったくイヤな感じがしない。なんだかすごく自然で。「生きている」感じがする。

 結婚式は午後から島の教会で。教会を見に行くと大きな檻に屋根と小さな十字架が乗っている感じ。檻というか柵というか。とにかく壁がない。その分、島に吹き込む優しい風が通り抜ける感じがもう“気のよさ”しかない。

 あっという間に島一周。昼食までまだ時間があったので、一番の目的である「ビキニ写真撮影」を遂行。羽織っていたジャージを脱ぎ捨て、セクシービキニで海へGO!“降り注ぐ太陽”“エメラルドグリーンの海”……じゃない。“見渡す限りの曇天”“果てしなく続く遠浅”だ。しかもただの遠浅じゃない。水深1センチの海(?)が1km近く続くという本気の遠浅。曇天の超引き潮ってどれだけ運がないのよ。しかも1センチ水があることでビーサンがくっついてしまい歩けない。1歩進んでは後ろ足を引っこ抜いて前へ。また逆の後ろ足を引っこ抜いてもう1歩。その様子はまさにシンゴジラの第二形態。10歩くらい頑張った時かな。どちらからともなく「戻ろうか」シンババア、あっという間に、陸地戻る。途中ウニを踏んで足の裏に3つ穴あけながら。そしてその疲れた状態で写真をパチリ。もう写真からは哀しみしか感じられない。

 そうこうしている間にランチタイム。島主のサキヤマさんもいらして、ユーコさんたちとフィリピンランチ。こちらは基本米食で、おかずに肉と野菜の炒め物やイカ焼きなど。味つけは少し濃い目だけどどこか日本に似ていてすごく美味しい。フィリピンビールもいただきながら1時間くらいかな。島のお話をいろいろ伺いました。

 昔は自給自足でお金の文化はなく。とにかく海の幸が豊富だし、お肉は豚を育て。足りていない野菜は近くの野菜作りに適した島で魚と物々交換したりして補っていた。小学校も以前はなかった、と。でもその頃の子供たちは“勉強で得る知識”はなかったけど、“生きる為に必要なこと”はすべて15歳までに教わったんだそう。それと結婚式以外にもう一つ盛大に祝う事があるそうで。それは、1歳の誕生日。何故ならそれだけ“1歳まで生きる”ことが大変でありスゴイ事なのだと。

 全てが衝撃でした。こんなにも“生きる”ということに向き合い、そしてちゃんと“生きている”。

 船で沖に出てちょっと泳いだり、結婚式関係ないのに参列したりしているうちにセブ島に戻る時間が。帰り際、日本の高校の先生が下見に来ていました。修学旅行でカオハガン島が候補になっているそう。「絶対いいと思います」と太鼓判押してきました。若いうちにこの島に来たらどんな思いが生まれるんだろう。

 思っていた旅とは全然違ったけれど、他では体験できないことや感じられないことばかりで。崎山さんはカオハガン島のことを「何もなくて豊かな島」とおっしゃっていました。まさに、です。本当に行ってよかった。

 その後も「セブの港で待つマリオが朝と違う色の服を着ていてしばらくわからなかった」事件や「翌朝4時半出発で空港に向かったのに謎のマラソン大会をやっていてやっぱり“トラフィック”だった」事件、「長蛇の列の出国審査で急にお腹が痛くなりあとちょっとの所で列から抜けトイレに駆け込んだ」事件などありましたが、120%満足の旅でした。何故なら今年の私の目標「生きる」を再確認できたから。ああ、また行きたいなぁ。

【今日の乾杯】
たまにはホントの乾杯シーンを。これはセブ旅最後の乾杯です。静かな波音を聞きながら。豊かにもほどがある。そんな時間でした。


 

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