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2016.12.01

『砂の器』『飢餓海峡』『虚無への供物』に通じる 凄惨な重さを湛える骨太社会派ミステリーの傑作!

若一光司『毒殺魔』

中条 省平

若一光司『毒殺魔』

毒殺魔』若一光司
小社刊/本体1700円+税

『毒殺魔』、あまりにもストレートな題名だが、内容のほうも恐ろしいほどセンセーショナルな連続無差別殺人を描いている。

 まず、東京・白金台の児童公園で3歳から5歳までの4人の子供たちが正体不明の毒物で殺害され、ついで、大阪の深見公園で4歳と5歳の子供が3人、そして子供の母親が1人殺される。その上、一見無関係なようだが、有名な建築家・加賀雄二郎も路上で殺される。これらの事件の相互の関係は? 犯人は? その動機は? この上なく刺激的なミステリーの始まりである。

 語り手はテレビのディレクター、28歳の広川英樹。広川は風俗嬢のリョウを金で買い、商売女らしからぬ彼女のやさしさに魅了される。リョウが去ったあとの広川の自室には、加賀雄二郎の名前と住所を記した紙きれが落ちていた。その後、広川は加賀の殺人のニュースを知り、リョウが犯人ではないかと疑い、彼女にふたたび接触しようとする。しかし、彼女は風俗店を辞めて、沖縄に去っていた。

 本書の真のモチーフは、この沖縄にある。沖縄は、太平洋戦争で全住民のほぼ4分の1にあたる9万4000人が殺された。アメリカ軍の情け容赦のない攻撃だけでなく、日本兵による虐殺や集団自決の強制まであった。今でも沖縄のガマ(洞窟)には数千人の遺骨が埋もれたままになっているという。その上、戦後はほとんど植民地同様にアメリカ軍に土地を奪われ、現在でも基地の大部分が沖縄に集中している。アメリカ軍用機の事故や、米兵による殺人、暴行、レイプなどの被害もあとを絶たない。

 本書は、そんな沖縄の死と暴力の歴史と、残忍な、子供たちの連続毒殺事件とを結びつける骨太な社会派ミステリーの力作だ。

 巧みな伏線を張りめぐらし、徐々に事件の全容を明らかにしていく作者の小説技術は冴えわたっている。そして、最後に作者はまるで背後の無数の死者に憑かれて狂った巫女のように、事件の動機を白日のもとにさらしていく。これは死を他人ごととして見物する現代日本人への血塗られた警告だ。その読後感は、『砂の器』や『飢餓海峡』、そして『虚無への供物』に通じる凄惨な重さを湛えている。

「小説幻冬」2016年12月号より)

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『毒殺魔』若一光司
小社刊/本体1700円+税
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『砂の器』『飢餓海峡』に匹敵する平成の社会派ミステリの一大傑作、登場! 仕事中に大骨折した日読テレビのディレクター広川英樹は、リハビリの苦しさと恋人を失った寂しさから一人暮らしの自宅に風俗嬢リョウを呼んだ。単なるサービスを超えた彼女の優しさに広川は恋愛感情を持ってしまう。リョウが去った部屋には「建築家・加賀雄二郎」の名前と住所が記した紙片が落ちていた。ほどなくして報道される加賀の殺害事件。死因は正体不明の毒物による中毒死だった。広川はリョウの犯行を疑い、再び連絡を取ろうと試みるが、すでにリョウは風俗店を辞め沖縄に飛んでいた。そして、すぐさま起こる東京白金台の児童公園での四人の子供の毒殺事件。続いて今度は大阪の公園でも三人の子供と一人の親が殺害された。どれも同じ毒物による無差別大量殺人だった。犯人はリョウなのか? 彼女はどこにいるのか? そして動機は? リョウの怒濤の告白で疾駆する慟哭と驚愕のラストシーン!

「小説幻冬」2016年12月号
小社刊/815円+税
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