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2016.11.28

第12回

夕暮れ前のファミレスで仕事がしたい

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夕暮れ前のファミレスで仕事がしたい

 世界には2種類の人間がいる。自宅で仕事ができる人間とできない人間だ。
 最近は文章を書く仕事をすることが多いのだけど、「どこで仕事をするべきか」という問題についてはずっと試行錯誤を続けている。
 固定の仕事場などはない。そんなものを借りるお金はない。そして自分の家はゴミと荷物が溢れて二匹の猫が走り回る汚いシェアハウスなので、落ち着いて仕事ができる環境じゃない。ということで、結局近所の安カフェなどに行くことになる。
 ただ、もし自分の家が清潔に整理整頓されていたとしても、僕は自宅で仕事ができない方の人間なのでやっぱり外で仕事をしていただろう。僕は家にいるとつい漫画を読んだり布団で寝転がったり猫を撫でたりしてしまって全く仕事が進まない。あと僕は長時間一つの場所で座っているのが苦手なので、いろんな場所をふらふら移動し続けていたほうが調子がいいというのもある。
 最近はカフェで仕事をする人を昔よりもたくさん見かけるようになった。携帯電話とインターネットの普及のおかげで別に仕事場にいなくてもパソコンがあればわりと仕事はこなせるようになったからだろう。
 仕事場でなくても仕事ができるのなら、もういっそのこと通勤なんて全てなくなってしまえばいいのにと思う。電車(特に満員電車)に乗って通勤するというのはかなり体力や気力を消耗する行為で、多くの日本人が別に生産的でもなんでもない通勤という行為でエネルギーを奪われているのは本当に無駄なことだと思う。
 いや、在宅勤務だけでは不十分で、やっぱり職場に実際に行かないと回らない仕事があるということは分かる。だけど、本気になって考えれば会社にいなければいけない時間はもっと減らせるはずだと思っている。
「週に2日は在宅勤務でいい」とか「午前中は在宅勤務で午後からだけ出社すればいい」とか「オフィスの家賃がもったいないので完全にオフィスを持たず全員がリモートで仕事をする」とかそんな勤務形態の仕事がもっと増えたなら、通勤で消耗する度合いが減って働く人のストレスも減るし、仕事と家庭の両立もしやすくなって国全体の幸福度も上がると思うので、早くそういう社会になってほしいものだけど、まだあと10年や20年は無理なのだろうか。


 僕が作業をするとき一番よく行くのは家のすぐ近くにあるベローチェというチェーン系のカフェだ。
 ここではコーヒーが200円で飲める。値段が安いわりにこの店舗は昼休みの時間帯以外はそこまで混みあうことはなくて、店内も広いので結構快適に作業ができる。
 コーヒーが200円ということは、一ヶ月毎日来ても6000円だ。今住んでる倉庫のようなシェアハウスが狭くて家賃が安い分、追加で6000円払って近所に仕事場を借りていると思えばそんなに高くない。そう考えて今はこの店を「第二の家」とか「家の延長部分」のように使っている。
 ただ、この店は便利なのだけど、同じところばかりに行っているとだんだん飽きて嫌になってくる。なのでちょくちょく別の場所にも行くようにしている。
 そもそも僕が会社勤めを辞めた理由の一つは、毎日同じ時間に起きて同じ電車に乗って長時間同じオフィスで過ごすのがものすごく苦痛だったからだ。世の中にはそれをあまり苦にしない人も多いみたいなので、適性の問題なのだろうけど……。僕はとにかくその生活が閉塞感と圧迫感でつらかった。今は幸いなことに時間にも場所にも自由が利く仕事なので、できるだけいろんな場所で仕事をしてみたい。
 漫画家を主人公とした漫画、『吼えろペン』(島本和彦)で好きなエピソードがある。
 漫画家は打ち合わせやアイデア出しなどでファミレスなどに行って仕事をすることが多いのだけど、そういうときはアイデア・エナジーがたくさんたまっている店に入るのだそうだ。
 店ごとに環境が違うのでアイデア・エナジーのたまり具合は違う。そして、ずっと同じ場所で仕事をしているとその店のアイデア・エナジーを使い尽くしてしまい枯渇する。なので漫画家はアイデア・エナジーがいい感じにたまった店を探して放浪をし続ける。それが漫画家にとって一番重要な仕事なのだ(らしい)。
 この「場所にアイデア・エナジーがたまる」という考え方が好きなので真似をしているところがある。人間はとても周りの環境の影響を受けやすい生き物だから、自分がいる環境によって考えることが変わってくる。一つの場所にずっといると考え方が固まって視野が狭くなるし、別の場所に移動するだけで違う発想が生まれてきたりする。だからときどき場所を変えながらいろいろな角度から物事を考えてみることが大事だ。


 僕がハンバーガー店などのファーストフードに行くのは「カフェよりももうちょっと腹にたまる物を入れたい」+「そのあと飲み物を飲みながらだらだら居座って何かをしたい」という気分のときだ。最初に会計を済ませれば後はひたすら放置してくれるのも気楽でいい。
 ただしファーストフードはカフェよりも客層が若く、子供連れや中高生などが集まってガチャガチャした雰囲気になっていて、静かに作業をするのには向いてない場合も多いので店選びが重要になる。
 ときどきファーストフードだけど客が少なく静かで落ち着いている店舗があるのだけど、1階フロアだけじゃなく2階フロアがある店は狙い目だ。ファーストフードの2階フロアというのはほとんど店員もやって来ないので落ち着いて長居できる。2階があって客が少なめなお店を探そう。
 モスバーガーやフレッシュネスバーガーは単価が少し高めだからか落ち着ける確率が高い。マクドナルドは客層が若いのと席があまり広くないので基本的にはあまり作業向きではない。だけど、前に練馬に住んでいたとき、家の近くに「駅近くでも幹線道路沿いでもない住宅地の真ん中でなぜか24時間営業している2階建ての大きなマクドナルド」があって、そこは悪くなかった。深夜に行くと真っ暗な住宅街の中にマクドナルドの大きな建物が城のように白く光ってそびえたっていて、店内には奇妙に止まったような時間が流れていて、夜中にそこでパソコンを広げて文章を書いたりするのは結構好きだった。あの店はまだ営業しているだろうか。
 ファミレスにもよく行く。ファミレスのよいところは「普通にごはんが食べられるところ」+「ドリンクバーを飲みながら長居できるところ」だ。空いている店だと一人で四人用のテーブルに座って机を広く使えるのも嬉しい。
 ただ、ファミレスもランチの時間帯は人が多くて混みあっているし、夜はお酒を飲んで盛り上がっている人たちがいて集中しにくいことが多いので、どういう時間帯に行くかが重要になってくる。
 ファミレスで僕が一番好きな時間帯は、ランチタイムとディナータイムの間の客が少ない空白のような時間だ。その時間帯は人が少なくて静かな店内を時には貸し切り同然のような状態で悠々と使うことができる。僕の定番は、ランチタイムが終わる寸前の15時少し前に入って、ランチメニューとドリンクバーのセットを頼み、とりあえずランチを食べてから食後にドリンクバーをお代わりしつつ、夕方まで数時間ゆっくりと作業するというものだ。このやり方だと昼時の混雑を避けつつ、コストパフォーマンスの良いランチメニューを頼むことができる。サイゼリヤだとランチとドリンクバーのセットでも600円ほどで済むのでありがたい。
 普段は大体そんな感じでカフェ、ファーストフード、ファミレスを中心にローテーションを組んでるのだけど、その繰り返しに飽きてきそうなときには飛び道具として、カラオケボックス(平日の昼間は安いし作業に飽きたら歌える)、電車の中(郊外に向かう空いている路線の快速など)、公園の木陰(気候の良い季節は快適だ)、サウナの休憩室(作業の合間に風呂に入れるのが最高)などを組み込んでアイデア・エナジーが枯渇しないようにしている。


 しかしカフェなどを仕事場にするときのジレンマというのがあって、それは「空いている店は落ち着けて良いけれど、あまりにもガラガラの店は潰れてしまう」というものだ。
こないだも近所にある某ハンバーガーチェーンの2階フロアが、人が少なくて電源も使えるのを発見して、「ここは良い、行きつけにしよう」と思ったのだけど、再び行こうとしたら潰れてしまっていた……。客がいなくてやはり採算が取れていなかったのだろう。
 なんとか「空いていて快適だけど潰れない程度には客が入っている」という絶妙なバランスで経営を続ける店が増えてほしいのだけど、今の時代はなかなかそれも難しいのかもしれない。
 だとしたら、「肉は腐りかけが一番うまい」みたいな感じで「店は潰れかけが一番落ち着ける」ということになって、潰れそうだけどまだ潰れていない店を探して渡り歩くと良いのかもしれないけれど、それもなんかハイエナみたいでちょっと嫌だなあ。

 

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