人類史に残る「断言」を生んだ名コピーライター
(写真 Hamera Technologies)

  上司への報告、部下への指示、クライアントへのプレゼン、新商品の売り出し、入学・入社面接、司会やスピーチ、飲み会・合コン……日常生活のあらゆる場面で役に立ち、一生の武器になるのが「一言力」すなわち「短く本質をえぐる言葉で表現する能力」。
 コピーライターの川上徹也さんが、「一言力」を「要約力」「断言力」「発問力」「短答力」命名力」「比喩力」「旗印力」の7つの能力に分析し、どんな人でもすぐ、「人の心をグッとつかむ一言」が言えるようになるノウハウを伝授します。今回は「断言力」について。

* * *

イエス・キリストは「断言」の名手

 「一言力」に必要な能力の2番目は、「断言力」です。
 断言することは、話者の意思を明確にするということです。
 自然に力が生まれ、信頼を勝ち取りやすくなります。

 歴史を振り返っても、優れた政治家・宗教家・経営者などは、必ずこの「断言力」を用
いて人を引っ張ってきました。
 例えばイエス・キリスト。
 コピーライターで、大手広告代理店の創業者でもあるブルース・バートンは、1925年に『The Man Nobody Knows』(邦題『誰も知らない男――ぜイエスは世界一有名になったか』)という本を出版し、全米で大ベストセラーになりました。
 バートンは「イエス・キリストは優秀な広告マンでコピーライターだった」と主張します。そしてイエスが使ったテクニックのひとつが、「情報を圧縮して断言する」だと語っています。

 確かに聖書を読むといろいろなイエスの断言が載っています。

「汝の敵を愛せ」
「人はパンのみにて生くるにあらず」
「求めよさらばあたえられん」
「心の貧しい人々は幸いである」

 これらの言葉は、短く力があり記憶に残ります。クリスチャンでなくても知っているよ
うな言葉でしょう。
 断言しているからこそ、力が生まれているのです。

正しそうに思える根拠を示せればよい

 例えばA案・B案・C案があり、あなたはどれかを選ばなければならない。
 迷ってしまい、上司に相談したとします。
 そんな時、以下のどちらの対応が、上司として頼もしいと思うでしょうか?

 (1)自分と同じように悩んでしまい結論が出ない
 (2)どちらの案がいいかを即座に断言し、その根拠を示してくれる

 多くの人は、(2)の上司の方が頼もしいと感じるはずです。

 複数の選択肢があった時、どれを選ぶかによって結果が大きく変わる場合があります。
そんな時は慎重にデータを調べたり、念入りにシミュレーションしたりした上で決める必要があります。
 しかし実際のビジネスの現場では、複数案のうちどれを選んでも結果はさほど変わらない、というケースも多い。
 そのような場合、リーダーに必要なのは、迷いを見せず、ひとつの道を選んで断言することです。

 もちろん責任は伴いますし、リスクを負うことにもなります。
 それがチームをまとめ、部下の信頼を得る結果につながるのです。
 ただ部下から根拠を尋ねられた時には、きちんと論理的に説明できる必要があります。
 その際、本当にその根拠が正しいかどうかは、さほど問題ではありません。
 乱暴な言い方をすれば、正しそうに思える根拠を論理的に示せればいいのです。

あいまい語尾を駆逐する

 日本では、断定することを必ずしも良しとしない風潮があります。
 傲慢に聞こえたり、和を乱したりするというのがその理由です。
 学生同士の会話などを聞いていても、言葉の意味をあいまいにするフレーズが非常に進化しています。例えば以下のようなものです。

 ・語感であいまいにする――「的な」「大体」「系」「なんか」「ゆうて」
 ・語尾であいまいにする――「感じ」「みたいな」「かも」「なくない?」
 ・評価をあいまいにする――「やばい」「微妙」「普通にいい」

 確かに、このようなあいまい語のおかげで、お互い衝突せず角が立たずに会話ができるというプラス面もあります。断定しないとは、リスクや責任を負わないということですから、楽は楽です。

 ビジネスの現場でも、「~だと思います」「~のはずです」「~のようです」「~じゃないですか」「~かもしれない」「時間があれば」「できる範囲で」などというあいまい語はよく使用されます。

 例えば、アイデアを出し合うようなクリエイティブな会議では、このようなあいまいな表現を使うのも理解できます。共感し合って、お互いにアイデアを高めていくのが目的だからです。また言い切らないところから、新しいアイデアが生まれてくることもあります。

 しかし、オフィシャルな会議、プレゼン、商談などの場では、言い切るべきです。
このようなあいまいなフレーズを使っている限り、言葉に力は生まれません。
断定しないということは、発言に責任を持たないということにつながります。
まずはまったく意味のない無駄なあいまい語尾をやめる習慣をつけましょう。
 例えば

「会議を始めたいと思います」
     ↓
「会議を始めます」

 ここで最初のフレーズの「思います」には何の意味もありません。
 このようなあいまい語尾はいらないのです。
 さらにプレゼンや企画説明などの時に、「時間があまりなかったので」「わかりにくいかもしれませんが」などと言い訳をするのも時間の無駄です。

断定しにくいときは、こう逃げる

 確かに断定しにくい場面もあります。
 例えば、プレゼンなどで企画を説明したあと、「この企画は必ずヒットするのかね?」などと質問されることがあります。
「必ずヒットします」と断言できるのが一番いいのですが、必ずしもそうでない場合の方が多い。どんなに企画に自信があったとしても、ヒットにはそれ以外の要素も絡んでくるからです。

 かと言って、「ヒットするかもしれません」では迫力がなくなります。
 そんな時は、「確率がかなりあります」「可能性が高いです」というフレーズを使うと、逃げを残しつつ断定しているので、それなりに力強いフレーズになります。

「ヒットするかもしれません」
     ↓
「ヒットする確率はかなり高いです」

 忘れてはならないのは、断言したあとにはその根拠を示す必要があるということです。
いくら断言しても、根拠を何も言えなければ、説得力は大幅に下がってしまいます。「ヒットする確率はかなり高いです」
     ↓
「ヒットする確率はかなり高いです。理由は3つあります(と根拠を述べる)」


 断言したあとには、きちんと根拠を示すようにしましょう。

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