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2017.01.05

新しく生きる

矢吹 透

新しく生きる

 長い間、暮らした青山の自宅を引き払い、文京区に転居する将来を決めたのは、去年の秋のことでした。

 山の手と下町の境目のあたりに位置する街の、古いけれどしっかりとした造りのマンションの少し広めの住戸を選びました。

 その部屋を私に譲ってくれた方は、美しい懐かしい日本語を話される年代の女性でした。
 ご自分のことを「わたくし」ときっぱりと発音し、グローサリーと言いかけて、野菜などが買える店と言い直すその方は、海外暮らしも長かったのだそうです。
 偶然にも、私と同じ学校を卒業されており、また、暮らした海外の街が共通だったこともあり、私とその方は、すぐに意気投合したのでした。

 欧米のアパートメントを意識して内装を整えられたという、譲り受けた部屋を、私は、骨格だけの姿にまで戻し、自分が一番暮らしやすいかたちに再構築しようと考えました。
 その旨を、私はその方に、申し訳なくお伝えしました。長く慈しんでいらっしゃったお部屋を壊させて頂くのはしのびないのですが、と申し上げました。
 そうしましたら、その方は明るく笑い、どうぞお好きになさってください、あなたのデザインなさる部屋はさぞや素敵になることでしょう、と仰ったのです。
 そもそも、わたくしも、この部屋を手に入れました時、自分の好きなように、すべて変えましたから、とその方は、さっぱりと仰いました。
 私は、お彼岸あたりを目処に改装工事を終え、入居させて頂きますので、桜の季節にでもぜひ一度、どんなかたちに変わったかをご覧に、遊びにいらしてください、とその方にお伝えし、お別れしたのでした。

 そうしたわけで、この正月は、私が、住み慣れた青山で過ごす最後のお正月でした。

 ここ数年、お正月には奈良から寒桜を取り寄せるのが、我が家の慣例となっています。
 啓翁桜という、その種類の桜は冬のさなかに花を咲かせます。

 活け花に使うよりもずっと下の、訳あり品というランクの啓翁桜を、少し多めに3把ほど届けて頂き、海外で買い求めた大きく無骨なアイスバケットにざっくりと活けます。

 小ぶりの桜の清冽な雰囲気は、正月にふさわしい気がします。なんだか気持ちが、しゃっきりいたします。

 しゃっきりとした気持ちで、新しい年を新しく生きて行きたいと思います。

 人は、新しく生きるためには、三つのことを新しくするのが有用だと、聞いたことがあります。  
  
 時間の使い方を新しくする。暮らす環境を新しくする。つき合う人を新しくする。

 この三つを新しくすることに、人生を変えて行く可能性が、秘められているのだそうです。

 顧みれば、私も今回、住まいを変えることになり、譲り手の方とのうれしいご縁にもめぐりあうことができました。

 何かを変える、ということは大きなエネルギーを必要とすることです。けれど、えいやっと踏み出してしまえば、新しい素敵な未来が、そこには待っているかもしれません。 

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Yumyum2017.1.8

啓翁桜は雪どけ水のような冷たく清み切った空気を部屋に運んできてくれますよね。でも部屋に馴染んでくると不思議に恥じらったような温かさを放ってくれる、そんな気がします。矢吹さんの新しい暮らしという冒険、そこで起こる発見、拝読するのを楽しみにしています。

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