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2016.12.01

《M資金》をめぐる現代の宝探し。 奔放な想像力で描く、興奮必至のミステリー!

柴田哲孝『Mの暗号』

西上 心太

柴田哲孝『Mの暗号』

Mの暗号』柴田哲孝
祥伝社刊/本体1800円+税

 敗戦後の日本では陰謀がらみの事件が数多く起きただけでなく、謎めいた噂も少なくない。前者の代表は下山事件であり、後者を代表するものが《M資金》をめぐる風説だろう。

 戦争中の日本には占領地から接収したり、国民から供出させたりした大量の金やプラチナなどの貴金属と、ダイヤモンドなどの宝石が隠蔵されていた。日本を実質上支配したGHQによりそれらの隠退蔵物資は押収されるのだが、敗戦前後の混乱による隠匿や掠め取りもあって、隠退蔵物資の行方をめぐる全貌は不透明なままである。やがて行方不明の物資を元にしたとされる巨額資産はM資金と呼ばれ、人の口の端に上っていった。しかもそれだけでは終わらず、後の世になってM資金を餌にした巨額な架空融資事件や詐欺事件が何度も起きることになるのである。

 柴田哲孝はこれまで占領時代の日本で起きた事件をノンフィクション、フィクションを問わず精力的に描いてきた。その作者が現在でもときおり亡霊のように表社会に浮かび上がるM資金をめぐる謎に迫ったのが、本書『Mの暗号』である。

 作家と、戦後占領史を教える東京大学の特任教授という二つの顔を持つ浅野迦羅守。彼の前に小笠原伊万里という美女が現れる。殺された父の書斎から、祖父から伝わったM資金に関わる地図と文書を発見したというのだ。伊万里の祖父が下山事件との関与が噂される貿易会社“亜細亜産業”の関係者だったことを知った迦羅守は、俄然興味を惹かれ、伊万里の依頼を受け暗号文で書かれた文書の解読に挑む。

 迦羅守は、暗号解読の助っ人として数学の天才である武田菊千代と、情報収集のプロ・南部正宗の友人二人をチームに加える。だが彼らの背後にはM資金を狙う組織の影が忍びよっていた。

 戦後史の虚実をとり混ぜた道具立てによる現代の宝探しが進んでいくと、やがて日本の中世にまで遡る迦羅守らの因縁までもが浮上してくる。史実をもとに奔放な想像力を飛翔させた本書からは、半村良や高橋克彦らの壮大な伝奇小説を読んだときのような興奮が湧き上がってくる。必読の一冊。

「小説幻冬」2016年12月号より)

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『Mの暗号』柴田哲孝
祥伝社刊/本体1800円+税
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「小説幻冬」2016年12月号(11月27日発売)
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