「あれ? いま何をしにここに来たんだっけ?」
「あの同僚の名前……顔は思い浮かぶのに名前が出てこない」
「最近、デパートの駐車場でどこに車を停めたかすぐ忘れてしまう」

……よくありがちなこういった「もの忘れ」。働き盛りの30代、40代の人にも心当たりがある方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。
じつはこの「もの忘れ」は、放置しているとうつ病や認知症へとつながっていく、危険を知らせる大事なサインなのです。
これまで10万人以上の脳を診断し、「もの忘れ外来」を開院されている奥村歩先生の新刊『脳の老化を99%遅らせる方法』では、この「もの忘れ」の意外なカラクリと、すぐに実践できる対処法がわかりやすく解説されています。
本連載では、そのエッセンスを「試し読み」の形でお届けします。

 

 

 

前回に続き、「つながりのいい脳をつくるために必要な"5つの処方箋"」について、詳しくご説明をしていきたいと思います。

具体的にどんなことを生活習慣として取り入れるとよいかについても、いくつかご紹介しますので、参考になさってみてください。

 

処方箋 3
あきらめずに”自分がやりたいこと”を追いかける

 

脳のつながりをよくするデフォルトモード・ネットワークは”自分という人間を向上させるための回路”でもあります。この回路を太く頑丈にしていくには、「より”上”を目指して自分を成長させていこう」という意欲が必要となります。すなわち、自己実現、技術向上、目標達成、地位向上など、自分の可能性を追い求める姿勢が必要となるわけですね。

そのためには”自分がやりたいこと”や”自分が求めているもの”を追求していくのがいちばん。だから、「あきらめずに”自分がやりたいこと”を追いかける」という処方箋が、デフォルトモード・ネットワークの働きをよくするのに重要となるわけです。

どんなに歳をとってもあきらめずに”自分”を追求していく姿勢が、デフォルトモード・ネットワークを太くして、脳回路を成長させることへとつながっていくのです。

逆に言えば、”自分”をあきらめてしまってはいけないのです。中高年になると、自分をいま以上に向上させるのをあきらめてしまう人が少なくありません。しかし、それは自分で自分の限界ラインを引いて、成長をストップさせているようなもの。自分の成長の可能性をあきらめてしまうと、脳回路も成長するのをやめてしまいます。

とりわけ、デフォルトモード・ネットワークは”自分を追い求めることで成長する回路”ですから、”自分がやりたいこと””自分が求めているもの”を追うのをあきらめてしまうと、成長するのをやめてどんどん働かなくなってしまうのです。

そして、そういう人はだんだん、日々の仕事を嫌々ながら惰性で行なうようになったり、生きるのがつまらなく感じるようになったりするのです。

ですから、”自分”や”自分の可能性”をあきらめてしまってはいけません。ぜひ長いスパンで”自分がやりたいこと””自分が求めているもの”を追い続けてください。

 

 

処方箋 3 のニューロビクス
あの手この手で”脳がイキイキとした状態”をつくっていこう

※『ニューロビクス』とは、アメリカの研究者がつくった造語。ニューロン(脳神経細胞)とエアロビクスを足してつくった言葉で、脳を鍛える健康習慣を指しています。

 

“自分がやりたいこと”の追求は、脳を成長させる栄養です。ここでは、脳に栄養を注いでイキイキとした状態にするためのニューロビクスを挙げていくことにしましょう。

 

●”やり残していることリスト””やりたいことマップ”をつくる

みなさんには「ずっとやりたいと思ってきたけれど、いまだにやれずにいること」や「時間があったらチャレンジしたいなと思っていたこと」はありませんか?

おそらく、細かいことまで挙げれば、誰にも多くの”やりたいこと”や”やり残していること”があるのではないでしょうか。

もし「自分にもけっこうあるな」と思ったなら、ぜひ”やりたいことマップ”や”やり残したことリスト”を作成してみてください。リストやマップをつくってみると、頭の中が整理されて「これ、意外にすぐ実現できそうだな」とか「実現に向けて計画をスタートしてみようか」という気持ちになってくるもの。そして、こういう意欲が脳を刺激して、デフォルトモード・ネットワークの活性化につながっていくわけです。みなさんもリスト作成からスタートして、自分の中の”やりたいこと”を追い求める気持ちに火をつけていきましょう。

 

●”いい道具”をそろえる

“やりたいこと”や”実現したいこと”のモチベーションを落とさないためには、いい道具をそろえたりお金をかけたりして「もうそこから逃げられないようにする」のもひとつの手です。趣味なども、いい道具をそろえればより使いたくなるでしょうし、習い事やスポーツクラブなども、高い入会金を払えば通い続けるようになるでしょう。つまり、あの手この手を使って”やりたい道”のコースを突き進むように自分を駆り立てていくのです。みなさんも自分をコースから外さないように、うまく自分の背中を押していきましょう。

 

●対人頭脳ゲームで”つながる力”を養う

脳科学的に効果があるとわかっているのは、チェス、将棋、囲碁、オセロなどの対人頭脳ゲームです。「相手がこう来たら、この手を打つ」というように、相手の出方を読みながら戦略を考え、さかんに駆け引きをする行動が脳の刺激となるのです。また、こうしたゲームは社交的要素が高い趣味であり、積極的に人と交わろうという姿勢が脳にとってプラスに働くとされています。

なお、私は最近、『ポケモンGO』にハマっているのですが、あのゲームではポケモンを探して歩く過程で、同好の見知らぬ人同士のコミュニケーションが自然に発生します。よく歩くことにもなるし、社交的な要素も高いし、『ポケモンGO』は、”わりと脳にいいゲーム”と言ってもいいのではないでしょうか。

 

●昔好きだった懐かしい音楽をもう一度聴いてみる

若い頃によく聴いた音楽を街角などで耳にすると、ふと懐かしい気持ちになったり当時を思い出したりすることがあります。昔懐かしい音楽には、脳の情動領域を刺激して、脳にしまわれた記憶を引き出す作用があるのです。

さらに、懐かしい音楽で当時の記憶の断片がよみがえってくると、デフォルトモード・ネットワークが刺激されて、”過去の自分”と”現在の自分”とを結びつける働きが高まります。ときにはその音楽が、若い頃の自分の夢や情熱を思い出させたり、いまの自分を反省したりするきっかけになることもあるのです。昔好きだった音楽に耳を澄ますのは、自分を取り戻すための立派なニューロビクスと言っていいでしょう。

 

 

次回は「遠回りが脳に効く」ニューロビクスをご紹介します。更新は12月23日です。お楽しみに。

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